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大法院2012ド6676判決(2012.11.15.言渡)【業務上背任・不正競争防止および営業秘密保護に関する法律・業務上横領】
弁理士 曺潤玉

職務発明の完成事実を使用者に通知しないまま発明者である従業員がその特許を受けることができる権利を共同発明者である第三者に譲渡する行為に対して、業務上背任罪は認められるが、営業秘密漏洩罪には該当しないと判断した事例

事案の概要

A社の理事であるB氏は、新たな合金開発過程で既存製品より性能に優れた高強度合金開発に成功した。該当研究には当時大学院博士課程を履修していたC氏が9ヶ月間毎月100万ウォンを受けて参加していた。B氏はこの事実を会社に知らせず、開発に参加した会社外部人C氏名義で特許出願をした。その後、新たなコンサルティング会社を設立して、他の企業と開発した合金に対する使用許可契約を締結した。

A社はB氏とC氏を業務上背任と営業秘密漏洩(不正競争防止および営業秘密保護に関する法律違反)嫌疑で検察に告訴した。B氏は“新たな合金はC氏が発明・開発したもので、権利がC氏にある”としながら“C氏が他の企業と合金に関するライセンス契約を締結したとしても営業秘密漏洩乃至業務上背任罪に該当しない”と反発した。

1審裁判部は“B氏主導で開発作業の一連過程を表示した点など諸般事情を総合すれば、合金はB氏が発明したとみなすのが相当である”としながら“合金の発明を会社に隠したままC氏名義で特許登録をし、C氏を通じてライセンス契約まで締結した行為は、営業秘密漏洩および業務上背任罪に該当する”と判断した。

2審裁判部もまた“新たな合金発明以降、B氏の営業活動と収益配分比率などを総合すれば、合金はB氏が発明したとみなすのが相当である”としながら“C氏の独自の発明であることを前提としたB氏の主張は受け入れられない”として、1審と同じ判断を下した。

参照条文

[1]発明振興法第2条第2号、第10条第3項、第15条第1項

[2]発明振興法第12条、第13条第1項、第2項、第14条、第19条、第58条第1項、発明振興法施行令第7条、特許法第33条第1項、第2項、第37条第3項

[3]刑法第355条第2項、第356条

[4]不正競争防止および営業秘密保護に関する法律第18条第2項、発明振興法第19条、第58条第1項

大法院の判断

【判示事項】

[1]職務発明以外の発明まで使用者などに譲渡したり専用実施権を設定するという趣旨の条項を含んでいる契約や勤務規定の効力およびこの時、契約や勤務規定の中に対価に関する条項がなくても従業員などに職務発明に対する正当な補償を受ける権利があるか否か(積極)

[2]職務発明が第三者と共同で行われた場合、使用者などがその発明に対する従業員などの権利を継承さえすれば共有者である第三者の同意なしに従業員などの権利持分を有するか否か(積極)

[3]職務発明に対する権利を使用者などに継承するという趣旨を定めた約定または勤務規定の適用を受ける従業員などが職務発明の完成事実を使用者などに通知しないまま、それに対する特許を受けることができる権利を第三者に二重譲渡して第三者が特許権登録まで終えるようにするなどで発明の内容が公開されるようにした場合、背任罪を構成するか否か(積極)

[4]職務発明に対する権利を使用者などに継承するという趣旨を定めた約定または勤務規定の適用を受ける従業員などが秘密保持および移転手続協力の義務を履行しないまま職務発明の内容が公開されるようにする行為が直ちに不正競争防止および営業秘密保護に関する法律第18条第2項で定めた営業秘密漏洩に該当するか否か(原則的消極)

【判決要旨】

[1]発明振興法第2条は、‘職務発明’とは従業員、法人の役員または公務員(以下、‘従業員など’という)が職務に関して発明したものが性質上使用者・法人または国家や地方自治体(以下、‘使用者など’という)の業務範囲に属し、発明をするに至った行為が従業員などの現在または過去の職務に属する発明をいうと規定しながら、第10条第3項で、“職務発明以外の従業員などの発明に対して予め使用者などに特許などを受けることができる権利や特許権などを継承させたり使用者などのために専用実施権を設定するようにする契約や勤務規定の条項は無効とする。”と規定しており、上記条項は職務発明を除いてそれ以外の従業員などの発明に対しては発明前に予め特許を受けることができる権利や将来取得する特許権などを使用者などに継承(譲渡)させる契約または勤務規定を締結しておいても、上記契約や勤務規定は無効とすることによって使用者などに対して弱い立場にある従業員などの利益を保護すると同時に、発明を奨励しようとする点に立法の趣旨がある。上記のような立法の趣旨に照らしてみると、契約や勤務規定が従業員などの職務発明以外の発明に対してまで使用者などに譲渡したり専用実施権の設定をするという趣旨の条項を含んでいる場合に、その契約や勤務規定全体が無効となるのではなく、職務発明に関する部分は有効であると解釈しなければならない

