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特許適格性および機能性請求項に対する米国特許庁の改正されたガイドライン
米国弁護士 金允坤

去る2019年1月4日に米国特許庁は35U.S.C.§101により特許適格性(subject matter eligibility)を評価する際に審査官が使用するガイドラインの改正案を発表した。また、米国特許庁はコンピュータで実行される機能性請求項(computer-implemented functional claim)に適用される35U.S.C.§112に対するガイドライン改正案も発表した。上記ガイドライン改正案は2019年1月7日から効力を有する。


1. 特許適格性の審査ガイドラインの改正案

(1) 改正事項

今回の改正案は、35U.S.C.§101によるAlice/Mayoテストで関連請求項が司法的例外(judicial exception)に該当するか否かを判断する基準を提示している。特に、今回の改正案はAlice/Mayo Step 2Aで関連請求項が抽象的アイディア(abstract idea)に該当するか否かを判断する基準を提示している。

今回の改正案によると、関連請求項が数学的概念(mathematical concepts)、人間活動を組織化する方法(certain methods of organizing human activity)、および/または思考プロセス(mental processes)の部類に属する場合にのみ抽象的アイディアに該当すると明示している。仮に関連請求項が上記部類に属しないが、審査官が関連請求項を抽象的アイディアとして判断しようとする場合、審査官は当該出願の審査が配分された技術センター(Technology Center)に関連請求項がなぜ抽象的アイディアに該当するのかを説明し、技術センターの承認を得なければならない。

今回の改正案はまた、関連請求項が司法的例外に該当するか否かを判断するに当たり、審査官は2段階を通じて決定すると指示している。先ず、審査官は関連請求項が司法的例外を明示的に記述(recites a judicial exception)しているか否かを判断する。仮にそうであると判断した場合、審査官は関連司法的例外が実用的適用に統合(integrated into a practical application)されたか否かを判断しなければならない。そして、審査官が関連司法的例外が実用的適用に統合されなかったと判断した場合、これはAlice/Mayo Step 2Aで司法的例外に該当するものと決定され得る。

関連請求項が司法的例外として決定されると、審査官は追加的にAlice/Mayo Step 2Bにより関連請求項が発明的概念(inventive concept)を含むか否かを判断して特許適格性を決定しなければならない。

例えば、審査官が経済活動を組織化する方法に対する請求項を審査すると仮定してみよう。上記請求項は今回の改正案で明示した人間活動を組織化する方法に分類され得るため、審査官は上記請求項を抽象的アイディアとみなすことができる。この場合、審査官は上記請求項が実用的適用に統合されるか否かを判断しなければならない。仮にそうではないと判断した場合、審査官は上記請求項が発明的概念を含むか否かを判断しなければならない。上記請求項が発明的概念を含んでいなければ、特許適格性がないものと決定されるだろう。

(2) 意義

2014年の米国大法院のAlice Corp. v. CLS Bank International判決以降、米国連邦巡回控訴法院は特許適格性の判断基準において一致しない結論を下して出願人と審査官に多くの混沌を招いた。そこで、米国特許庁は今回の改正案を通じて特許適格性の判断において明確な基準を提示しようとしている。米国特許庁は今回の改正案により審査官を教育し、これによって今後の審査過程で多くの変化があると予想される。特に、ソフトウェア関連請求項の場合、抽象的アイディアに分類されても発明的概念を有する場合、特許性が認められる可能性が高まると予想される。

ただし、今回の改正案は法院や特許審判院を法的に拘束する効力がないため、米国連邦巡回控訴法院が今回の改正案を如何に受け入れるのかは見守るべきである。

2. 機能性請求項の審査ガイドラインの改正案

(1) 改正事項

米国特許庁はまた、コンピュータで実行される機能性請求項(computer-implemented functional claim)に対する審査ガイドライン改正案も発表した。今回の改正案が適用されるコンピュータで実行される機能性請求項は主にソフトウェア関連請求項を意味するとみることができる。今回の改正案によると、機能性請求項の判断基準である「means」または「steps」などの用語が関連請求項に直接的に記載されていなくても、当業者により上記用語が構造を説明するものと理解されない場合には、これは機能性請求項として決定され得る。この場合、関連請求項はセクション112(f)の明確性要件を満たさなければならない。

今回の改正案は、関連請求項が機能性請求項であるか否かを判断するに当たり、以下の事項を考慮することを指示している。

(i) 関連請求項の機能性用語の記載有無

(ii) 関連用語が機能式表現(functional language)による定義か否か

(iii) 関連用語が当該機能を行うための十分な構造(structure)、材料(material)、または行為(act)による説明か否か

今回の改正案はまた、関連用語が構造を意味するか否かを判断するに当たり、以下の事項を考慮することを指示している。

(i) 当業者が当該明細書に記載された説明を通じて関連用語が構造を意味するものと理解できるか否か

(ii) 辞書(dictionary)上で関連用語が構造を意味するか否か

(iii) 関連用語が先行技術で当該機能を行う構造として使用されたか否か

(2) 意義

従来の米国特許法は「means」という特定用語を使用していない以上、機能式請求項ではないと判断した。そのため、明細書上に関連機能を行うことができる構造を十分に説明しない出願に対する問題点が提起されてきた。そこで、米国連邦巡回控訴法院はWilliamson v. Citrix Online LLC事件で機能性請求項の判断は当業者が関連用語を構造として理解できるのかにより決定されなければならないとし、今回の改正案は上記控訴法院の決定が反映されたものとみることができる。したがって、今回の改正案は機能性請求項に対する重要な審査基準として位置付けられると予想される。