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出願前の積極的公知による逆襲戦略
弁理士 李鎔圭

特許出願をしてみると、うんざりするほど聞かされる話がある。それは発明公開前に出願をしなければならないということだ。これは論文の公表や公然実施などの不特定多数を対象とした公知行為がある前に出願をしてこそ当該出願が新規性を喪失することなく特許登録が可能であるためである。しかし、逆説的に出願前に積極的に当該発明を公知化する必要がある場合もある。このような場合を次のとおり整理する。

1米国特許法§102(b)(1)(B)(新規性喪失の例外)の適用を受けるための要件(シールド規定)

米国特許法§102(b)(1)(B)では、当該発明の公知前に発明者、共同発明者またはこれらから直・間接的にその内容を知得した者による公知があった場合に新規性喪失の例外の適用を受けることと規定している。この内容はシールド(shield)規定と呼ばれるが、これは先立った公知行為を利用して後続公知行為(発明者と関連のない公知を含む。)を全て防ぐことができるためである。発明者の立場では同一の技術を開発する競争会社が多くて当該発明が続けて公知となる可能性があれば、これを積極的に先に公開することが好ましい場合があり、その後1年以内に特許出願さえすれば新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。皮肉なことに、発明者でなく、発明者から直・間接的にその内容を知得した者が当該発明を開示しても、これによる後続公知の無力化が可能である。これは出願内容の積極的な公知を誘導して第三者がこれを利用可能にすることによって産業を発展させようとする趣旨とみられる。

ただし、この戦略は米国出願のみに限定される。新規性喪失の例外が認められるための条件が厳しい日本、中国、欧州にも海外出願を計画しているならば、この戦略は使えない。

2.原特許保有権者のクロスライセンス阻止戦略

原特許(下図のA)を保有した場合、R&D活動が持続されつつ発明の実施に必ず必要な周辺技術が開発され得る。一方、競争会社(下図のB)も、A社より遅れて原特許保有は不可能ではあるが、事業化などを通じて原特許の改良特許を出願することができる。ここで、A社がB社の改良発明の出願前に周辺技術を積極的に公知化する戦略を使えば、その公知によりB社は改良特許の取得が不可能となる。結局、B社は改良特許を利用したA社とのクロスライセンスが不可能となって当該分野の事業が難しくなる。

3.出願重要度が顕著に低い発明の処理

通常、大企業では多数の職務発明が申請されるため、これらを等級化する。この場合、出願重要度が顕著に低い発明の場合、特許出願をすれば費用が多くかかり、出願しなければ競争会社が同一発明に対して特許を取得する危険性が存在する。この場合、特許庁が運営するインターネット技術公知資料室に当該発明を即時公知化する戦略を使うことができる(登録資料はKIPRISの「インターネット技術公知」でも検索可能)。公知化により同一発明に対する競争会社の特許取得を未然に防止できるだけでなく、公知化による費用も発生しない。さらに、公知となった発明が後日、特許取得が必要な重要な発明と判明した場合、公知後1年以内であれば、特許出願して新規性喪失の例外規定の適用を受けることができる。

*資料出処:USPTO AIA教育資料

 

KIPRISの「インターネット技術公知」ページ