1. 概要
IT分野の発明は、ソフトウエアシステム内でユーザー、サーバー、クライアントなど多様な主体が相互作用して特定の機能を遂行する方式に関する技術的具現を含む。IT分野の方法発明では、動作主体の具体的な明示が極めて重要である。動作主体は、発明がどのような方式で実行されるのかに関する核心的な情報を提供し、これを明示しなければ、特許侵害の有無を判断する時に問題となり得る。動作主体の漏れは発明の法的保護範囲にも影響を与えて特許権の保護が不完全となる。
2. 審査指針書における動作主体明示の重要性
韓国特許庁(KIPO)の特許審査基準によると、方法発明では請求項が明確かつ具体的に作成されるべきであり、この時、動作主体の明示は必須である。特許審査では、請求項において発明が実際にどのように具現され得るのか明確に説明されなければならないという原則に従うため、動作主体が不明確であれば審査官がこれを具体化するように要求することができる。
審査過程において動作主体が不明確な場合には、特許庁は、補正通知書や拒絶理由通知書を通じて請求項を補正するように要求することができる。この時、発明者は、動作主体を明確に追加し、発明がどのように具体的に具現され得るのかに関する技術的な説明を付け加えなければならない。これにより、発明の保護範囲と侵害有無が明確になり、特許の法的安定性が確保され得る。
3. IT発明における動作主体明示の重要性
IT技術分野では、ソフトウエア、ネットワーク、クラウドサービスなどの多様な技術が連係されるため、動作主体を明確に定義することが重要である。例えば、「サーバーがデータを処理する」または「クライアントが要請を伝送する」のような具体的な表現を使用して発明の具現方式について正確に説明しなければならない。
特許侵害は「単一主体侵害原則」により判断される。すなわち、一つの主体が請求項に記載された全ての要素を実施してこそ侵害と認められる。もし動作主体が明確でないか、あるいは発明が複数の主体間に分担して遂行される場合には侵害の判断が難しくなるおそれがある。IT発明では、ソフトウエアやシステムの構成要素が複数の主体間に分散して動作する場合が多い。例えば、クライアント-サーバー構造では、データがサーバーで処理され、クライアントで要請を伝送する構造が最も一般的な形態である。この場合、動作主体が明確に定義されないと、誰が発明を実際に遂行しているのかが不明確になり、侵害の判断に混乱が生じ得る。「データを伝送する」という行為がクライアントで行われるのか、あるいはサーバーで行われるのかにより侵害主体が変わり得るためである。したがって、動作主体を明確に明示することが侵害の判断を容易にし、発明の法的保護範囲を明確にすることができる。これにより、特許侵害訴訟での紛争の可能性を減らし、特許権者の権利を効果的に保護することができる。
4. 動作主体が漏れている時の解決方案
特許審査過程において動作主体が漏れている場合、これを解決できる方法は補正を通じて請求項を補正することである。補正を通じて動作主体を明確にして、「サーバーがデータを処理する」または「クライアントが要請を伝送する」のような具体的な表現により発明の保護範囲を明確に設定することができる。このような補正は、特許侵害の有無をより明確に判断するのに役立つ。
発明が複数の主体間に分担して行われる場合、各動作主体に対して独立的な請求項を作成することが有利である。それぞれの主体に対して別途の請求項を作成すると、各主体の役割が明確に区分され、発明の保護範囲もより具体的に設定される。例えば、クライアントで発生する動作とサーバーで発生する動作とが分離している場合には、これをそれぞれ別の請求項とすることによって発明の保護範囲が明確に設定される。
5. むすび
IT分野の方法発明において動作主体を明示することは、発明の実施の可能性、法的侵害の判断、保護範囲の明確化に重要な影響を与える。審査基準に基づいて動作主体を明確に明示しなければならず、主体の漏れによる問題を解決するために請求項の補正、分割出願を活用することができる。動作主体を明確に叙述し、審査基準に合うように補正すれば、侵害の判断と法的保護範囲が明確になって特許権者の権益がより一層保護され得る。これにより、IT発明の法的安全性を高め、特許訴訟における不確実性を最小化することができる。
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