ニュース&イベント

IPニュース

コンセプト著作権の認否に対する考察
弁理士 崔有鎭

1. 概要

最近、韓国の大手芸能事務所ハイブ(HYBE)傘下のレーベルであるビリーフラボ(BELIFT LAB)からデビューしたアイドルグループ「アイリット(ILLIT)」が、ハイブの他のレーベルであるアドア(ADOR)から2022年にデビューした他のアイドルグループ「ニュージーンズ(NewJeans)」のコンセプトを模倣したという議論が提起されている。これと関連して、アイドルグループのコンセプト自体が著作権法の保護を受けることができるか否かを検討してみる。

2. アイドルグループの「コンセプト」とは

アイドルグループの「コンセプト」は、そのグループが活動する際に伝えようとするイメージやスタイルを意味する。これは音楽、舞台衣装、振付、ミュージックビデオ、グラビアなどを通じて具体的に表現される。このようなアイドルグループのコンセプトは、アイドルファンに強い印象を残す役割を果たすと共に、アイドルファンの間でそのグループの固有性、独自性の構築に重要な役割を果たす。絶えず競争状態のアイドル市場で生き残るためには各自の固有のコンセプトが非常に重要であり、アイドルグループのブランド価値を高め、アイドルグループの成功に決定的な役割を果たす部分となる。

3. コンセプト自体は著作権法の保護対象となり得るか

著作権法は、人間の思想または感情を「表現」した「創作物」を保護するための法律であるため(著作権法第1条および第2条)、著作権法の保護対象は「創作物」に限定されるといえる。一般に私たちが知っている創作物には文学作品、音楽、美術作品、映画などがある。これらの全ては表現された創作物であることに議論の余地はない。

それならば、人間の思想または感情それ自体は著作権の保護対象となり得るだろうか。

大法院は、『著作権法により保護される著作物は、学問と芸術に関して人間の精神的努力により得られた思想または感情の創作的表現物でなければならないため、著作権法が保護しているものは思想、感情を言葉、文字、音、色などにより具体的に外部に表現した創作的な表現形式であり、表現されている内容、すなわち、アイディアや理論などの思想および感情それ自体は、たとえそれが独創性、新規性があるとしても、小説のストーリーなどを除き、原則的に著作物となり得ず、著作権法で定めている著作人格権、著作財産権の保護対象とならない。(中略)著作権の保護対象は、アイディアでなく、表現に該当する(出処:大法院93ダ3073、93ダ3080判決(1993.6.8.言渡))。』という態度を維持している。したがって、アイディアなどの思想または感情それ自体は、原則的には著作権の保護対象ではない。

アイドルグループのコンセプト自体は、表現された創作物とみることは難しく、アイディアに該当するため、原則的に著作権法の保護対象ではないといえる。アイドルグループのコンセプト自体が著作権として保護を受けるとしたら、様々な問題点が発生する。アイドルグループのコンセプトの範囲は制限されている。したがって、アイドルグループのコンセプト自体が著作権として保護されるならば、類似するコンセプトを有するアイドルグループの活動が難しくなり、アイドル産業における多様性と創意性を阻害するという問題が発生することとなり、アイドルと関連した自由な創作活動が制限される。結果として、アイドル産業の成長を阻害する結果が発生する。

したがって、現時点ではコンセプト著作権自体を主張することはできない。ただし、個別に表現された創作物に対しては著作権法により保護が可能であるため、当該コンセプトが反映されたアルバムデザイン、音源と歌詞、振付、ミュージックビデオ、グラビア、衣装デザインなど具体的な表現として創作された結果物に対する著作権を主張することができる。

また、アイドルグループのコンセプトを直接的に模倣する場合、大衆に否定的なイメージが形成され、模倣するアイドルグループ側のイメージに悪影響を与える。他のアイドルグループを模倣するアイドルはファンの支持を受け難くなることがあり、商業的に成功する可能性は低くなる。また、創意性が足りないというイメージとして認識されることがあり、グループのイメージが損傷されることもある。

4. むすび

以上で考察したように、アイドルグループのコンセプトは、著作権法により保護されず、アイドルグループのコンセプト自体の模倣に対して実質的に法的措置を取ることは難しいこともある。

しかし、コンセプトを具体的に表現した結果物を模倣した場合には、著作権侵害を主張することができるため、法的紛争が発生する可能性が完全に排除されるわけではない。また、イメージが重要なアイドル産業において他のアイドルグループのコンセプトを直接的に模倣することは、グループのイメージと成長に否定的な影響を与えることがあり、アイドル産業全般にも否定的な影響を与えることがあるという点を念頭に置かなければならない。