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韓国特許庁がバイオ分野特許のファストトラックを施行
弁理士 朴智恩

1. 概要

バイオ産業は、韓国の未来の核心成長エンジンとして注目されており、バイオ分野技術は、2023年に産業通商資源部が指定した国家先端戦略技術に属している。バイオ産業の全世界の市場規模は、2027年を基準として約3兆3千億ドルに達すると予想される。バイオ分野の技術は、研究開発(R&D)に多大な時間と費用が投入される一方、少数の核心特許のみでも製品商用化と収益創出が可能であり、長期間にわたって市場を先占することができるという点から、特許の重要性が極めて高い。ここ5年間、国内バイオ(生命工学およびヘルスケア)分野の特許出願は年平均8.2%増加し、全体特許出願の増加率(2.3%)の約3.5倍に達する高い成長をみせている。これにより、企業の先制的・戦略的な特許権確保のために、特許庁の迅速な審査が要求される実情である。

2. 特許庁のバイオ分野審査組織の改編

これに対応して、韓国特許庁は今年2月に民間のバイオ分野の専門家35名を特許審査官として採用した。また、今年3月には既存の「バイオヘルスケア審査課」を改編し、4つの課を新設するなど専担審査組織を拡大・再編することによって、より効率的かつ一貫した特許審査体系を構築した。

新たに発足した専担審査組織は、「バイオ基盤審査課」、「バイオ診断分析審査チーム」、「バイオ医薬審査チーム」、「ヘルスケア機器審査チーム」、および「ヘルスケアデータ審査チーム」から構成され、バイオ産業生態系の全過程をカバーできるように体系化されている。また、新規採用された35名の審査官と、既存の各審査局に散在していたバイオ分野審査官85名とが専担審査組織に集中配置された。このように総120名に達するバイオ分野審査官の審査パワーを結集させることによって、協議審査などを通じて審査品質を高めると同時に、平均18.9ヶ月を要していた審査処理期間も大幅に短縮されることが期待される。


 
バイオ分野組織改編の前後
<参考資料>特許庁報道資料‐速い特許審査によりバイオ5大強国に(2025.3.10.)

3. バイオ技術関連特許出願-優先審査申請対象の指定および申請要件の簡素化

また、韓国特許庁は、去る2月に「特許法」第61条第2号、特許法施行令第9条第1項第2号の3、「実用新案法」第15条、実用新案法施行令第5条第2号の2、および「特許・実用新案優先審査の申請に関する告示(以下、優先審査告示)」第4条第2号ソ目によるバイオ(生命工学)技術関連特許出願および実用新案登録出願と、バイオ(ヘルスケア)技術関連特許出願および実用新案登録出願を優先審査申請の対象として指定した。これにより、生命工学技術またはヘルスケア技術と直接関連した特許出願の審査期間を最大2ヶ月以内に短縮することで、国内企業が迅速に権利を確保することができるように支援している。

バイオ(生命工学)技術関連出願に対して優先審査を申請するためには、①生命工学関連特許分類(CPC)が主分類として付与されていなければならず、②生命工学関連製品、装置などを国内で生産または生産準備中である企業の出願、生命工学技術関連国家研究開発事業の結果物に関する出願、または「国家先端戦略産業法」によるバイオ特性化大学(大学院)の出願でなければならない。また、バイオ(ヘルスケア)技術関連出願に対して優先審査を申請するためには、①ヘルスケア関連特許分類(CPC)が主分類として付与されていなければならず、②ヘルスケア関連製品、装置などを国内で生産または生産準備中である企業の出願、またはヘルスケア技術関連国家研究開発事業の結果物に関する出願でなければならない。

上記要件を満たす場合、優先審査申請書および優先審査申請説明書(優先審査告示第4条第2号ソ目により、優先審査申請であることを明示、当該出願が生命工学/ヘルスケア技術と直接関連した出願に該当する理由を具体的に記載)と共に、国内生産(準備)企業の立証書類、または国家研究開発課題遂行の立証書類を提出して優先審査を申請することができる。従前は、優先審査の申請時、「自体先行技術調査」を必須要件として優先審査申請企業に負担があったが、優先審査告示第4条第2号ソ目により優先審査を申請する場合には、自体先行技術調査の要件が除外され、優先審査申請の手続および要件が簡素化した。また、出願発明を実施または実施準備中であることを立証するために、従前は事業者登録証の提出が必須であったが、技術移転契約書などによっても立証が可能となった。特に、大学や公共研究機関の場合、技術移転契約書のみで実施準備中であることを立証可能となり、より容易に優先審査制度を活用することができると期待される。

優先審査告示第4条第2号ソ目によるバイオ技術関連特許出願の優先審査は、2025年2月19日~2025年10月31日に優先審査申請された出願を対象として一時的に施行され、2025年11月に施行延長の要否が検討される予定である。

4. むすび

グローバルバイオ産業における競争力を確保するためには、迅速な特許権確保が重要であり、特に技術移転を主な事業として営む国内の中小・ベンチャー企業において、特許が技術の価値の判断を受ける基準として作用する。今回の特許庁のバイオ審査専担組織の拡大および優先審査制度の改善は、バイオ企業が特許を迅速に確保し、世界市場で競争力を高めることができるように支援する実質的な基盤となると期待される。

<参考資料>
・特許庁報道資料-「速い特許審査によりバイオ5大強国に」 (2025.3.10.)
・特許庁報道資料-「バイオ・先端ロボット・人工知能…先端技術優先審査を6つの分野に拡大」 (2025.2.19.)
・特許庁告示公告-先端技術関連出願(バイオ(生命工学)技術)の優先審査対象指定の公告(2025.2.19.)
・特許庁告示公告-先端技術関連出願(バイオ(ヘルスケア)技術)の優先審査対象指定の公告(2025.2.19.)