【事件の概要】
本事件は、『定風量制御方法』に関する特許(特許番号省略)に対して無権利者の出願であることを理由として登録無効審判が請求された事件である。原告は、本人が当該発明の真の発明者であり、出願人は原告の権利を無断で出願したと主張しつつ、特許法第133条第1項第2号による登録無効審判を提起した。これに対し、特許審判院は請求人適格がないという理由で審判請求を却下し、特許法院も棄却判決によりこれを維持し、大法院も原審判断に法理誤解がないとみなして上告を棄却した。
【無権利者の出願に対する特許無効事由および請求人適格の判断時点】
1. 無権利者の出願に対する特許無効事由(特許法第133条第1項第2号)
- 正当な権利者でない者が出願した特許は無効事由となる。
- ただし、この事由を理由として無効審判を請求することができる者は、その特許を受けることができる権利を有する者または審査官に限られる(特許法第133条第1項前文)。
2. 請求人適格の判断時点
- 審判請求人が、無権利者の出願を無効事由とした特許無効審判を請求することができる特許を受けることができる権利を有する正当な権利者に該当するか否かは、審決当時を基準として判断しなければならない(大法院2007フ4625判決(2009.9.10.言渡)など参照)。
【事実関係の整理および法理の適用】
1. 事実関係
本願特許は『定風量制御方法』に関し、原告は、当該発明の発明者であることを主張しつつ、第三者である訴外人が無権利者であるにもかかわらず特許を出願して登録を受けたと主張した。被告は、当該訴外人が被告の職員であり、原告と被告間に暗黙的権利移転の合意があったことを根拠として、出願が正当であると反論した。
即ち、原告が特許を受けることができる権利を有する「正当な権利者」であり、「無効審判の請求人適格」を有するか否かが争点となった。
2. 法理の適用
大法院は、原告が発明の完成と共に特許を受けることができる権利を原始的に有することができたが、被告の主張と同様に、原告と被告間の暗黙的合意により訴外人(被告の職員)に権利が適法に移転されたと判断した。したがって、本事件の審決当時、原告は、特許を受けることができる権利を有する正当な権利者に該当せず、特許法第133条第1項前文が定めた無効審判の請求人適格を有していないと判断した。
3. むすび
したがって、原告の正当な権利者であることを理由とした無効審判請求は不適法であり、無効事由の判断なしに却下となることが正当であると判断したうえで、上告を棄却した。
【判決の意義】
本判決は、無効審判請求人の適格およびその判断時点を明確にした事例である。特に、無権利者の出願に対する無効審判請求において、請求適格者は「特許を受けることができる権利を有する者」または「審査官」に限定され、その適格の有無は「審決時点」を基準として判断することを再確認した判決であると評価することができる。本判決を通じて、発明の創作者であるとしても、当該権利が適法に第三者に移転された場合には、それ以上特許を受けることができる権利を有する者として無効審判を請求することができないことを明確に理解することができる。
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