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改正商標法および全部改正デザイン保護法の主要内容
弁理士 金珍姬

2014年6月11日付で改正商標法が、2014年7月1日付で全部改正デザイン保護法が施行された。商標法の場合、2015年の全部改正に先立って本改正を通じて使用主義的要素を漸次に強化している点が目立つ。デザイン保護法の場合、創作者の権利保護、出願の便宜増進およびハーグ協定の導入による条文を補強し、条文番号も新たに整理した点を確認することができる。改正商標法および全部改正デザイン保護法の具体的な内容は次の通りである。

改正商標法の主要内容 (2014年6月11日施行)

1.使用による識別力取得基準の緩和 (第6条第2項)

2014年6月11日施行の商標法(以下、「改正法」)以前の商標法(以下、「旧法」)では、識別力のない商標が使用による識別力取得を認められるためには、商標登録出願の前に商標を使用した結果、需要者間にその商標が何人の業務に係る商品を表示するものであるかが「顕著に」認識されていることを要求したが、改正法では、需要者間に「特定人の商品に関する出処を表示するものと識別することができるようになった場合」と規定して使用による識別力の取得基準を緩和した。

2.著名商標の保護規定の明確化 (第7条第1項第10号)

旧法は、著名商標の保護規定として、需要者間に顕著に認識されている他人の商品や営業と「混同を起こす恐れ」がある商標の場合、登録を拒絶するように規定していた。改正法では、需要者間に顕著に認識されている他人の商品や営業と「混同を起こすか、またはその識別力や名声を損傷させる恐れ」がある商標の場合、登録を拒絶するように規定することによって、著名商標と混同を起こす恐れがある商標以外に、著名商標の識別力または名声の損傷を起こす場合にも登録を拒絶するようにした。

3.不正競争防止規定の導入 (第7条第1項第18号)

1) 改正法は「同業・雇用などの契約関係や業務上の取引関係、またはその他の関係を通じて、他人が使用するか、または使用を準備中である商標であることを知りながら、その商標と同一・類似する商品に登録出願した商標」を拒絶事由として新設した。すなわち、改正法は、商標法第7条第1項第4号規定に該当すると見ることは難しいが、公正な取引秩序に反する場合、上記規定を根拠に登録を拒絶または無効とすることができるようにした。

2) 2014年1月31日施行の不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」)は、第2条第1号ヌ目で「その他に他人の相当な投資や努力で達成された成果などを公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で自己の営業のために無断で使用することによって他人の経済的利益を侵害する行為」も不正競争行為として規定した。同規定のような趣旨で、改正法は、商標権者・専用使用権者または通常使用権者による登録商標の使用が不正競争防止法第2条第1号ヌ目規定に該当する場合には、同規定で規定する他人の同意を受けずにその登録商標を使用することはできないように規定し、また、このような登録商標は取消審判の対象になるように規定した。

全部改正デザイン保護法の主要内容 (2014年7月1日施行)

1.デザイン創作者の権利保護のための制度改善

1) デザイン創作性の要件の強化 (第33条第2項第2号)

2014年7月1日施行のデザイン保護法(以下、「改正法」)以前のデザイン保護法(以下、「旧法」)第5条第2項によれば、デザイン登録出願前にそのデザインが属する分野における通常の知識を有する者が国内で広く知られた形状・模様・色彩またはこれらの結合により容易に創作することができるデザインに対してはデザイン登録を受けることができないと規定していた。

しかしながら、改正法は、第33条第2項第2号により、デザイン登録出願前に国内のみならず国外で広く知られた形状・模様・色彩またはこれらの結合により容易に創作することができるデザインも創作性がないと見なしてデザイン登録を受けることができないようにして創作性の要件を強化した。

2) 拡大された先出願主義適用の自己出願例外の認定 (第33条第3項)

旧法第5条3項によれば、先出願の出願人が先出願デザインの一部と同一または類似するデザインを先出願の公知前に出願した場合、拡大された先出願主義が適用されて登録が拒絶されたが、改正法は、第33条第3項但書により、先出願と後出願の出願人が同一人である場合、拡大された先出願主義の例外を認めている。したがって、改正法によれば、先出願と後出願が同一人により行われ、且つ後出願が先出願の一部と同一または類似するデザインである場合、他の拒絶理由がない限り登録を受けることができる。

3) 関連デザイン制度 (第35条)

