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優先特許審判示範プログラム(Expedited Patent Appeal Pilot Program)
米国特許弁護士 田周憲

米国で特許出願人が審判を請求した場合、米国特許審判院(Patent Trial & Appeal Board、以下、「PTAB」という)から最終審決を受けるためには、現在少なくとも1年から長くは2年という時間がかかる。決定系審判(Ex Parte Appeal)は、出願人がNotice of Appealを提出することで始まり、その後、PTABの審決が決定されるまで出願人の審判請求理由書(Appeal Brief)、特許審査官の答弁書(Examiner’s Answer)、再びこれに対する出願人の答弁書(Reply Brief)の提出、および口頭審理(Oral Hearing)が進められるため、その時間が過度に遅延されている。

この期間短縮のために、PTABは、2015年6月15日に優先特許審判示範プログラム(Expedited Patent Appeal Pilot Program)を施行すると発表した。本プログラムを通じてPTABは、出願人が2件の審判を進行している場合、そのうち一件を撤回すれば、係留中の他の一件に対して優先特許審判を受けることができるように保障している。優先特許審判を通じて出願人はPTABの審決を優先特許審判を請求した日から6ヶ月以内に受け取ることができる。示範的にPTABは本制度に対する申請受付を2016年6月20日またはPTABが2000件の申請書を承認した日のうちのより早い日まで受けることとした。

本制度を申請するためには、出願人は、(1)2件の審判共に2015年6月19日前に受付通知を受けたこと、および(2)2015年6月19日付で上記2件に対して同一の当事者が所有しているか、または少なくとも一人の発明者が同一であることを証明しなければならない。また、出願人は、審判を進行することとした事件に対して口頭審理をしないことに対して同意しなければならず、既存の2件に対してすでに支払った口頭審理費用については返還を受けることができない。

出願人は、優先特許審判示範プログラムを申請するための官納料を別途に支払う必要はないが、本制度を申請するのに先だち、(1)他の出願の審判を返還なしに撤回しなければならないという点、および(2)口頭審理を進行しないことに同意しなければならないという点に対して留意すべきであると思われる。他の出願の審判は、継続審査請求(Request for Continued Examination)を提出して撤回することができる。

優先特許審判示範プログラムに関するより詳細な事項は下記のリンクを参照できる。

Expedited Appeal Pilot Federal Register Notice
https://www.federalregister.gov/articles/2015/06/15/2015-14754/expedited-patent-appeal-pilot