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記述的標章に該当するか否かに対する大法院判決 -大法院2015フ1911判決(2016.1.14.言渡)【拒絶決定(商)】
弁理士 黄娜妍

1. 事件の概要

[原告、被上告人] 株式会社○○○○
[被告、上告人] 特許庁長
[被告補助参加人] 被告補助参加人
[原審判決] 特許法院2015ホ1614判決(2015.9.18.言渡)
 

本事件
出願サービス標
出願人 出願番号
/出願日
指定
サービス業
審判経過

(アルバ天国の
ハングル表記)
株式会社
○○○○
41-2013-
0005929/
2013-02-18
(第35類)
職業紹介業、
職業斡旋業、
就業情報提供業
13-10-04 意見提出通知書発送
14-01-06 意見書提出
14-04-07 拒絶決定書発送
14-06-09 拒絶決定不服審判請求
15-02-03 棄却審決
15-03-05 審決取消訴訟提起
15-09-18 認容判決
15-10-12 上告提起
16-01-14 棄却判決



2. 原審判決

(1) 特許審判院(2014ウォン3479)

(アルバ天国のハングル表記)」において「(アルバのハングル表記)」は「アルバイト」の略称であり、「(天国のハングル表記)」はサービス業分野でサービス提供対象または内容と結合してサービス提供場所として広く使用されている名称であって、指定サービス業に対して識別力がない。請求人は「」が使用による識別力を獲得したと主張しているが、i) 請求人が提示したソウル中央地方法院第50民事部決定文(2011カハブ2834)で「」が請求人の営業標識として国内に広く認識されたことが認められたとしても、当該決定文は不正競争防止法に基づいた判断内容に過ぎない点、ii) 請求人が提出した使用資料において主に使用された実際標章は「」である点、iii)同一分野の第三者登録商標である「」が競争的に使用されなかったと認めるに値する証拠がない点を総合すると、「」自体は商標法第6条第2項の使用による識別力を取得したと見なすことができない。したがって、原拒絶決定は妥当である。

(2) 特許法院(2015ホ1614)

「アルバ」とは、アルバイトの略称として「本来の職業でなく、別途の収入を得るためにする仕事であり、短期あるいは臨時に雇用されて仕事をすること」を意味し、「天国」は「神様や神仏がいるという理想の世界」、「如何なる制約も受けない自由で安らかな場所またはそのような状況」などを意味し、サービス業分野においてサービス提供対象または内容と結合して「良いサービスの提供場所」という派生的な意味として使用されたりもする。そうであれば「アルバ」と「天国」が結合した「アルバ天国」は一般需要者に「職業紹介業、職業斡旋業、就業情報提供業」などと関連して「勤務条件や環境が理想の世界のように安らかでアルバイトしやすい場所」程度の意味を連想させるに過ぎず、「副業を紹介、斡旋したりこれと関連がある情報を提供する場所」のように「上記サービス業のサービス提供場所」という意味を直感させるとは認め難く、そのようにみるべき証拠もない。

したがって、「」が「職業紹介業、職業斡旋業、就業情報提供業」と関連してその品質・効能・用途・使用方法などのような性質を直接的に表示する記述的標章に該当するといえない。

また、原告が2000年2月からアルバイト専門インターネットサイト「www.alba.co.kr」をオープンして就業情報提供業をしつつ、「(アルバイト天国のハングル表記)」などの標章を使用し、2008年10月から「」標章を使用してきた点、上記のような事業を主力として上げた売上額が2007年に51億ウォン、2008年に60億ウォン、2009年に87億ウォン、2010年に137億ウォン、2011年に182億ウォン、2012年に209億ウォン、2013年に229億ウォン、2014年に252億ウォンであり、支出した広告宣伝費が2007年に24億ウォン、2008年に24億ウォン、2009年に30億ウォン、2010年に71億ウォン、2011年に121億ウォン、2012年に106億ウォン、2013年に92億ウォン、2014年に84億ウォンである点を考慮すると、原告が2010年から2014年まで芸能人のチョンドゥン、チョ・グォン、パク・ジュンギュ、キム・ウビンを広告モデルとしてテレビとラジオ広告などを活発に繰り広げ、それによって「」標章が一般取引者や需要者の間で原告の就業情報提供業を表示するサービス標として2007年乃至2008年頃には相当な認知度を取得し、本事件審決の頃には広く認識されていたであろうと認められる。

したがって、「」に対する拒絶決定を維持した審決は違法であり、その取消を求める原告の請求は理由あるため、受け入れることとする。

3. 大法院判決(2016フ1911)

「アルバ」と「天国」という二つの単語が結合して「勤務条件や環境が理想の世界のように安らかでアルバイトしやすい場所」という観念を有するものであり、上記指定サービス業と関連してみると、上記のように「アルバイトしやすい場所」を紹介・斡旋したり、これと関連した情報を提供するという暗示を与えることはできるが、これを越えて一般需要者に「アルバイトを紹介・斡旋したりこれと関連がある情報を提供する場所」などのように上記指定サービス業の性質を直接的に表示すると認識されるといえない。また、取引社会の実情などを鑑みても、「天国」という単語が含まれている「」を特定人に独占排他的に使用させることが公益上不当であるなどの事情が発見されない。したがって、本事件出願サービス標は、商標法第6条第1項第3号が定めた記述的標章に該当しない。

4. 本判決の意義

特許法院および大法院は、2000年から求人求職サービスに対して使用された「」の識別力を認めることによって、3年間に亘って登録可能性に対して争ってきた出願人を支持した。特許法院は、「」の文字自体の識別力を認めつつ、出願当時の関連業界で「」という名称が多数により使用されていることは、被告(出願人)の「」標章の高い認知度に起因したものとみて、「」を被告(出願人)に独占させることができない公益的事情はないとみており、大法院は、このような特許法院の判決を支持した。指定サービス業の性質などを単に暗示、強調することに過ぎない標章の場合は、商標法第6条第1項第3号の性質表示標章とみなさないという既存の識別力判断基準を維持した判決であるが、これと類似して「天国」を含む「(キンパプ天国のハングル表記)」商標が43類飲食業に対して特許庁の審査段階で拒絶されたのとは対照的な内容である。