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米国における特許進歩性拒絶の克服方案:内在性(Inherency)に基づいた進歩性の否定
米国弁護士  崔同淳

米国特許庁の審査官は、進歩性の欠如を主張するために、特許発明の請求項における特定の構成要素が明示的に先行文献に開示されていなくても、このような構成要素は先行文献に内在的(inherently)に存在するという指摘を挙げることがしばしばみられる。

米国連邦抗訴法院は、最近、Pers. Web Techs., LLC v. Apple, Inc.の訴訟において内在性に基づいた進歩性否定に関する判決を下した。

事件の背景および概要

従来のデータ処理システムにおいてファイルのようなデータ項目は、典型的に使用者が生成したファイル名および/または経路名または位置により識別される。したがって、同一ファイルがファイル名のみが異なっても一つの装置から他の装置に転送されて重複保存される場合が発生する。上記事件の特許は、かかる問題点を解決するために、各ファイルの内容に基づく固有識別子(content-based identifier)を生成し、これに基づいて同一ファイルがシステムに既に存在するのかを識別する方法と関連したものである。

上記事件と関連した先行文献は、バイナリ客体の内容に基づいたバイナリ客体識別子(binary object identifier)を開示しており、かかるバイナリ客体識別子はバイナリ客体の内容が変更されると識別子が変更されるため、重複する客体(つまり、同一ファイル)はバイナリ客体識別子から認識可能である。

したがって、米国特許審判部(Patent Trial & Appeal Board)は、先行文献にはバイナリ客体識別子を用いて同一ファイルの存在有無を確認することを明示的に開示していないが、先行文献が開示する上記内容に基づいて先行文献のシステムは必然的にバイナリ客体識別子を用いて同一ファイルの存在有無を識別すると結論を下した上で、上記事件特許の無効を主張した。

これに対して、特許権者は、先行文献のシステムは既存のファイル名と位置を用いてファイルを見つけ、先行文献のバイナリ客体識別子は特定客体の位置を把握した後、客体のバックアップされたバージョンと関連したバイナリ客体識別子との一対一の比較を行う時に使用されると開示しているため、先行文献のシステムは同一ファイルの存在有無を識別するために必然的にバイナリ客体識別子を用いないと主張した。

米国連邦抗訴法院は、先行文献がバイナリ客体識別子を用いて同一ファイルの存在有無を確認する方法が可能であることを示唆するに過ぎず、バイナリ客体識別子を必然的に用いて同一ファイルの存在有無を確認することに対する開示や暗示がないと判断した上で、特許権者を支持した。

まとめ

内在性に基づいた進歩性の否定は、先行文献に明示的に開示されていない特許請求項の特定の構成要素が先行文献に必然的に存在するという根拠が必須であることを上記事件が示唆している。つまり、先行文献に明示的に開示されていない請求項の特定の構成要素が単に存在するという可能性で内在性に基づいて特許発明の進歩性を否定することはできない。したがって、特許発明の内在性に基づいた進歩性否定に直面する場合、先行文献には特許発明の構成要素が必然的に存在しないという根拠および論理により進歩性否定を反駁することができるといえる。

* 参照

http://www.cafc.uscourts.gov/sites/default/files/opinions-orders/18-1599.Opinion.3-8-2019.pdf
https://www.ipwatchdog.com/2019/03/18/tpac-leadership-provides-update-key-u-s-trademark-issues-2019/id=107386/