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結合商標の要部観察を通じて図形商標の類否を判断した事案-特許法院2023ホ13469判決(2024.3.28.言渡)[登録無効(商)]
弁理士 安智熙

1. 事件の概要

イ.権利者Aは、2017年4月頃に「」商標(以下、「本事件登録商標」という。)を商品類第25類の「衣類」などを指定して出願し、2018年1月頃に登録された。

ロ.権利者Bの先登録商標兼先使用商標である「」および「 」商標(以下、「先使用商標1」および「先使用商標2」という。)は、本事件登録商標の出願日前に第25類の「衣類」に登録および使用された。

ハ.本事件登録商標が権利者Bの先登録商標兼先使用商標による商標法第34条第1項第7号および第13号の無効事由があるか否かに関する事件であり、結合商標の要部決定を中心にした図形商標の類否が争点となった事案である。

区分

本事件登録商標

先登録商標兼先使用商標

商標

(先使用商標1)

(先使用商標2)

商品類および指定商品 

第25類の衣類など

第25類の衣類など

第25類の衣類など

 

2. 法院の判断

特許審判院は、本事件登録商標は先登録(使用)商標と類似していないとの理由により本事件登録商標に対する権利者Bの無効審判請求を棄却した。また、特許法院は、以下のような理由により特許審判院の審決が適法であると判断した。

イ.結合商標の要部判断に関する基準

二つ以上の文字または図形の組み合わせからなる結合商標は、その構成部分全体の外観、呼称、観念を基準として商標の類否を判断することが原則であるが、商標の中で一般の需要者にその商標に関する印象を与えたり記憶・連想させることによってその部分のみで独立して商品の出処表示機能をする部分、すなわち、要部を有する場合、適切な全体観察の結論を誘導するためには、その要部をもって商標の類否を対比・判断する必要がある。商標における要部は、他の構成部分と関係なしにその部分のみで一般の需要者に顕著に認識される独自的識別力により、他の商標との類否を判断する時に対比対象となるため、商標の構成部分のうち、識別力がないか微弱な部分は要部となり得ない(大法院2015フ932判決など参照)。

ロ.事件の論点

本事件登録商標のパトンス十字型1)」部分が要部となって先登録(使用)商標と類似しているとみることができるか否かが問題となった事案である。

ハ.法院の判断

特許法院は、本事件登録商標の「」部分は、抽象的にパトンス十字型というものを越えて細部的表現が識別力を有することは難しいと判断した上で、権利者Bが先使用商標1「」を使用して相当な認知度を積み重ねた事実が認められてはいるが、パトンス十字型一般に対して周知性を獲得してこれに関して識別力を獲得したと認めることはできないと判示した。

したがって、「」部分は、識別力が弱くて要部となり得ず、全体的に視覚的統合性と安定感を与える三角形構図から構成された「」部分が本事件登録商標において独立して商品の出処表示機能をする要部とみることが妥当であると判示した上で、これを基準として先登録(使用)商標との類否を判断した結果、両商標は類似していないと判示した。

3. 本判決の示唆点

結合商標における図形部分の識別力が認められない場合、商標の類否の判断時、図形のみを要部と判断することができないと判示し、商標が類似していないと判断した。したがって、本判決は、商標の構成部分が要部であるか否かを判断する基準を説示したという点から意義がある。

 


1) 十字型の4つの腕の各先端が三本筋に割れている形態