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韓・米FTAを反映した改正特許法の内容
弁理士 鄭智允

2006年ノ・ムヒョン政権から始まって5年間続いた韓・米自由貿易協定(FTA)が2011年11月22日韓国の国会を通過した。これと共に特許法、実用新案法、商標法、デザイン保護法、著作権法など韓・米FTA関連14個の履行法案も批准手続が完了されることによって韓・米FTA発効日以降施行される予定である。このうち特許法の主要改正内容について考察する。

<韓・米FTA関連特許法改正主要内容>

1. 登録遅延による存続期間延長制度導入

(1)関連条項

-韓・米FTA協定文第18.8条第6項を国内法に反映

-特許法第92条の2乃至第92条の5新設

(2)主要内容

-審査遅延などにより特許権が基準日(基準日:特許出願日から4年又は審査請求日から3年のうち遅い日)より遅く設定される場合、その遅延された期間だけ存続期間を延長。但し、出願人により遅延された期間は除外

-設定登録日から3月以内に存続期間延長登録出願が必要

-延長期間の上限はなし

-許可などによる特許権存続期間延長制度(第89条)とは別途に適用可能

-韓・米FTA発効日以降最初に出願する特許出願から適用

(3)その他

-米国の特許権存続期間調整制度(PTA:Patent Term Adjustment、米国特許法第154条)は審査手続上の行政的な遅延により特許権存続期間が減ることを補償するために1999年改正法で導入され、別途の出願手続は必要なし

- 2010年基準に韓国の特許・実用新案の平均審査終結期間(審査請求~審査終結)は24.6ヶ月であり、現時点では存続期間延長対象件の発生可能性は高くないとみられる

2. 公知例外適用期間延長

(1)関連条項

-韓・米FTA協定文第18.8条第7項を国内法に反映

-特許法第30条第1項改正

(2)主要内容

-公知例外適用期間を6ヶ月から12ヶ月に延長

-韓・米FTA発効日以降最初に出願する特許出願から適用

(3)その他

-同制度と関連して、TRIPs(Trade Related Intellectual Properties)及び韓・EU FTAでは関連内容がない

-現在ヨーロッパ及び日本などは公知例外期間が6ヶ月である反面、米国、オーストラリア、カナダなどは12ヶ月である

3. 不実施による特許権取消制度廃止

(1)関連条項

-韓・米FTA協定文第18.8条第4項を国内法に反映

-特許法第116条削除

(2)主要内容

-特許許可の拒絶を正当化できる根拠でのみ特許が取り消しされるようにして特許権を強化

-韓・米FTA発効日以降最初に取消事由が発生する特許出願から適用

(3)その他

-現在まで不実施により特許権が取り消しされた事例は1件もない

‐日本では1959年不実施に対する特許権取消制度を廃止しており、ヨーロッパと米国には特許権取消制度がない

4. 訴訟手続での秘密維持命令制度導入

(1)関連条項

-韓・米FTA協定文第18.10条第11項を国内法に反映

-特許法第224条の3乃至第224条の5、第229条の2新設

(2)主要内容

-特許権侵害に関する訴訟で法院が秘密維持命令を下すことができるようにし、これを違反すれば刑事罰を科すことができるようにする規定を新設

-違反時5年以下の懲役又は5千万ウォン以下の罰金(親告罪)

-韓・米FTA発効日以降侵害訴訟が提起されたものから適用

(3)その他

-同制度と関連して、TRIPsと韓・EU FTA規定は民事司法手続で司法当局の書類提出命令権限を重点的に規定している。法院の書類提出命令権限に関しては民事訴訟法第292条、第344条、第347条、第367条などを通じて履行可能であるので、別途立法が不要であったが、これと別途に韓・米FTAは第18.10条第11項では司法当局の秘密維持命令の違反に対する制裁権限を規定しているのでこれを反映した。