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韓国の特許出願過程における補正および分割出願が可能な時期
弁理士 徐相喆

Ⅰ. はじめに

出願人は、発明を特許出願して審査・特許決定・登録という手順を経てこそようやく特許権を取得するようになる。この過程において出願人の権利取得にあたり、出願日の遡及制度として補正(特許法第46条、第47条、第51条)および分割出願(特許法第52条)など、利益制度に関連した規定を置いている。ただし、第三者の不測の損害を防止するために前記利益制度に対して時期的制限を置いている。以下、特許法上の利益制度のうち、補正および分割出願が可能な時期についてそれぞれ考察する。

Ⅱ. 特許出願過程における補正が可能な時期

1. 補正の意義・趣旨および種類

出願の補正とは、特許出願書の方式や出願明細書または図面の記載内容に欠缺がある場合にその欠缺を治癒して適法にする補充・訂正を意味する。
出願の補正は、特許に関する手続の方式に欠缺または不備な事項がある場合にこれを補充・訂正する「手続補正(特許法第46条)」と、特許出願の明細書または図面の内容に欠缺または不備な事項がある場合にこれを補充・訂正する「実体補正(特許法第47条)」とがある。以下、特許出願過程における前記補正が可能な時期を考察する。

2. 手続補正が可能な時期(特許法第46条)

(1) 手続補正の事由
特許法第46条で規定する1)特許法第3条第1項の行為能力がない者が特許に関する手続を踏む場合(同条第1号前段)、2)特許法第6条の代理権の範囲を超える行為をする場合(同条第1号後段)、3)特許法が定める方式に違反した場合(同条第2号)、4)特許法第82条により納付すべき手数料を納付しなかった場合(同条第3号)に該当する。

(2) 補正時期
①出願人は、特許庁長などの補正命令がなくても出願が特許庁に出願係属中である場合には、自発補正が可能である。「特許庁に出願係属中である場合」とは、出願が無効、取下、放棄または拒絶決定が確定する前や設定登録される前をいう。
②特許庁長が手続補正の事由に該当するという理由で期間を定めて補正を命じると、特許庁長が定めた期間内に手続補正が可能である。

3. 実体補正が可能な時期(特許法第47条)

(1) 原則-自発補正(特許法第47条第1項本文)
①特許出願人は、特許法第66条による特許決定の謄本を送達する前まで特許出願書に添付した明細書または図面を自発補正することができる(特許法第47条第1項本文)。
②ただし、特許法第63条第1項による拒絶理由通知を受けた後は、例外で定める期間にのみ補正することができ、これは次のとおりである。

(2) 例外-最初の拒絶理由通知による意見書提出期間(特許法第47条第1項第1号)
①「最初の拒絶理由通知」とは、拒絶理由通知を最初に受けたり、最後の拒絶理由通知ではない拒絶理由通知をいう。「最後の拒絶理由通知ではない拒絶理由通知」とは、特許出願した発明に原始的に存在する拒絶理由を審査官が見逃した後で発見した場合、これに対する拒絶理由通知または審査官が職権再審査をするために特許出願人に特許決定を取消すという事実を通知した場合(特許法第66条の3第2項)、その通知前の拒絶理由通知に対する補正により発生した拒絶理由に対する拒絶理由通知を意味する。
②最初の拒絶理由通知を受けた場合には、当該拒絶理由通知による意見書提出期間に明細書または図面に対して補正を行うことができる(特許法第47条第1項第1号)。審査基準上、意見書の提出期間は通常2ヶ月以内に指定するものの、特許法第15条第2項により出願人の指定期間延長申請がある場合には延長が可能である(審査基準2020、4105頁)。

(3) 例外-最後の拒絶理由通知による意見書提出期間(特許法第47条第1項第2号)
①「最後の拒絶理由通知」とは、最初の拒絶理由通知に対する補正により発生した拒絶理由に対する拒絶理由通知をいう。
②特許出願人は、最後の拒絶理由通知を受けた場合には当該拒絶理由通知による意見書提出期間に明細書または図面に対して補正を行うことができる(特許法第47条第1項第2号)。審査基準上、意見書の提出期間は最初の拒絶理由通知と同一である。

