1. 韓国の国内優先権主張出願と米国のCIPとの比較
(1) 国内優先権主張出願(特許法第55条)
国内優先権主張は、「先発明」の出願(「先出願」)を基礎として、これを具体化、改良または追加した発明(「後発明」)を保護するための制度である。後発明を通常の手続で出願する場合、先出願と同一の発明であるとの理由により拒絶されることがある。これを避けるために、先出願に後発明を追加する補正を行う場合、新規事項として指摘されて拒絶されることがある。国内優先権主張制度は、このような不合理な点を解決して段階的に発展する発明を包括的に保護するための趣旨を有し、先出願の日から12ヶ月以内に出願することを要件とする。
(2) CIP(MPEP 201.08)
米国特許法においてContinuation-In-Part(以下、CIPという。)出願に対する明確な条項は別途記載されていない。米国のCIPは、特許出願過程で発明者が発明に追加的な要素を含むことができるようにする制度である。これは発明の細部事項が変更されたり改善されたときに有効であり、これにより発明者は原出願(元の特許出願、先出願)に基づいた新たな内容に対する特許を出願することができる。したがって、CIP出願は、発明の発展過程や変更事項を反映しつつ、原出願の優先権を維持することができる有効なツールとなり得る。CIPの場合、原出願後に何時でも出願することができる。
2. CIP制度に関する説明
(1) CIP制度の特徴
CIPにおける追加内容は、原出願の後に発見されたり開発されたものであって、原出願と関連付けられていなければならない。CIP出願は、特許法の一般的な原則と規定、そして判例により発展してきた。CIP出願に関する核心規則と慣行は、主に35 U.S.C. §120と関連した判例において発展してきた。
35 U.S.C. §120は、先に提出された出願(CIP出願も含まれる)の発明に対して新たな出願が提出された場合、その新たな出願が先出願の提出日を有することができるようになる。この規定により、CIP出願は、原出願の優先権を維持しつつ、追加的な内容を含めることができる。しかし、追加的な内容に対する優先権は、CIP出願が行われた日に基づく。
(2) 有効期間(存続期間)
CIP出願の有効期間は、原出願を基礎とした内容とCIP出願を通じて追加された新たな内容とにより異なる。原出願を基礎とした内容の有効期間は原出願日から計算され、新たに追加された内容の有効期間はCIP出願日から計算される。
(3) CIP出願と原出願の関係
CIP出願は原出願とは独立して審査される。すなわち、CIP出願が拒絶されても、これは原出願に影響を与えない。反面、CIP出願が承認されれば、原出願に追加することができる。また、CIP出願は原出願日以降に期間の制限なしに何時でも出願することができる。
(4) CIP出願の注意点
CIP出願にはいくつかの注意点がある。まず、原出願が公開された後にCIPを提出すれば、新たに追加された内容が原出願により拒絶される虞がある。これは原出願が「prior art」と見なされて新たな内容に対する新規性や進歩性が認められない可能性があるためである。また、CIP出願は期間の制限はないが、追加的な費用が発生し得る。
また、CIP出願は原出願に追加された内容が含まれなければならないため、出願人はCIP出願においては原出願にある内容との関連性を明確にしなければならない。また、原出願とCIP出願との間に統一された一貫性がなければならない。
(5) むすび
CIPの主な長所の一つは、原出願に含まれていない新たな内容や改善事項に対して特許を受けることができるということである。また、CIP出願は原出願の出願日(優先日)をそのまま維持することができるため、発明の新たな部分が先行技術により拒絶されることを防止することができる。
CIP出願は、発明の開発過程が連続的であるか、または後続の開発が予想される場合、有効な戦略になり得る。原出願が公開される前にCIP出願を行うことが望ましい。
3. CIPと関連した主な判例の紹介
(1) Festo Corp. v. Shoketsu Kinzoku Kogyo Kabushiki Co., 535 U.S. 722 (2002):この判例では特許法の均等論(the Doctrine of Equivalents)に対する制限をおき、これによりCIP出願で追加された内容が原出願の内容を拡張する範囲に影響を与え得ることを示している。
(2) (In re Chu, 66 F.3d 292 (Fed. Cir. 1995):この判例ではCIP出願と関連して、原出願の内容と新たな内容が「同一の発明」を構成しない場合、新たな内容は原出願日の優先権を主張することができないこと(35 U.S.C. §120)を明らかにした。この判例では原出願が公開された後にCIP出願が行われており、CIP出願で追加された内容の新規性が認められなかった。審判では原出願の公開による公知効果(notice effect)を強調し、これにより追加された内容は新規性が認められなかった。
(3) Antares Pharma, Inc. v. Medac Pharma Inc., 771 F.3d 1354 (Fed. Cir. 2014):この判例ではCIP出願が原出願よりも広い範囲を主張し、同時に原出願の優先権を主張する場合、これは許容されないことを明らかにした。これはCIP出願での新たな内容と原出願の内容とが一致してこそ原出願日の優先権を主張することができることを再確認させた。
(4) PowerOasis, Inc. v. T-Mobile USA, Inc., 522 F.3d 1299 (Fed. Cir. 2008):この判例ではCIP出願が原出願に追加的な内容を付加することによって特許の範囲を拡張する効果を有し得ることを示している。またこの判例ではCIP出願に含まれている新たな内容が特許侵害の主張において決定的な役割となり、これによりCIP出願の有効性を示している。
(5) SRI International, Inc. v. Cisco Systems, Inc., 930 F.3d 1295 (Fed. Cir. 2019):この判例では原出願とCIP出願との間の「統一された一貫性(unified consistency)」を強調した。原出願とCIP出願との間に統一された一貫性がある場合、CIP出願が原出願の日付を優先権として有することができることを示している。したがって、CIP制度を通じて原出願日を維持しつつ、新たな開発を特許に含めることができるという点を強調している。
* 判例検索 https://casetext.com/
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