1. 争点および事件の概要
イ.争点
大法院判例によると、確認対象標章が登録商標の権利範囲に属するためには、商標として使用することが前提とならなければならず、純然とデザイン的にのみ使用される場合には登録商標の権利範囲に属しないと判示している。本事件で第三者のデザインが登録商標の権利範囲に属するか否かを判断するにあたり、純然とデザイン的にのみ使用されたか否か、または自他商品の出処表示のために使用されたか否かが争点となった。
ロ.事件の概要
本事件登録商標 |
本事件確認対象標章
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指定商品:配線箱、配電箱、電線管など
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2017年頃から配線ダクト商品に表示
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原告の社内取締役は、1998年から電線保護管、配線ダクトなどに関するデザインを出願して登録を受けたが、当該デザインは3列の溝が形成されており、デザインの説明には「外観の模様のために3本の溝で縞模様を表示する。」と記載されている。1999年からは配線ダクトなどに関する特許を出願し、商標は2005年3月4日付で登録を受け、その後、2006年11月3日に原告に譲渡された。
原告は、2000年頃から配線ダクトなどの本体と蓋に本事件登録商標のように3列の溝を表示して大宇重工業群山工場など多数の施工現場に納品してきており、建築事務所などが作成した照明器具の設計図にも原告の製品に3列の溝が形成されており、「3列溝」と表示されている。
原告は、自己が販売する配線ダクト商品を2000年頃から電気新聞などの新聞媒体に、2010年頃から電気設備のような月刊誌などにそれぞれ広告してきており、このような広告において原告の商品に形成された3列の溝を強調している。2000年からは商標名が「U.T.POLE」である原告の配線ダクト商品のカタログを発行して配布し、2006年からは商標名が「LITE-WAY」である原告の配線ダクト商品のカタログも発行して配布しており、2006年から国際優秀電気製品展示会などの展示会、2005年から韓国照明・電気設備学会などの学会、ワークショップに参加して原告の配線ダクト商品を広報し、カタログおよび展示会などで広告された原告の配線ダクト商品には3列の溝が形成されている
被告は、2017年11月10日に「配線用保護ダクト」に関するデザインを出願して2018年4月16日に登録を受け、その頃から3列の溝を形成した配線ダクトを販売している。
ダジョン電気株式会社は、3列の溝形状が形成されている「配線用保護ダクト」デザインを2001年9月12日に出願して2002年12月2日に第313804号で登録を受け、株式会社ミモアは、正面部に3列の溝が上端と下端にそれぞれ形成されている「仕切り配線開閉門」に関するデザインを1996年1月25日に出願して1998年4月8日に第218805号で登録を受けた。
2. 特許法院の判断
特許法院は、本事件登録商標の出願以前に既に3列の溝形状が表示された配線器具などと関連した多様なデザインが出願・登録されている点、被告も3列の溝形状が表示された配線用保護ダクトに関するデザインを出願して登録を受けている点、原告が3列の溝形状が形成された配線ダクトに「U.T.POLE」、「LITE-WAY」のような他の文字商標と共に使用している点、原告の配線ダクト形状が周知・著名であるとみるには不足している点などを理由に、本事件確認対象標章に表示された3列の溝形状は、取引社会において採用できる範囲内でこれを変形した形態に過ぎないか、または当該商品類型に一般的によく知られた装飾的形態を単に導入してなる形状として、その商品の装飾または外装でのみ認識されるにとどまり、需要者が商品の出処表示と認識して商標として機能しないと判断した。
3. 大法院の判断-原審の破棄差戻し
大法院は、実際の取引界において配線ダクトの主な需要者は配線ダクト施工業者であるといえ、原告商品の使用期間、広告、取引実情などを考慮すると、原告の登録商標が被告が本事件確認対象標章を使用した2017年頃当時、需要者に原告商品の出処表示として知られているとみることができ、2017年当時に存在していた登録デザイン13件は共に原告側が出願して登録を受けたものであり、それ以外の他人による登録デザインは既に消滅したため、3列の溝形状が配線ダクトの一般的なデザインであるか、取引分野で採用できる範囲内で変形したものに過ぎないとみるべき資料がないと判断した。
また、被告は、2005年頃から配線ダクトを販売しているなど当該業界で原告と競争する関係にあり、原告の出処表示をよく知りながら、本事件確認対象標章を原告の本事件登録商標の使用形態と相当類似して使用したとみることができるため、これは本事件登録商標の顧客吸引力などに便乗するためのものとみられると判示した。
したがって、本事件確認対象標章は、デザインとなり得る形状であると同時に、実際の取引界において他の商品と区別する識別標識としても使用される標章であるため、その標章が純然とデザイン的にのみ使用されたとはいえず、商標としても使用されたとみることが妥当であり、原審判決を破棄差戻した。
4. 本判決の意義
本事件は、デザインとなり得る形状や模様が商標として使用されたとみることができるか否か、およびそれに対する判断基準が争点となった事案である。
これと関連して大法院は、「デザインと商標は、排他的・選択的な関係にあるわけではないため、デザインとなり得る形状や模様であるとしても、それが商標の本質的な機能である自己の商品と他人の商品との識別、すなわち、自他商品の出処表示のために使用された標章とみることができる場合には、そのような標章の使用は商標として使用されたとみるべきである。」という判断法理を適用すると共に、「標章が商標として使用されたか否かは、標章と商品の関係、商品などに表示された位置や大きさなど当該標章の使用態様、登録商標の周知著名性、および使用者の意図と使用経緯などを総合して、実際の取引界においてその表示された標章が商品の識別標識として使用されているか否かを基準として判断しなければならない。」という判断基準を具体的に適用して判決したという点から意義がある。
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