また、発明振興法第15条第1項は、“従業員などは職務発明に対して特許などを受けることができる権利や特許権などを契約や勤務規定により使用者などに継承するようにしたり専用実施権を設定した場合には、正当な補償を受ける権利を有する。”と規定しているので、契約や勤務規定の中に対価に関する条項がない場合にもその契約や勤務規定自体は有効であり、ただし従業員などは使用者などに対して正当な補償を受ける権利を有すると解釈しなければならないと言えるが、職務発明に対する特許などを受けることができる権利や特許権などの継承または専用実施権設定と上記正当な報償金の支給が同時履行の関係にあるのではない

[2]発明振興法第12条全文(全文)、第13条第1項、第2項、発明振興法施行令第7条の規定を総合すると、職務発明に対する特許を受けることができる権利を使用者などに継承するという趣旨を定めた約定または勤務規定がある場合には、使用者などの上記法令で定める期間内の一方的な継承意志通知により職務発明に対する特許を受けることができる権利などが使用者などに継承される。また、特許法上、共同発明者相互間には特許を受ける権利を共有する関係が成立し(特許法第33条第2項)、その持分を他人に譲渡する場合は他の共有者の同意が必要であるが(特許法第37条第3項)、発明振興法第14条が“従業員などの職務発明が第三者と共同で行われた場合、契約や勤務規定により使用者などがその発明に対する権利を継承すれば使用者などはその発明に対して従業員などが有する権利の持分を有する。”と規定しているので、職務発明が第三者と共同で行われた場合には、使用者などはその発明に対する従業員などの権利を継承さえすれば共有者である第三者の同意がなくてもその発明に対して従業員などが有する権利の持分を有するとみなさなければならない。

[3]職務発明に対する特許を受けることができる権利などを使用者などに継承するという趣旨を定めた約定または勤務規定の適用を受ける従業員などは、使用者などがこれを継承しないと確定するまでは任意に上記のような継承約定または勤務規定の拘束から脱することができない状態にあるため、従業員などがその発明の内容に関する秘密を保持したまま使用者などの特許権など権利の取得に協力しなければならない義務は自分の事務の処理という側面と共に相手の財産保全に協力する他人の事務の処理という性格を同時に有するようになるので、このような場合、従業員などは背任罪の主体である‘他人の事務を処理をする者’の地位にあると言えるだろう。したがって、上記のような地位にある従業員などが任務を違反して職務発明を完成してもその事実を使用者などに知らせないままその発明に対する特許を受けることができる権利を第三者に二重譲渡して第三者が特許権登録まで終えるようにするなど、その発明の内容が公開されるようにしたとすれば、これは使用者などに損害を与える行為であって背任罪を構成する

[4]発明者主義により職務発明をした従業員に原始的に発明に対する権利が帰属する以上、上記権利がいまだ使用者などに継承される前の状態では有機的に結合された全体としての発明の内容自体が使用者などの営業秘密になるとみなすことはできないので、職務発明に対する権利を使用者などに継承するという趣旨を定めた約定または勤務規定の適用を受ける従業員などが秘密保持および移転手続協力の義務を履行しないまま職務発明の内容が公開されるに至る行為を発明振興法第58条第1項、第19条に違背する行為に擬律したり、または職務発明の内容公開によりそれに内在されていた使用者などの個々の技術上の情報などが公開されたことを問題にして漏洩された使用者などの技術上の情報などを個別的に特定して不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、‘不正競争防止法’という)上、営業秘密漏洩行為に擬律することができることは別論とし、特別な事情がない限り、そのような職務発明の内容公開が直ちに不正競争防止法第18条第2項で定めた営業秘密漏洩にも該当するとみなすことはできない

本判決の意義

本判決では、職務発明の完成事実を使用者に通知しないまま発明者である従業員がその特許を受けることができる権利を共同発明者である第三者に譲渡する行為が業務上背任または営業秘密漏洩罪に該当するかを判断している。特に従業員などが第三者と共同発明した場合、使用者などはその発明に対する従業員などの権利を継承さえすれば共有者である第三者の同意がなくてもその発明に対して従業員などが有する権利の持分を有するとみなしながら、この時、従業員などは使用者などがこれを継承しないと確定するまでは任意に継承約定または勤務規定の拘束から脱することができない状態にあるため、従業員などがその発明の内容に関する秘密を保持したまま使用者などの特許権など権利の取得に協力しなければならない義務があり、このような地位にある従業員などが任務を違反して職務発明を完成してもその事実を使用者などに知らせないままその発明に対する特許を受けることができる権利を第三者(共同発明者)に二重譲渡して第三者が特許権登録まで終えるようにするなど、その発明の内容が公開されるようにしたとすれば、これは使用者などに損害を与える行為であって背任罪を構成すると判断した。

しかし、これとは異なり、営業秘密漏洩罪を構成するか否かに対しては職務発明をした従業員に原始的に発明に対する権利が帰属する以上、上記権利がいまだ使用者などに継承される前の状態では有機的に結合した全体としての発明の内容自体が使用者などの営業秘密になるとみなすことができないとして営業秘密漏洩には該当しないと判断した事例である。