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大法院2010ダ103000全員合議体判決(2012.10.18.言渡)【損害賠償および商標侵害差止】
弁理士 張仁善

登録商標または登録サービス標に対する登録無効審決が確定する前でも商標登録などが無効審判により無効とされることが明白な場合、商標権などに基づいた侵害差止または損害賠償などの請求が権利濫用に該当するか否か(積極)、およびこの時、商標権またはサービス標権侵害訴訟を担当する法院が商標登録の無効について審理・判断することができるか否か(積極)

1. 事案の概要

原告株式会社○○○○は被告株式会社○○○○を相手に自己のおよび(ハングル:HI WOODのハングル表記)などに基づいて2006年から2007年に至るまでの損害賠償および商標権侵害差止請求した。これに対して被告は、原告の登録商標は指定商品の性質を表示するものであって、商標法第6条第1項第3号に該当し、商品の品質を誤認させる恐れがある無効の商標であるので、原告株式会社○○○○の権利主張は権利濫用に該当し、被告の商標使用は商標権侵害に該当しないと抗弁した事件である。

2. 大法院の判断

大法院は、“商標法は登録商標が一定の事由に該当する場合に別途に設けた商標登録の無効審判手続を経てその登録を無効とすることができるように規定しているので、商標は一旦登録された以上、たとえ登録無効事由があるとしても、このような審判により無効とする審決が確定しない限り対世的に無効になるものではない。

ところで、商標登録に関する商標法の諸般規定を満たさず登録を受けることができない商標に対して誤って商標登録がされていたり、商標登録された後に商標法が規定している登録無効事由が発生したがその商標登録のみは形式的に維持されているにもかかわらず、それに関する商標権を特別な制限なしに独占・排他的に行使できるようにするのは、その商標の使用と関連した公共の利益を不当に毀損するばかりか、商標を保護することによって商標使用者の業務上の信用維持を図って産業発展に寄与すると共に、需要者の利益を保護しようとする商標法の目的にも相反する。また商標権も私的財産権の一つである以上、その実質的価値に応じて正義と公平の理念に合うように行使されなければならないが、商標登録が無効とされることが明白で法的に保護されるべき価値がないにもかかわらず、形式的に商標登録がなされていることを機にその商標を使用する者を相手に侵害差止または損害賠償などを請求できるように容認するのは、商標権者に不当な利益を与え、その商標を使用する者には不合理な苦痛や損害を与えるだけであるので、実質的な正義と当事者間の公平にも反れる。

このような点などに照らしてみると、登録商標に対する登録無効審決が確定する前でも、その商標登録が無効審判により無効とされることが明白な場合には、その商標権に基づいた侵害差止または損害賠償などの請求は特段の事情がない限り権利濫用に該当して許容されないと見なさなければならず、商標権侵害訴訟を担当する法院としても商標権者のかかる請求が権利濫用に該当するという抗弁がある場合、その当否を考察するための前提として商標登録の無効について審理・判断することができると言え、かかる法理はサービス標権の場合にも同様に適用される。

これとは異なり、商標登録を無効とする審決が確定する前には法院が商標権侵害訴訟などで登録商標の権利範囲を否定することはできないという趣旨で判示した大法院90マ851決定(1991.4.30.付)、大法院94ド3052判決(1995.5.9.言渡)および大法院95ド702判決(1995.7.28.言渡)は、本判決の見解に相反する範囲でこれを変更するものとする。”としながら、原審である高等法院の判決を維持した。

3. 本判決の意義

本判決は既存の商標権に登録無効事由がある商標であっても、別途の無効審判手続を経て無効とすることができるようにする制度的手続が存在し、特許庁の厳しい審査を経て登録された行政行為の信頼維持および法的安定性を維持する必要があるため、無効審判により無効審決が確定する前までは有効な権利と見なし、その効力を否定できないという態度を変更したものである。

既存の大法院2005ダ67223判決(2007.1.25.言渡)、大法院2005ダ39099判決(2007.2.22.言渡)などで、“商標権者が当該商標を出願・登録するようになった目的と経緯、商標権を行使するに至った具体的・個別的な事情などに照らして、相手方に対する商標権の行使が商標使用者の業務上の信用維持と需要者の利益保護を目的とする商標制度の目的や機能を逸脱して公正な競争秩序と商取引秩序を乱し、需要者間に混同を招いたり、相手方に対する関係において信義誠実の原則に違背するなど、法的に保護されるべき価値がないと認められる場合には、その商標権の行使はたとえ権利行使の外形を有するとしても登録商標に関する権利を濫用するものとして許容されず、商標権の行使を制限する上記のような根拠に照らしてみると、商標権行使の目的が専ら相手方に苦痛を与え損害を負わせることにあり、これを行使する者には何ら利益があってはならないという主観的要件を必ず必要とするものではない。”とし、特定人の出処に認識されている先行商標の存在を知り、これと同一または非常に類似した商標を出願して登録を受けて権利を行使する場合、たとえ有効な権利行使の外形を有しても登録商標に関する権利を濫用するものとして許容できないという態度をより一般的且つ広い範囲で権利濫用理論を拡張したものと理解される。

つまり、本判決では、特許事件において本判決のような趣旨で認定してきた大法院2000ダ69194判決(2004.10.28.言渡)における“無効審決が確定する前でも、特許権侵害訴訟を審理する法院は、特許に無効事由があることが明白であるか否かに対して判断することができ、審理した結果、当該特許に無効事由があることが明白な時にはその特許権に基づいた差止と損害賠償などの請求は特段の事情がない限り権利濫用に該当して許容されない。”という態度を商標権に対する侵害訴訟でも反映したものと判断される。

したがって、紛争中の両当事者は侵害差止請求訴訟で商標権に対する登録無効審判を請求せずに差止請求訴訟で商標権の無効について主張することができるようになり、法院はこれを審理判断することができるようになった。

紛争の一回的解決という側面からみると、両当事者に役立つ側面があると言えるが、大法院が言う商標登録が無効とされることが明白な場合が如何なる場合を言うのか明白な基準を提示しないことから、差止請求訴訟で相手方が全く妥当でもない登録無効を主張する場合、紛争解決の時点がむしろ遅延する結果になるだろう。また、商標権の発生と消滅の権限は行政庁が、これに対する解釈は法院が行うようになっている体制内で、差止請求訴訟で法院が権利の消滅に対してまで直接判断するのは法院の越権行為と判断される。特に、特許庁は、特許審判院のような専門機関を設置して専門性を高めているが、知的財産権専門法院が設置運営されてもいない状態で一般民事法院が商標権の無効についてまで制限なしに審理するようにしたことは専門性の確保という側面にも反すると判断される。