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欧州出願における発明の単一性の要件
弁理士 鄭健榮

欧州特許出願の方法には、個別国出願とEPO(欧州特許庁)経由出願がある。

EPO経由の欧州出願時、EPOは、特許性要件(新規性、進歩性、産業上の利用可能性、exclusions from patentability)以外に、実質的な要件(as sufficiency of disclosure (Art. 83)、clarity of the claims (Art. 84) and unity of invention (Art. 82))と、形式的な要件(the numbering of the claims (Rule 43(5)) and the form of the drawings (as determined by the President under Rule 49(2)))とを満たすことを要求している。

EPOは、初期審査手続において調査段階を行い、上記の内容を検討して調査報告書を作成する。出願人は調査報告書を受けた後、必要な答弁書と審査費用を支払って審査段階に移ることができる。

以下、前記実質的な要件のうち「Unity of Invention」(以下、単一性の要件)について考察する。

単一性の要件の基本原則は、各発明に対して特許が個別的に付与されるということである。ただし、一つの概念を形成する一群の発明に対しては一つの特許出願を行うことができる。EPC Art. 82およびRule 44で単一性の要件に対して規定しており、その内容は次のとおりである。

1. 発明の単一性

関連規定

内容

EPC Article 82

欧州特許出願は一つの発明または一つの総括的な発明の概念を形成する一群の発明に関するものでなければならない。

(The European patent application shall relate to one invention only or to a group of inventions so linked as to form a single general inventive concept.)

EPC Rule 44

(1) 欧州特許出願において一群の発明が請求される時、第82条による発明の単一性の要件が満たされる場合は、一群の発明が一つ以上の同一または対応する特別な技術的特徴を含んで技術的関係がある場合である。前記「特別な技術的特徴」とは、各請求された発明を全体として考慮するとき、先行技術と比較して寄与するところを定義する特徴を意味する。

((1) Where a group of inventions is claimed in a European patent application, the requirement of unity of invention under Article 82 shall be fulfilled only when there is a technical relationship among those inventions involving one or more of the same or corresponding special technical features. The expression "special technical features" shall mean those features which define a contribution which each of the claimed inventions considered as a whole makes over the prior art.)

(2) 一群の発明が一つの総括的な発明の概念を形成するか否かは、発明が分離された請求項で請求されるか、または単一の請求項内で請求されるかと関係なしに決定されなければならない。

((2) The determination whether a group of inventions is so linked as to form a single general inventive concept shall be made without regard to whether the inventions are claimed in separate claims or as alternatives within a single claim.)

2. 発明の単一性の判断

Rule 44では、Art. 82の発明の単一性が「一群の発明が一つ以上の同一または対応する特別な技術的特徴を含んで技術的関係がある場合」に満たされると規定している。上記の内容に対して、Guidelines for Examination-Part F-Chapter Vにおいてより具体的に定義している。

関連規定

内容

2. Requirement of unity of invention

(発明の単一性の要求事項)

用語「特別な」とは、問題の特徴が新規性および進歩性の観点から「当面する先行技術」と比較して寄与するところを意味する。

用語「同一」とは、特別な技術的特徴が同一であるか、または同一の化学構造を定義する場合を意味する。

用語「対応」とは、特別な技術的特徴が同一の技術的効果を達成するか、または同一の技術問題を解決することを意味する。対応は、代替可能な解決方法または相互関連した特徴から見つけることができる。例えば、一つの出願が二つの請求項セットを含んでおり、その一つは金属スプリングを含み、他の一つはゴムブロックを含むものとする。このとき、金属スプリングとゴムブロックは復原力という同一の技術的効果を達成するため、対応する技術的特徴として見なされ得る。

これに比べて、共有されない特徴、すなわち、一部の請求項には現れるが、他の請求項には現れない特徴は、一つの総括的な発明の概念となり得ない。

3. Assessment of unity

(単一性の評価)

発明の単一性に対する実質的な評価は以下を必要とする。

(i) 出願全体に照らして、審査官が暫定的に識別する互いに異なる請求された発明の請求項間に共通点がある場合、それを共通事項として決定する(F-V, 2.2, 3.2および3.4参照)。

(ii) 「当面する先行技術」と比較して、上記共通事項が当該先行技術に寄与するか否か、すなわちRule. 44(1)の意味内で「特別な」技術的特徴を含むか否かを調査する。

(iii) 上記共通事項が特別な技術的特徴を含まない場合、識別された共通事項の一部でなく、残りの技術的特徴を分析して一部の請求項の間に統一された技術的関係があるか否かを判断する。

4. Procedure in the case of lack of unity during search

(発明の単一性の不足時の手続) 

4. 発明の単一性の不足時、出願を拒絶したり請求項の制限を要求することはできないが、出願人に2ヶ月以内に追加調査費を支払うことを通知する。

4-1. 発明の単一性の不足時、EPOは出願人に発明の特許性に対する暫定的(Provisional)意見を提供する。暫定的意見は、追加調査費要請書と共に伝達され、単一性が不足した理由も共に含まれる。

4-2. 出願人に追加費用を支払う義務はない。しかし、調査されない主題(subject-matter)は審査部署で審査されない。審査においても単一性の欠如が持続する場合、出願人は当該主題を削除しなければならない。調査されない主題は分割出願が可能である。

参考資料 欧州特許庁(www.epo.org)