改正法により類似デザイン制度が関連デザイン制度に代替される。旧法によれば、デザイン権者またはデザイン登録出願人は自己の登録デザインまたはデザイン登録出願したデザイン(以下、「基本デザイン」)にのみ類似するデザイン(以下、「類似デザイン」)に対しては類似デザインとしてのみデザイン登録を受けることができた。また、類似デザインの存続期間は基本デザインに準ずるように規定されており、類似デザインは基本デザインに合体された従属した権利であって、基本デザインが放棄、取消、無効審決の確定などにより消滅する場合、類似デザインも共に消滅するように規定されていた。

改正法によれば、デザイン権者またはデザイン登録出願人は基本デザインにのみ類似するデザインを関連デザインとして出願するようにしている。類似デザインとの差異点は、基本デザインが放棄、取消、無効審決の確定などにより消滅しても、関連デザインは基本デザインと独立した権利として存続するという点である。しかしながら、関連デザインの存続期間は類似デザインと同様に基本デザインの存続期間に準じる。

関連デザインが登録されるためには、その基本デザインのデザイン登録出願日から1年以内に出願されなければならない。また、基本デザインに専用実施権が設定されていれば、関連デザインは登録を受けることができない。最後に、関連デザインにのみ類似し、基本デザインとは類似しないデザインは基本デザインに対する関連デザインとして登録を受けることができない。

4) デザイン権の存続期間の延長 (第91条)

デザイン権の存続期間が延長される国際的な傾向を反映し、「産業デザインの国際登録に関するハーグ協定」との調和を図るために、デザイン権の存続期間は、「設定登録日から15年まで」であったものを「設定登録日からデザイン登録出願日後20年になる日まで」に改正された。

2.デザイン登録出願人の便宜増進のための制度改善

1) 新規性喪失の例外主張手続の改善 (第36条第2項)

旧法第8条第2項によれば、新規性喪失の例外を認められるためには、デザイン登録出願書を提出する時、その例外事由を主張し、且つこれを証明できる書類をデザイン登録出願日から30日以内に提出しなければならないと規定されていた。

しかしながら、改正法第36条第2項によれば、デザイン登録出願人またはデザイン権者は①デザイン登録出願書を提出する時(この場合、証明できる書類はデザイン登録出願日から30日以内に提出)、②拒絶理由通知に対する意見書を提出する時、③デザイン一部審査登録異議申立に対する答弁書を提出する時、④デザイン登録無効審判が請求されてこれに対する答弁書を提出する時、新規性喪失の例外を認められるための例外事由を主張することができるように規定している。したがって、デザイン登録出願人は出願時に必ず新規性喪失の例外主張をしなければならない必要がなくなった。

2) 複数デザイン登録出願制度の改善 (第41条、第65条など)

  改正前 改正後
複数デザインとして許容される物品の個数 最大20物品 最大100物品
複数デザインとして出願可能な物品 無審査デザイン(改正法では一部審査デザインと称す)物品に対してのみ複数デザイン出願が可能 同一の物品類内でならば審査デザインや一部審査デザインに関係なく複数デザイン出願が可能
審査段階における取り扱い
(出願一体の原則に準ずるか否か)

複数デザイン出願であるとしても出願一体の原則に準じている。
そのために、秘密デザイン申請、出願公開申請、登録決定および拒絶決定は、複数デザイン全体に対してのみ行われる。

複数デザイン出願は出願一体の原則が適用されない。
そのために、秘密デザイン申請、出願公開申請、登録決定および拒絶決定は、複数デザインのデザインの一部または全体に対して行われる。

3. 産業デザインの国際登録に関するハーグ協定 (以下、「ハーグ協定」) の導入

韓国がハーグ協定に加入することに伴い、ハーグ協定による国際出願および国際デザイン登録出願が2014年7月1日から可能となった。

そのために、ハーグ協定加入国の国民または加入国に住所を有する者は国際出願を通じて韓国を指定国に指定してデザイン登録を出願することができ、韓国国民または韓国に住所を有する者は国際出願を通じて協定加入国の一部または全体を指定国として国際登録出願をすることができるようになった。

4.その他改正事項

1) 改正法はロカルノ協定による物品類区分に準じている。そのために、デザイン登録出願人は出願時にロカルノ協定で定めるデザインに係る物品の物品類を記載しなければならない(第37条)。

2) デザイン登録出願後1ヶ月以内にその出願を取下・放棄する場合、デザイン登録出願料のみ返還したことを、デザイン登録出願の優先権主張申請料も返還するように改正された(第87条第1項第3号)。