|
1. 事件の概要
原告(A社)は、1992年から「C」というメロン味のアイスクリーム製品を製造・販売してきた会社であり、当該製品の包装に薄緑色のベース色と特定のデザイン要素を一貫して使用してきた。被告(B社)は、2014年頃「D」というメロン味のアイスクリームを発売し、原告の製品包装と類似する色とデザインを使用した。
|
A社製品包装(本事件包装)
|
B社製品包装(被告包装)
|
|
.png)
(ハングル:メロナ)
|
.png)
(ハングル:メロンバー)
|
これに対し、原告は、被告の上記のような行為は消費者に広く認識された商品標識に該当する本事件包装を模倣したものであり、i) 消費者に商品出処の誤認・混同を招き(不正競争防止および営業秘密保護に関する法律、以下、「不正競争防止法」第2条第1号(イ)目)、ii) 本事件包装の識別力や名声を損傷する行為に該当し(同法第2条第1号(ハ)目)、iii) 原告の相当な投資と努力の成果を侵害する行為に該当する(同法第2条第1号(ワ)目)と主張しつつ、被告の製品包装使用差止および当該包装の廃棄を求める訴訟を提起した。
第1審判決の要旨
第1審のソウル中央地方法院は、2023ガハブ72583判決(2024.9.6.言渡)で原告の請求を棄却した。第1審法院は、「果物味の製品の特性上、当該果物の色を包装に使うことが一般的であり、薄緑色をメロン味のアイスクリームの包装に使うことは、特定の企業が独占することはできない」とした。また、「本事件包装の製品名の強調方式、包装形態、デザイン要素(製品名の配置、果物イメージの配置、英語文言、縞模様など)は、業界で一般に使用される方式であって、本事件包装のイメージそのものだけで特定の出処と認識されない」として、原告の請求を棄却する判決を下した。
2. ソウル高等法院の判断
ソウル高等法院は、第1審判決を取消し、原告の請求を認容する判決を言い渡した。
イ.本事件包装が「国内に広く認識された商品標識」か否か
法院は、薄緑色のベース、中央の太文字の製品名(黒い文字・白い外郭線)、左右の果物・製品写真、製品名下部の英語文言と黄色の縞模様など個別要素のみを分離してみると、業界でありふれて使用される表現に属するが、その個別要素が総合されたイメージが一体として特徴的な印象を形成してきたと見なした。
特に、▲2004年頃以降から現在まで本事件包装の上記個別要素が含まれている包装を持続的に使用してきた点、▲2014年以降10年以上現包装を維持した点、▲競争製品と比較したとき、同一の組み合わせの包装が見当たらない点、▲売上・受賞・協業・広告を通じて本事件包装のイメージが持続的に露出されている点、▲2,000人を対象とした消費者アンケート調査で本事件包装の高い認知度・連想結果が確認された点、などを総合してみると、本事件包装はその全体として顕著に個別化された商品標識として国内に広く認識されていると判断した。
ロ.商品標識の類否
法院は、両包装の間に製品名・商号の表記、ベース色のトーン感、左右イメージの細部配置、書体および黄色の縞模様の位置などにおいて微細な差があることは認めた。
しかし、▲被告包装のベース色が本事件包装の薄緑色系のベース色と相当に類似し、▲長方形包装の長い面の中央に三字の製品名を大きく配置し、左右に果物イメージを配置した構成が共通しており、▲両商品の製品名の初めの文字と全体の文字数が同一であり、黒色の太文字に白い枠組みを用いた印象が類似し、▲初めの文字の青色の四角形の配置も同一である点などを総合すると、一般の需要者の観点から全体的な外観が極めて類似していると判断した。
ハ.商品主体の混同の可能性の有無
法院は、バー(bar)型アイスクリーム製品は安価であり、消費者が様々な製品が一度に陳列された冷凍庫から包装の全体的印象に依存して購入しやすい取引の実情に置かれているとみた。また▲実際のオンラインレビューにおいて被告製品を本事件製品と誤認して購入した事例が多数確認される点、▲本事件のアンケート調査でも、回答者の79.2%が「包装紙の全般的な構成の類似性」などにより両製品を混同したり、同一の会社製品と誤認する可能性があると回答した点などを根拠として、一般の需要者の立場から被告製品を原告製品と同一の出処または密接な関係がある製品と誤認・混同する虞は妥当であると判断した。
ニ.むすび
法院は、上記のようなイ)、ロ)、ハ)の判断を総合したうえで、被告が国内に広く認識された原告の商品標識(本事件包装)と類似する包装を使用して消費者に商品主体を混同させる行為をしており、これは不正競争防止法第2条第1号(イ)目の不正競争行為に該当すると結論した。
これにより、被告は原告に対して当該包装(被告包装)を使用するかまたは使用したアイスクリーム製品を製造、販売、輸出などをしてはならず、保管中である当該包装を廃棄する義務があると判決した。
3. 示唆点
今回のソウル高等法院の判決は、食品業界に蔓延していた模倣戦略に重要な変化を予告した。包装を構成する個別要素がありふれていても、それが結合した「全体としての総合イメージ」のブランド価値を認めた異例的な判決であるためである。これは長い間の投資と努力を通じて取得した差別的イメージが法的保護対象になり得ることを明確にした。
今回の判決は、デザインや商標権のみでは防止が困難であった模倣行為に対し、不正競争防止法の保護範囲を拡張し、今後、企業がR&D投資を通じたブランド独創性の確保の努力が重要であることを強調している。
|