(4) 例外-再審査を請求する場合は再審査を請求する時(特許法第47条第1項第3号)
特許出願人は、特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日(拒絶決定不服審判請求期間が延長された場合にはその延長された期間をいう。)以内に明細書または図面を補正して再審査を請求することができる(特許法第67条の2第1項)。

(5) 注意点-補正の範囲
①前記実体補正を行うことができる時期の明細書または図面は、新規事項が追加されない範囲のみで可能である。「新規事項の追加」とは、特許出願書に最初に添付した明細書または図面に記載された事項の範囲を外れて補正することをいう(特許法第47条第2項前段)。
②ただし、最後の拒絶理由通知による意見書提出期間および再審査を請求する時の補正は、新規事項追加禁止という補正範囲を満足しなければならないことはもちろん、請求の範囲の補正範囲の制限(特許法第47条第3項)も満足しなければならない。既に進行した審査結果を有効に活用して審査促進を図るためである。

(6) 拒絶決定不服審判(特許法第132条の17)内の補正不許可
審査前置主義の廃止により拒絶決定不服審判内は補正が不可能であることに留意しなければならない。したがって、特許拒絶決定謄本が送達された場合、補正の有無により再審査制度と拒絶決定不服審判を適切に活用しなければならないだろう。

Ⅲ. 特許出願過程における分割出願が可能な時期

1. 分割出願の意義・趣旨および客体的要件

分割出願とは、一つの特許出願(「原出願」)に2以上の発明が含まれている場合、原出願の最初明細書または図面に記載された事項の範囲内でその一部を別個の特許出願として分割することをいい、分割出願した場合、その分割出願は原出願をした時に出願したものとみなす(特許法第52条)。1)出願一体の原則を回避し、2)発明の説明または図面にのみ記載された発明を保護し、3)権利範囲の再設計の機会を確保するためである。以下、特許出願過程における分割出願が可能な時期を考察する。

2. 分割出願が可能な時期

(1) 特許法第47条第1項により補正を行うことができる期間(特許法第52条第1項第1号)
特許出願人は、補正が可能な期間内に分割出願も可能である。

(2) 特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日以内の期間(特許法第52条第1項第2号)
ただし、拒絶決定不服審判を請求できる期間が延長された場合にはその期間を意味する。

(3) 特許法第66条による特許決定または特許法第176条第1項による特許拒絶決定取消審決(特許登録を決定した審決に限定し、再審決を含む。)の謄本の送達を受けた日から3ヶ月以内の期間、ただし、特許法第79条による設定登録を受けようとする日が3ヶ月より短い場合には、その日までの期間(特許法第52条第1項第3号)
2015年7月29日に施行された改正法により、特許決定後、産業界の技術標準が決定されたり、模倣製品が出現するなど、市場環境の変化により追加的に権利化が必要な場合、分割出願を通じて特許出願人が能動的に対応することができるようにしている。

3. 拒絶決定不服審判を先に請求した場合

特許拒絶決定謄本の送達を受けた日から30日(拒絶決定不服審判を請求できる期間が延長された場合にはその期間をいう。)以内には、拒絶決定不服審判を請求したとしても、分割出願を行うことができる(審査基準2020、5310頁)。

4. 再審査請求がある場合

ただし、再審査請求がある場合には、特許拒絶決定は取消されたとみなすため、分割出願を行うことができない。もちろん、再審査請求と同時に分割出願を行う、あるいは再審査過程で拒絶理由通知による意見書提出期間に再び分割出願を行うことはできる(審査基準2020、5406頁)。

Ⅳ. むすび

以上、特許法上の利益制度のうち、出願日遡及に関連した補正制度および分割出願制度の時期的要件について考察した。前記制度の時期的要件、さらには客体的要件まで確実に把握して出願人の特許出願が登録されるように特許出願過程および登録において代理人の役割を忠実に果たさなければならないだろう。