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一時的複製と著作権法上の免責事由
YOU ME 法務法人 弁護士 全應畯、柳藝眞

-ソウル高等法院2014ナ19631(本訴)、2014ナ19648(併合)、2014ナ19655(併合)、2014ナ19662(反訴)判決(2014.11.20.言渡)-

Ⅰ. はじめに

韓米FTA締結により韓国著作権法は複製の概念に「一時的」複製が含まれることを明示的に規定した(第2条第22号)。但し、著作権法は一定の基準を満たす多様な形態の一時的複製に対して包括的な例外を認める一方(第35条の2本文)、一時的複製が許容されても「その著作物の利用が著作権を侵害する場合」には例外が適用されないようにした(第35条の2但書)[1]。対象判決は国内初に一時的複製による著作権侵害を認めたソウル中央地方法院事件[2]の控訴審判決であり、著作権法第35条の2本文および但書の適用要否が判断されたという点にその意味がある。

Ⅱ. 事実関係

被告は、コンピュータ画面の一定の領域を別途のイメージファイルとして保存するプログラムである「オープンキャプチャー」を提供する会社である。オープンキャプチャーは、6.7バージョンまで無料で提供されていたが、2012年2月5日に7.0バージョンにアップデートされ、「商業用/業務用」として使用される場合には「ライセンス」を購入しなければならないように有料化された。

原告会社の個別職員らは、オープンキャプチャー6.7バージョンを無料で利用していた使用者であるが、2012年2月5日にオープンキャプチャー7.0バージョンのアップデート配布が開始された以降からオープンキャプチャープログラムの実行時に自動的に立ち上がる「新しいバージョンにアップデートを始めます。確認」という内容のウィンドウを通じてオープンキャプチャー有料バージョン(7.0)にアップデートした。しかし、「約款同意および非商業用/個人用でのみ使用します」などの語句は、オープンキャプチャー有料バージョンの設置が完了してからプログラムを実行する時にようやく使用者に提示され、上記語句が記載されたチェックボックスをチェックしてオープンキャプチャー7.0バージョンを使用することができた。原告会社の職員らは、上記語句が記載されたチェックボックスをチェックしたにも拘らず、オープンキャプチャー7.0バージョンを業務用として使用した。

これに対し、被告は、原告に著作権侵害を差止めよという内容証明郵便を発送したが、原告は、被告会社を相手取って著作権侵害による損害賠償債務不存在の確認を求める訴えを提起し、被告は損害賠償を求める反訴を提起した。

Ⅲ. 訴訟の経過

1. 原審判決の要旨

原審法院は、原告会社の職員らが自己のコンピュータに設置されている本事件プログラムをアップデートすることによってアップデートファイルをコンピュータハードディスクに設置した複製行為は、著作権者である被告会社の許諾下に行われたものであるが、アップデートされた有料バージョンプログラムを「実行」する過程で本事件プログラムの有料バージョンがコンピュータの「RAM」に一時的に複製されることは著作権法上における「複製」に該当し、個別使用者が本事件プログラムの実行のために本事件プログラムをメモリに一時的に保存したことは、円滑且つ効率的な情報処理のために必要であると認められる範囲内でその著作物を一時的に複製したものとみなすことができないため、著作権法第35条の2本文により免責されるケースに該当しないと判決した。

2. 控訴審判決(対象判決)の要旨

控訴審は、原告会社の職員らが本事件プログラムをアップデートすることは、著作権者である被告会社の許諾下に行われた複製であるため、複製権侵害に該当せず、有料バージョンを実行する過程でRAMに一時的に複製されることが著作権法上における「複製」に該当するということは、原審と結論を共にした反面、有料バージョンを実行する過程でRAMに一時的に複製されることは、著作権法第35条の2本文により免責されるケースに該当し、これは同条但書で規定している免責不許事由に該当してもいないとすることによって、原告会社の職員らが被告会社の複製権を侵害するものではないと判決した。

