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登録無効と関連して正当な権利者でない者の範囲および第三者の意味-大法院2020フ10087判決(2020.5.14.言渡)【登録無効(特)】[公2020下、1128]
弁理士 白才姸

【判示事項】

[1] 特許出願前に特許を受けることができる権利を契約により移転した譲渡人が特許出願して設定登録がなされた場合、その特許権は特許無効事由に該当する「正当な権利者でない者」の特許であることを判示した事例

[2] 特許法第38条第1項で規定した「第三者」の意味、および「正当な権利者でない者」の特許であって、特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人は、上記第三者に該当しないことを判示した事例

【判決の要旨および大法院の判断】

[1] 発明をした者またはその承継人は、特許法で定めるところにより、特許を受けることができる権利を有する(特許法第33条第1項本文)。仮に、このような正当な権利者でない者(以下、「無権利者」という。)が行った特許出願に対して特許権の設定登録がなされれば、特許無効事由に該当する(特許法第133条第1項第2号)。

特許出願前に特許を受けることができる権利を契約により移転した譲渡人は、それ以上その権利の帰属主体ではないため、そのような譲渡人が行った特許出願に対して設定登録がなされた特許権は特許無効事由に該当する無権利者の特許である。

[2] 特許出願前になされた特許を受けることができる権利の継承は、その承継人が特許出願を行ってこそ第三者に対抗することができる(特許法第38条第1項)。ここで第三者は、特許を受けることができる権利に関して承継人の地位と両立できない法律上の地位を取得した者に限る。正当な権利者でない者の特許であって、特許無効事由がある特許権の移転を受けた譲受人は、特許法第38条第1項でいう第三者に該当しない。

【事案の概要】

被告は2012年11月13日付で被告補助参加人に本事件特許発明を製作して供給すると契約し(以下、「第1契約」という。)、甲会社は2012年12月5日付で被告に上記特許発明中の一部を開発して供給すると契約した(以下、「第2契約」という。)。本事件第1契約と本事件第2契約によると、契約を通じて発生した全ての知的財産権(登録可能な権利を含む。)は、被告を経て被告補助参加人に帰属することとなっている。本事件第2契約の履行過程で発生した本事件特許発明に関する特許を受けることができる権利は、発明の完成と同時に発明をした者(甲会社の職員)に基本的に帰属した後、使用者である甲会社を経て本事件第1契約と本事件第2契約により、最終的に被告補助参加人に継承された。しかし、甲会社は、その後、本事件特許発明を出願して特許登録を受け、登録後に原告にその特許権を移転した。

つまり、原告は第1契約と第2契約により使用者である甲会社が出願して登録を受けた特許権の譲渡を受けたところ、本事件特許発明の特許が無権利者の出願として登録された特許であって、無効か否か、および原告が特許法第38条第1項の「第三者」に該当するか否かにおいて争いがあった。

原審は、上記事実関係に基づき、本事件特許発明に関する特許を受けることができる権利は、第1契約と第2契約により最終的に被告補助参加人に継承され、甲会社は特許を受けることができる権利を有する承継人の地位を喪失した無権利者とみなし、甲会社が本事件特許発明を出願して特許登録を受けたため、その特許が無効となるべきであるとみなした。また甲会社から無権利者の特許であって、特許無効事由がある本事件特許権の移転を受けた原告は、特許法第38条第1項でいう第三者ではないため、その規定を類推適用することができないと判断した。

大法院は、上記原審の判決理由に法理を誤解した誤りがないとみた上で、原告の上告を棄却した。

【判決の意義】

本判決は、特許を受けることができる権利を特許出願前に移転した譲渡人は無権利者に該当し、その後に上記譲渡人が出願して登録を受けた特許は、無権利者の出願として登録された特許であって、無効事由を有する特許であることを判示した。

また、上記無権利者の特許であって、無効事由がある特許権の移転を受けた原告は、特許権第38条第1項の「第三者」に該当しないことを明確にした。

【参照条文】

[1] 特許法第33条第1項、第133条第1項第2号
[2] 特許法第33条第1項、第38条第1項、第133条第1項第2号