ニュース&イベント

IPニュース

商標法第34条第1項第20号の「他人が使用した商標」に該当するか否か-大法院2022フ10289判決(2023.3.9.言渡)[登録無効(商)]
弁理士 安智熙

1. 事件の概要

本事件登録商標

先使用商標

(1) 構成:

(2) 指定商品:第5類の生理ナプキンなど

(3) 権利者:株式会社チルギョンイ(以下、A)

(1) 構成:

(2) 使用商品:生理ナプキンなど

(3) 先使用商標使用者:コットンハイテクソシエタードリミターダ(以下、B社)

イ.権利者Aは、2016年6月頃から先使用商標「」を使用する無効審判請求人B社と業務上の取引関係にあった者であって、2017年9月11日付で商品類第5類の「生理用ナプキン」などを指定して商標「」を出願した。

ロ.出願された商標は、国内需要者の間に特定人の商品標識として認識された商標を不正な目的で出願したため、商標法第34条第1項第13号に該当し、他人との契約や取引関係など特定の関係がある者であって、他人の商標を出願したものであるため、商標法第34条第1項第20号に該当して拒絶決定が通知された。

ハ.これに対し、権利者Aは、拒絶決定不服審判を請求し、特許審判院は、出願日基準で先使用商標が海外または国内需要者に特定人の商品を表示するものと知られていたと認めるには足りず、先使用商標が国内で生理用ナプキンなどに使用されたり使用準備中であるという点を認める証拠が足りないと判断した上で、拒絶決定を取消し、出願商標は2019年12月24日付で登録された。

ニ.「」を先使用していたB社は、対象商標に対して商標法第34条第1項第20号および第21号を無効事由として無効審判を請求した。

2. 法院の判断

イ.無効事由の趣旨

商標法第34条第1項第20号は『同業・雇用などの契約関係や業務上の取引関係またはその他の関係を通じて他人が使用したり使用準備中である商標であることを知りながら、その商標と同一または類似の商標を同一または類似の商品に登録出願した商標に対しては商標登録を受けることができない』と規定しており、他人との契約関係などを通じて先使用商標を知るようになった場合、信義誠実の原則に違反して出願された商標の登録を許容しない。

ロ.事件の論点

本事件登録商標の場合、標章および指定商品が先使用商標の商標および使用商品と同一または類似し、登録権利者が無効審判請求人B社と業務上の取引関係があった点、これを知って出願した点は認められるが、先使用商標が「国内で使用または使用準備中である他人が使用した商標」に該当するか否かが問題となった。

つまり、権利者A(原告)は、商標法第34条第1項第20号の無効事由は「他人の国内における商標使用または使用の準備」を前提とするが、本事件での国内における使用は、権利者Aによるものに過ぎず、無効審判請求人B社(被告)の使用ではないと主張しつつ、本事件登録商標の出願人は「他人」の国内使用商標を出願したのではないと主張した。

ハ.法院の判断

大法院は『先使用商標に関する権利者が外国で先使用商標を商品に表示したものに過ぎず、国内で直接または代理人を通じて商標を使用したことがないとしても、国内に流通することを前提として商品を輸出してその商品を先使用商標を表示したままで国内で取引されるように流通するようにしたとすれば、これを輸入して流通した第三者(本事件登録商標の権利者)との関係において先使用商標は「他人が使用した商標」に該当する。』と判断した上で、本事件登録商標に商標法第34条第1項第20号の無効事由があると判示した。

3. 本判決の示唆点

本事件の無効事由である商標法第34条第1項第20号は、商標登録を受けることができる権利者でない者が、他人に対する関係において信義誠実の原則に違反して先使用商標と商標および商品が同一または類似するように出願した場合、その商標登録を許容しないことを立法趣旨としている。

先使用商標を国内で輸入して流通した第三者が出願人であるとしても、先使用商標に関する権利者が商標を表示した商品をそのまま国内に流通したとすれば、国内における使用は、先使用商標に関する権利者(無効審判請求人B社)の使用であり、信義誠実の原則を違反したか否かに重点を置いて判断した上で、国内に流通した者(権利者A)が当該商標を出願する場合には「他人が使用した商標」を出願したものであると判断したという点から意義がある