Ⅳ. 争点別の分析

1. 有料バージョンを設置した行為が複製権侵害行為に該当するか否か

問題となった行為

オープンキャプチャー6.7バージョンが設置された状態でオープンキャプチャー6.7バージョンを実行すれば無条件でアップデートファイルがダウンロードされ、その後、使用者のアップデートの確認のクリックだけでアップデートが行われた後、使用許諾契約書が含まれているライセンス約款に同意するかを尋ねるウィンドウが提示され、使用者が最終的に確認ボタンを押すと設置が完了し、オープンキャプチャー有料バージョンをコンピュータで利用することができる状態となる。

被告は、コンピュータプログラムが実際に利用されるように実行可能な状態になる時点に到達してこそようやく著作権法が規定する複製行為が完了するため、オープンキャプチャー有料バージョンの複製行為が完了する前にライセンス約款に同意するかを尋ねるウィンドウが提示され、個別職員らが非業務用/個人用でのみ使用することに同意したにも拘らず、そのような利用許諾に違反して業務用として使用したので、これは被告の複製権を侵害する行為であると主張した。

しかし、控訴審法院は、著作権法上における複製とは、既存の著作物に基づいてその内容と形式を認識したり感知するに十分な程度に一時的または永久的に有形物に固定したり再製することであり、有形的な狭義の複製を意味するため、オープンキャプチャー有料バージョンがコンピュータハードディスクに設置が完了することによって有形物に固定する複製も完了したとした上で、被告がアップデートを知らせるウィンドウを通じて有料バージョンの複製に関する利用許諾をしており、これによってオープンキャプチャー有料バージョンの複製が完了したとすれば、複製が完了した後に個別使用者が被告との間の利用許諾を含む使用許諾契約で定めた使用許諾の範囲を超えてオープンキャプチャー有料バージョンを使用するか否かによりオープンキャプチャー有料バージョン設置行為の複製権侵害要否が決定されるといえないと判示した。

2. 有料バージョンを実行する過程で一時的保存の方法により複製権を侵害したか否か

問題となった行為

使用者がコンピュータでオープンキャプチャー有料バージョンを実行すると、オープンキャプチャー有料バージョンはWindowsのペイント(mspaint.exe)、avastlAntivirus(AvastUI.exe)、エクスプローラー (explorer.exe)、メモ帳(notepad.exe)など他のコンピュータプログラムと同様に使用者コンピュータの保存装置であるRAMの一定の空間に一時的に保存される過程を通じて実行される(使用者コンピュータの「Windowsタスクマネージャ」ウィンドウを開けばプロセス項目には「opencapture.exe」と表示される)。

イ.有料バージョンの実行過程で一時的保存の方法により「複製」が行われるか否か

コンピュータでプログラムを実行する当たり、コンピュータ内のRAMにプログラムが一時的に保存され、電源を切ればなくなってしまう場合に、このような形態の保存も物理的には著作物であるプログラムを有形的に固定したり再製することに違いないため、一時的な複製に該当するとした上で、オープンキャプチャー有料バージョンがその実行のためにRAMに保存される過程でその全部または一部に対して一時的に複製が行われ、オープンキャプチャーの作動のためにオープンキャプチャー有料バージョンが著作物として創作性が認められる部分も複製が行われると追認することができると判断した。

ロ.著作物利用過程における一時的複製に該当して免責されるか否か(著作権法第35条の2)

プログラム実行過程における一時的複製行為が著作権法第35条の2により免責されるか否かに関する争点は、オープンキャプチャー有料バージョンの実行行為が著作権法第35条の2本文の「利用」および「円滑且つ効率的な情報処理のために必要な範囲内の複製」に該当するか、もしそうである場合、第35条の2但書の免責不可事由に該当するか否かであった。

