複数人が共同所有する商標権を更新する場合、2019年10月24日から共有者のうちの1人のみでも可能となる(改正商標法第84条第3項および第118条第1項第2号)。現行法上、商標権は10年毎に更新しなければならず、共有商標権は共有者全員で申請してこそ更新登録が可能であり、共有者のうちの1人でも未申請の場合には返戻された。しかし、10年という長期間の間に移民や破産などにより共有者と連絡がとれなかったり、共有者間の関係が悪化して一方の共有者が悪意的に更新を拒否して商標権が消滅する事例が多数発生している。例えば、2015~2017年に更新登録申請された179件の共有商標権のうち、43件(24%)が共有権者全員の申請でないということにより返戻された。
共有商標権は共同事業などを営む個人および零細事業者の共同出願が大部分である(2017年商標共同出願5,069件のうち、個人間共同出願3,192件(63%))。したがって、今回の商標法改正により個人・零細事業者が10年間使用してきた商標権を簡便に延長することができ、商標権消滅に対する心配なく、安定的に事業を営むことができると期待される。
ただし、共有商標権の持分を譲渡したり、使用権を設定する場合には、依然として共有者全員の同意が必要である(商標法第93条)。したがって、共有商標権者間に紛争が発生したり、他の共有者との連絡がとれないなどの問題が発生したときには、持分譲渡や使用権設定が困難であるため、注意を要する
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