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大法院2011フ767判決(2014.4.30.言渡)【登録無効(特)】
弁理士 金成浩

[判示事項]

[1] 旧特許法第157条の20の規定趣旨および国際特許出願の特許に対する無効事由である「国際出願日に提出された国際出願の明細書・請求の範囲または図面とその出願翻訳文に共に記載されている発明以外の発明について特許された場合」の意味と「国際出願の明細書・請求の範囲または図面に記載された事項」の意味

[2] 名称を「椅子背もたれ」とする甲株式会社の特許発明に対して、乙が上記発明が旧特許法第157条の20などに該当するという理由で特許無効審判を請求したが、特許審判院が棄却審決を下した事案で、上記発明に無効事由がないと見なした原審判断が正当であるとした事例

[判決要旨]

[1] 旧特許法(1990.1.13.法律第4207号で全部改正される前のもの、以下、「旧特許法」)第157条の20は、「国際出願日に提出された国際出願の明細書・請求の範囲または図面(以下、「国際出願明細書など」)とその出願翻訳文に共に記載されている発明以外の発明について特許された場合」を国際特許出願の特許に対する無効事由と定めている。この規定は「国際出願の誤訳」というタイトルの下に「国際出願が正確に翻訳されなかったため、当該国際出願により許与された特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超える場合には、当該当事国の権限のある当局はこれに対して特許の範囲を遡及して限定でき、特許の範囲が原語の国際出願の範囲を超える部分に対して特許が無効であることを宣言できる。」と規定した特許協力条約(Patent Cooperation Treaty、PCT)第46条に基づいて立法されたもので、出願人が国際出願明細書などに忠実に出願翻訳文を作成するようにして、国際出願日に提出された国際特許出願にない新たな内容を出願翻訳文に挿入しないように防止することに趣旨がある。

また、ここで国際出願明細書などに記載された事項とは、国際出願明細書などに明示的に記載されている事項、または明示的な記載がなくてもその発明が属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「通常の技術者」)ならば出願時の技術常識に照らし合わせて出願翻訳文に記載されている事項が国際出願明細書などに記載されているものと同様であると理解できる事項でなければならない(大法院2005フ3130判決(2007.2.8.言渡)参照)。

したがって、旧特許法第157条の20で定める国際特許出願の特許に対する無効事由は「出願翻訳文に記載された事項が国際出願明細書などに記載された事項の範囲内にない場合」を意味する。また、ここで国際出願明細書などに記載された事項とは、国際出願明細書などに明示的に記載されている事項、または明示的な記載がなくても発明が属する技術分野における通常の知識を有する者ならば出願時の技術常識に照らし合わせて出願翻訳文に記載されている事項が国際出願明細書などに記載されているものと同様であると理解できる事項でなければならない。

[2] 名称を「椅子背もたれ」とする甲株式会社の特許発明に対して、乙が上記発明が旧特許法(1990.1.13.法律第4207号で全部改正される前のもの、以下、「旧特許法」)第157条の20などに該当するという理由で特許無効審判を請求したが、特許審判院が棄却審決を下した事案で、上記発明の国際出願明細書の「ganz nach hinten」が出願翻訳文には本来の意味である「完全に後ろに」でなく「右側後ろに」と誤訳されてはいるが、出願翻訳文の「右側後ろ」も「後ろ」であることは国際出願明細書の「完全に後ろ」と同様であり、そのために、これと一文章をなしている「背もたれの外板が水平軸を中心に回転することができる」という部分の意味が変わるわけではないため、上記誤訳にも拘わらず出願翻訳文に基づいて特許された発明が国際出願の明細書・請求の範囲または図面に記載されていない新たなものになると見ることができず、上記発明に旧特許法第157条の20の無効事由がないと見なした原審判断は正当であるとした事例。

[本判決の意義]

旧特許法第157条の20に対応する規定である特許法第213条は、外国語で出願された国際特許出願の特許に対して国際出願日に提出された国際出願の明細書、請求の範囲または図面とその出願翻訳文に共に記載されていない発明に対しては無効審判を請求することができるという規定として、外国語で出願された国際特許出願の特許に対する無効審判の特例規定に該当した。本判決はこのような特許法第213条の適用範囲に対して具体的に判示したもので、特に出願翻訳文に誤訳が存在してもかかる誤訳によりこれと関連した技術的構成の意味が変更されない以上、これを国際出願の明細書・請求の範囲または図面に記載されていない新たなものと見なすことができないものであることを明確にしたことにその意義がある。

[2014年改正特許法(2015年1月1日施行)]

一方、2015年1月1日付で施行される改正特許法によれば、国際特許出願特有の無効事由を規定した特許法第213条を削除しながら、国際特許出願の翻訳文の誤った翻訳を訂正できる誤記訂正制度を新たに導入し(改正特許法第201条第6項)、国際特許出願に対する国内段階における補正の範囲を原文の範囲と拡大して(改正特許法第208条第3項および第4項)、国際出願に対して提出された翻訳文上の誤った翻訳により発生する問題を事後的に解消できる機会を与えるようになった。

[参照判例]

[1]大法院2005フ3130判決(2007.2.8.言渡)(公2007上、513)

[参照法令]

[1]旧特許法(1990.1.13.法律第4207号で全部改正される前のもの)第157条の20(現行第213条参照)

[2]旧特許法(1990.1.13.法律第4207号で全部改正される前のもの)第157条の20(現行第213条参照)