これに関して控訴審法院は、著作権法第35条の2本文の「利用」には、著作財産権の具体的持分権に該当する利用だけでなく、一般的な意味での(プログラム)利用も含まれるとしつつ、そのような主な利用過程でプログラムを一時的にRAMに保存することは、中央処理装置(処理速度が速い)と補助記憶装置(データを読み出す速度は遅い)間の速度差を調整して処理速度を高めるためのものであるため、プログラム実行過程で行われる一時的複製は、円滑かつ効率的な情報処理のために必要な範囲内の複製に該当すると判断した。同時に、著作権法第35条の2但書の「その著作物の利用が著作権を侵害する場合にはその限りではない」という規定と関連して、控訴審法院は「その著作物の利用が著作権を侵害する場合」とは、一時的複製の主体が行う著作物の主な利用が著作権者の許諾を受けなければならない利用行為に該当するにも拘らず、著作権者から利用許諾を受けていないか、または著作権法により許容された行為(著作権法が定めている私的複製など各種制限規定に該当する行為)に含まれない利用行為であって、著作権法上の複製権などの著作財産権の持分権を侵害する場合、またはプログラムの使用を一定の要件を備えた場合に侵害とみなしている行為(著作権法第124条第1項第3号)に該当するとしているが、本事件の場合、個別使用者が被告との使用許諾契約に違反してオープンキャプチャー有料バージョンをコンピュータで実行して使用したとしても、これは著作権法上、複製権などの著作財産権の持分権を侵害する場合などに該当しないため、著作権法第35条の2但書が適用されず、個別使用者が被告との使用許諾を違反してオープンキャプチャー有料バージョンを業務用として実行しながら、それに付随して一時的複製が行われたケースに該当するため、そのようにコンピュータプログラムを実行する過程で行われるコンピュータ内のRAMへの一時的複製行為は、著作権法第35条の2本文により免責されると判示した。

Ⅴ. 結び - 対象判決の示唆点

対象判決は、著作権法第35条の3但書の「その著作物の利用が著作権を侵害する場合」が著作財産権の持分権を侵害する場合や侵害とみなされる場合のみを意味するに過ぎず、単に使用許諾契約に違反した場合までも含むものではないとしたところ、これは一時的複製が著作権法上の複製の概念に含まれるとしても、著作権者に著作権法で一般に認めていない使用権を許容するのではないという趣旨において妥当な結論に該当するといえる。

但し、対象判決の具体的な説示内容において、①著作権法第35条の2本文が定めている「コンピュータで著作物を利用する場合に円滑且つ効率的な情報処理のために必要であると認められる場合」の範囲がどこまでであるか、②著作権法第35条の2但書の「著作物の利用」ということは、著作物の主な利用をいうものと限定して解釈しなければならない根拠は何であるか、③使用許諾契約の内容の区別基準は何であるかに関する疑問点が残るのは事実である。

上記①の疑問点と関連しては、原審裁判部が指摘したとおり、著作権法第35条の2本文が認める範囲を限定する必要はないかを検討する必要があり、この時、著作権法第2条第22号と共に新設された著作権法第101条の3第2項[3]と著作権法第35条の2の関係などを考慮してみる必要があると考えられる。上記②と関連しては、主な利用が著作権侵害行為に該当すれば、それによって付随的に発生する一時的複製行為を再び著作権侵害行為と判断することは不要であり、すべての一時的複製行為に主な利用が前提となるのではないという点から再考してみる必要がある。最後に、著作権者の複製権侵害主張が濫用されることを効果的に防止するために、「利用許諾」と「使用許諾契約」の区別を明確にすることができるようにその区別基準に関する整理が必要であると判断される。上記疑問点に関しては追加的な学界の論議と法院の判決例を期待してみる。


[1] 韓米FTA協定文には、複製概念一時的複製まれるようにするという内容のみが存在するにぎず、包括的免責規定けることにする合意言及されていない(大韓民米合衆国間自由貿易協定文第18.4条著作権および著作隣接権部分参照)。
[2] ソウル中央地方法院2013ガ63771(本訴)、2013ガ57233(併合)、2013ガ72478(併合)、2014ガ7105(反訴)判決(2014.2.21.言渡)
[3] 「コンピュ維持補修のためにそのコンピュ利用する過程でプログラム(取得した場合る)を一時的複製することができる。」