第4次産業革命時代に知識財産に対する保護の必要性は増しているが、産業が発展するにつれて知識財産権法により保護されない新たな形態の結果物が生じている。韓国大法院はこのような新たな類型の結果物のうちの一部を不正競争防止および営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」という。)上、「他人の相当な投資や努力で作られた成果」と認めてこれを無断使用した行為を不正競争行為として制裁している。ただし、これは法の補充的一般条項に基づいたものであって、今後発生し得る多様な形態の無断使用行為を適切に制裁するには限界があるため、判例で認められた事例を今般の不正競争防止法改正時に不正競争行為として明文化した(2022年4月20日施行)。その主要改正内容および趣旨について考察する。
1. 他人のデータを不正に使用する行為を不正競争行為の一つとして新設(第2条第1号ル目新設)
第2条第1号 『不正競争行為』とは、次の各目のいずれか一つに該当する行為をいう。
ル.データ(「データ産業振興および利用促進に関する基本法」第2条第1号によるデータのうち、業として特定人または特定の多数に提供されるものであって、電子的方法により相当量蓄積・管理されており、秘密として管理されていない技術上または営業上の情報をいう。以下同一。)を不正に使用する行為であって、次のいずれか一つに該当する行為
1) アクセス権限のない者が窃取・欺瞞・不正アクセスまたはその他の不正な手段によりデータを取得し、またはその取得したデータを使用・公開する行為
2) データ保有者との契約関係などによりデータにアクセス権限のある者が不正な利益を得る、またはデータ保有者に損害を負わせる目的でそのデータを使用・公開し、もしくは第三者に提供する行為
3) 1)または2)が介入された事実を知って、データを取得し、またはその取得したデータを使用・公開する行為
4) 正当な権限なしにデータの保護のために適用した技術的保護措置を回避・除去または変更(以下、『無力化』という。)することを主な目的とする技術・サービス・装置またはその装置の部品を提供・輸入・輸出・製造・譲渡・貸与もしくは伝送するか、あるいはこれを譲渡・貸与するために展示する行為。ただし、技術的保護措置の研究・開発のために技術的保護措置を無力化する装置またはその部品を製造する場合にはその限りではない。
第18条(罰則) ③次の各号のいずれか一つに該当する者は3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処する。
1. 第2条第1号(チ目、ヌ目、ル目1)から3)まで、ヲ目およびワ目は除く。)による不正競争行為をした者
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第4次産業革命、人工知能などデジタル時代の根幹であるデータの重要性が日々増しており、ビッグデータを活用して経済的付加価値を創出しているが、データを不正使用する行為を防止することのできる法的基盤が不備であった。そこで、本改正法では「データ産業振興および利用促進に関する基本法」上、特定の要件を満たすデータは不正競争防止法の保護対象となり得ると明示した。また保護を受けるべきデータに対して「無権限者の取得、使用、公開」、「不正な目的の提供、使用、公開」、「悪意の取得、使用、公開」、および「技術的保護措置を無力化する行為」などが不正競争行為に属することを明確にした。一方、新設されたル目の4)の行為は刑事処罰の対象である。
2. 有名人の肖像・氏名など他人を識別できる標識を不正競争行為の一つとして新設(第2条第1号ヲ目新設)
第2条第1号 『不正競争行為』とは、次の各目のいずれか一つに該当する行為をいう。
ヲ.国内に広く認識され、経済的価値を有する他人の氏名、肖像、音声、署名などその他人を識別することができる標識を公正な商取引慣行や競争秩序に反する方法で自身の営業のために無断使用することによって他人の経済的利益を侵害する行為
第18条(罰則) ③次の各号のいずれか一つに該当する者は3年以下の懲役または3千万ウォン以下の罰金に処する。
1. 第2条第1号 (チ目、ヌ目、ル目1)から3)まで、ヲ目およびワ目は除く。)による不正競争行為をした者
付則第1条(施行日) この法は2022年4月20日から施行する。ただし、第2条第1号ヲ目の改正規定および第15条第2項・第18条第3項第1号の改正規定のうち、第2条第1号ヲ目に関する部分は公布後6ヶ月が経過した日から施行する。
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ヲ目はパブリシティー権を保護するための規定であって、これまで有名人の肖像などに対する適切な保護規定がなかったことを補完するためのものである。有名人の肖像、氏名などを利用してその有名人などに財産的損失をもたらしたり、消費者がこれを有名人と関連があると誤認して被る被害を保護するために新設された。ただし、刑事処罰の対象にはならず、公布(2021年12月7日)後6ヶ月が経過した日から施行する。
3. 「個人情報保護法」が優先的に適用されるようにするなど他の法律との関係を明確に規定(第15条第1項および第2項改正)
第15条(他の法律との関係) ①「特許法」、「実用新案法」、「デザイン保護法」、「商標法」、「農水産物品質管理法」、「著作権法」または「個人情報保護法」に第2条から第6条までおよび第18条第3項と異なる規定があるときはその法に従う。
②「独占規制および公正取引に関する法律」、「表示・広告の公正化に関する法律」、「下請取引の公正化に関する法律」または「刑法」のうち、国旗・国章に関する規定に第2条第1号ニ目からヘ目まで、ヌ目からワ目まで、第3条から第6条までおよび第18条第3項と異なる規定があるときはその法に従う。
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様々な不正競争行為の対象のうち、特に新たに新設された「データ」には個人情報も含まれ得ることから、保護の必要性が台頭するため、「個人情報保護法」による優先的な適用など他の法律との関係を明確に規定した。
今般の改正により不正競争防止法の保護対象にデータおよび有名人の識別標識などが含まれることを明確にし、これを無断使用する行為を補充的一般条項によらず、それぞれ不正競争行為の類型として明確に規定して制裁することによって、健全な取引秩序を確立し、不当な被害から消費者を保護することとなった。。
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