Ⅰ. はじめに
近年、多様なフランチャイズ事業が盛んになっている。フランチャイズ事業を進行したり当該加盟店を開業するに当たり、確認すべき多くの事項があるが、特に重要なことは直ちにフランチャイズ事業に使用される商標権確保の問題である。
特定の標章を使用してフランチャイズ事業を始めた後に商標権の問題が発生すれば、これを変更することが容易でないばかりでなく、変更に莫大な費用がかかり、ひいては、事業の根幹が揺らぐこともある。フランチャイズ事業を準備して遂行するに当たって、商標権の確保と維持に特に格別の検討と注意を要する理由である。
これと関連して、以下ではフランチャイズ事業に使用された標章に対する商標権紛争により使用標章を変更せざるを得ず、元来の標章を取り戻すために多くの時間と費用を消耗しなければならなかった事件に関する当法人の勝訴事例を紹介する。
Ⅱ. 事件の経過
1. 事案の概要
本事件の原告は、Aキンパプ(海苔巻き)のフランチャイズの加盟本部であり、被告は、Bキンパプのフランチャイズの加盟店らである。原告は、Aキンパプのフランチャイズ事業を始めつつ事業に使用するサービス標(a)を選定し、これに対する商標出願まで完了した後、Aキンパプのフランチャイズの加盟店を募集し事業を始めた。ところが、原告のサービス標(a)の選定と出願時における先出願商標の検討において発見されなかったサービス標として原告が出願して使用するサービス標と類似する先登録サービス標(b)が既に存在していた。このような事実を知ることになった原告の加盟店主のうちの1人が当該先登録サービス標の権利者から権利を譲受した後、原告にサービス標の使用中断や巨額の使用料支給を要求した。原告はやむを得ず、既に相当期間使用して地域的周知性まで獲得したサービス標(a)の使用を中断し、フランチャイズ事業に使用する標章を新たに変更(a’)するしかなく、これによって、加盟店らの看板などの交替に所要されるすべての費用まで負担した。また、原告が出願して登録を受けたサービス標権も登録無効となった。
その後、上記先登録サービス標権(b)の譲受人は、原告の加盟店から脱退し、原告が以前使用していた標章(a)を使用して新たなキンパプのフランチャイズ事業を始めた(被告らは、上記譲受人が運営するフランチャイズの加盟本部と契約してキンパプ加盟店を運営する者らである)。
これに対して、原告から事件を委任された当法人は、上記先登録サービス標権(b)の譲受人(本事件被告らの加盟本部)が故意に指定商品に登録商標と類似する商標を使用することによって、需要者に商品の品質の誤認または他人の業務に関連した商品との混同を生じさせたという理由でその登録サービス標に対する取消審判を請求し(商標法第73条第1項第2号)、判決を通じて最終的に登録取消が確定した。
上記のとおり、決定的に当法人が被告らの加盟本部の先登録サービス標(b)を否定使用取消させることによって、原告は原告が以前使用していた標章(a)に対して商標およびサービス標を再び出願することができ、そのうち、先に商標権が登録された後、被告のフランチャイズ加盟店らに対して商標権侵害および不正競争防止法違反を理由とした本事件標章使用差止訴訟を提起した。
2. 訴訟の争点
原告が過去に使用していた標章を再び出願した時点は、被告らの加盟本部がサービス標を使用し始めた時点以降であるが、被告らが被告らの加盟本部と加盟契約を締結して当該サービス標を使用し始めた時点よりは先である。
被告らの加盟本部のサービス標(a)使用開始時点 |
2012年12月頃 |
原告の商標・サービス標(a)出願時点 |
2013年12月3日 |
被告らのサービス標(a)使用開始時点 |
2014年以降 |
本事件訴訟過程で被告らは、加盟本部が原告の商標出願日以前から商標を使用していたため、被告らにも商標法第57条の3第1項の先使用権が認められると主張した。したがって、被告らが加盟本部のサービス標使用時点を基準として先使用権の抗弁ができるか否かが本事件の争点である。
また、被告らは、原告が過去先登録サービス標権者である被告らの加盟本部の警告状を受け、当該標章の使用を中断したことは、本事件サービス標を放棄したり被告らの加盟本部による商標使用を黙認したためであるので、本事件訴訟は原告が被告らの営業を妨害し、被告らに損害を及ぼすために提起したものであり、これは禁反言または権利濫用であって許容されないと主張した。つまり、権利者の警告状を受けて標章使用を中断した行為が商標の放棄または商標使用の黙認と解釈され得るか否かが本事件のもう一つの争点となった。
3. ソウル高等法院の判断
被告らの先使用権抗弁に対して、法院は、被告らの開店日は本事件登録商標の出願日以降であり、加盟本部が先使用による商標使用権を有するとしても被告らは加盟本部と加盟店契約を締結することによって加盟本部の登録サービス標に関して通常使用権の設定を受けた者に過ぎないため、商標法第57条の3第1項で定めた先使用権者の地位を継承した者にも該当しないと判断して、被告らの抗弁を受け入れなかった。
また、被告らの加盟本部の警告状を受けた原告が標章使用を中断したことは、登録サービス標権者との紛争のおそれがあれば、一旦上記サービス標(a)を使用しないとしたことに過ぎず、原告がサービス標自体に関する権利を放棄したか、または他人の標章使用を黙認したか、または当該標章を実際に使用する意思がなかったと見なすことができないと判断することによって、これに関する被告らの主張も排斥した。
結局、法院は、被告らに原告登録商標に対する使用差止と、被告の看板などから原告登録商標と類似する標章を除去することを命じる判決を下した。
Ⅲ. むすび
上記ソウル高等法院の判決がそのまま確定すれば原告は被告らの加盟本部がそれ以上追加的な加盟店を誘致できないようにすることができ、これによって、過去の奪われた自身の権利を相当部分取り戻すことができるようになった。しかし、原告がこのような結果を得るまでは莫大な費用とほぼ4年に近い時間を消耗しなければならなかった。
フランチャイズ事業の準備初期から法律専門家の諮問を通じて今後問題になり得る部分を点検し、経験豊富な弁理士を通じてフランチャイズ事業に使用する標章に対する先出願商標検索などの検討をより徹底的に行っていたとすれば、このような莫大な費用と努力の相当部分が節減されたであろう。フランチャイズ事業準備において商標権に関する法律検討はいくら強調しても強調し過ぎることはない。
|