1. はじめに
事業を始めるに先立ち、これを表示する名称が商号かあるいは商標かについては多くの混同が存在する。商号と商標は、互いに異なる法により保護され、その機能も異なるが、相互間に混同あるいは衝突する事例が多数存在する。以下、両者間の関係に対して如何なる共通点と差異点があるのか、衝突関係は如何に発生するのかを考察する。
2. 商号および商標の定義
「商号」とは、商人または会社が営業上自己を表示するために使用する名称であり、その選定、効力および使用などを商法第4章第18条から第28条で規定している。また、「商標」とは、自己の商品と他人の商品を識別するために使用する標章をいい、商標法でその定義、効力および侵害などについて規定している。
|
商号
|
商標
|
定義
|
商人/会社が営業活動上、自己を表示するのに使用する名称
|
自己の商品と他人の商品を識別するために使用する標章
|
性格
|
人的標識
|
商品/サービスに対する出所表示
|
関連法律
|
商法
|
商標法
|
標示形態
|
文字で表示。外国語の場合は登記のためには発音を漢字またはハングルで表示
|
文字、図形、色彩、匂い、音など多様な出所表示に対して保護
|
権利
|
商号権は商号を選定して使用することにより原始的に発生
会社の場合は登記が必須であるが、個人の場合は任意
|
商標権は商標を出願して登録することにより発生
登録を受けた場合にのみ権利が発生
|
個数の制限
|
一つの会社には一つに制限/個人の場合には一つの営業当たり一つに制限
|
個数制限なし
|
例
|
삼성전자주식회사
(ハングル:サムスン電子株式会社)
|
(ハングル:サムスンデジタルプラザ/モバイルストア)
|
3. 衝突関係
商号と商標はそれを規律している法律も異なり、定義も異なるが、出所を表示できる手段になるという点で衝突が発生している。つまり、商号として使用しているにも拘わらず、他人の商標権を侵害することがあり、商号が商標登録を受けていない場合でも、一定要件下では他人の商標出願を拒絶させる根拠となり得る。
(1) 商号の使用が商標権侵害に該当する場合
商号として使用しているが、当該商号と名称およびサービス/商品が同一または類似する他人の商標を侵害することとなる場合がある。
つまり、商号が商標的に使用された場合であって、出所が表示されるように使用された場合は、全て商標的に使用したものとなり、純粋に商号としてのみ使用することは相当に難しい。
例えば、大法院は、「장수온돌(ハングル:チャンスオンドル)」を「(ハングル:チャンスオンドルなど)」のように使用した場合、これを商標的使用とみなした(大法院2006ダ51577判決(2008.9.25.言渡)参照)。
ただし、このような場合にも侵害に該当しない場合があるが、i)商号を先に使用して先使用権が認められる場合(商標法第99条第2項)、ii)商号を普通に使用する方法で表示して使用することで商標権効力が制限される場合である(商標法第90条第1項第1号)。
このためには、i)先使用権の場合、他人の商標登録出願の前から不正競争の目的なしに国内で継続して商取引慣行により使用すること、ii)効力制限の場合、商号を商取引慣行により使用すること、という要件を満たさなければならない。
(2) 商号により他人の商標出願が拒絶される場合
商人/会社が営業活動上、自己を表示するために使用した名称が著名となった場合、これを含む商標は、承諾がない以上は商標登録を受けることができず(商標法第34条第1項第6号)、さらに、商号が商標として著名となった場合には、これと同一・類似するか、あるいは混同を生じさせる虞がある商標などは、承諾の有無を問わず需要者の出所に対する混同を防止するために登録を受けることができない(商標法第34条第1項第9号、第11号乃至第13号)。
(3) 商標として登録された企業の商号に対する系列会社の商標出願および使用
同じグループ系列会社の間でも法人格が異なる場合、審査過程では全て他人とみなして審査し、法人格が異なる企業の商標については一元化を通じて管理されるようにしている。ただし、既登録の会社名称、先登録商標と同一性が認められる場合の出願は登録が可能である。
出所:特許庁報道資料
|
ロッテ製菓、ロッテフードなどロッテ系列会社がそれぞれ「ロッテ」と結合された商標を保有している状況において、いずれの系列企業も「ロッテ」のみからなる商標は登録不可であり、ただし、「ロッテ製菓+〇〇〇」のように、既存に登録された本人の名称で出願する場合は登録許容。
|
また企業の商号が商標権として登録されている場合、その系列会社であるとしても、独立した法人格を有する別個の企業は商標法上の他人であるため、無断で商標を使用することはできず、両者間の商標権使用契約により商号(商標)の商標的使用が可能である。
韓国特許庁は、大企業の場合、子会社で一元的に商標権の登録を受けてその系列会社に使用料契約を通じて使用料を受けるように誘導している。大企業の場合、認知度が高いグループ名称を商標に使用して短期間で市場占有率を拡大することができるが、グループ名称に対する使用料も支払わずにこのような成長を成し遂げることができれば、中小企業との関係において不合理な面があるためである。
4. 示唆点
事業を始めるに先立ち、商号を決定したとすれば、事業の対象商品/サービスに他人の商標権が登録されているのか確認することが安全である。さらには、他人の使用を禁止させるために最も簡単な方法は、登録商標権に基づいて使用中止を要請することであるため、商号を商標としても登録を受けることが必要であるだろう。
|