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「百貨店/大型割引マート業」と「各種衣類/ファッション雑貨の販売代行/小売業」との類否-大法院2016フ1376判決(2018.11.9.言渡)【登録無効(商)】
弁理士 李振輝

1. 事件の概要

[争点]

登録無効事件において、後登録商標の指定サービス業である「百貨店業、大型割引マート業」と、先登録商標の指定サービス業である「衣類販売代行業、衣類販売斡旋業、衣類小売業、各種ファッション雑貨の販売代行/斡旋および小売業」とが類似するとみなすことができるのかが争点となった。

[事件の背景]

本事件は、後登録である本事件登録商標に対して先登録商標との類似を根拠として提起された無効審判事件であり、特許審判院(2014ダン2867)および特許法院(2015ホ6749)では、これら商標の指定サービス業が互いに出処の誤認、混同を生じさせる虞がないため、類似しないと判断した上で、無効請求を棄却した。

特に、特許法院では先登録商標の指定サービス業は、個別商品群、特にファッション関連商品を販売・代行・斡旋したり卸売・小売するサービスである反面、後登録商標の指定サービス業であるコンビニエンスストアー業およびスーパーマーケット業は主に飲食料品と日常用雑貨が主要販売対象であり、大型割引マート業と百貨店業はファッション関連商品と飲食料品および日用雑貨以外にも、家具、家電製品などが含まれるという点から両商標のサービス業は類似しないと判断した。

特許法院の判決が大法院に上告されることに伴い、先登録商標と本事件登録商標のサービス業が類似するとみなすことができるのかが再び争点となった.

大法院は、結局、これらサービス業が互いに類似すると判決した上で、原審である特許法院の判決を破棄し、差し戻した。

2. 大法院の判断

大法院は以下のような点を考慮して「百貨店業、大型割引マート業」が「衣類/ファッション雑貨の販売代行/斡旋、小売業」と類似すると判断した。

(1) 両サービスが共に衣類およびファッション雑貨などを需要者を相手に直接販売するサービスを提供する点

(2) 百貨店で衣類とファッション雑貨が占める比重が高い点

(3) 先登録商標出願当時の商標関連規定上、「百貨店業、大型割引マート業」などの包括名称のサービス業名称を指定することができなかった点

(4) 「百貨店、大型割引マート」内部の店舗は製造業者から物品の供給を受けて需要者に直接販売し、「百貨店、大型割引マート」の営業主体に賃貸料や手数料を支給することが一般衣類/雑貨小売店と運営方式が類似する点

(5) 本事件登録商標の審査当時に適用されていた審査基準には、本事件登録商標の指定サービスと類似する例として「化粧品/カバン/履物販売代行および斡旋業」が記載されていた点

(6) 上記のような事情に照らし合わせてみると、両サービス業に類似商標を使用する場合、同一の営業主体により提供されるサービスと誤認する虞がある点

3. 本判決の意義

特許庁の現行商品/サービス類似判断基準によると、「百貨店業、大型割引マート業」と個別商品に対する小売関連サービスとは類似しないと推定している。

しかし、本大法院の判決は「百貨店業、大型割引マート業」と「衣類/各種ファッション雑貨小売/販売代行/販売斡旋業」とは類似するとみなすことができるとし、現行特許庁の審査基準とは異なる立場を示した。

これによって、「百貨店業、大型割引マート業」と関連して商標出願をしたり商標使用をする場合、「衣類/各種ファッション雑貨小売/販売代行/販売斡旋業」を指定した他人の同一または類似商標にも抵触することがあり、その反対の場合も同様である。

ただし、今回の事例では先登録商標が多い種類の卸小売業/販売代行および斡旋業を指定していたが、単に1~2個程度の狭い範囲の衣類/ファッション雑貨を指定した卸小売業/販売代行および斡旋業も「百貨店業、大型割引マート業」と抵触するのか、衣類/ファッション雑貨に関するものでなく、他の種類の卸小売業/販売代行および斡旋業も「百貨店業、大型割引マート業」と類似するとみなすことができるのかは明確ではない。