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中国における商標権無断先占被害事例と対策
ニュージーランド弁護士 金叡娜

最近、中国の知的財産権分野の急速な成長に比べて相応する権利保護が不十分な点を狙って、商標ブローカーの無断先占による紛争がしばしば発生している。特に、中国に進出した外国企業の場合、中国の制度に対する理解不足により無断先占紛争の発生時に適切な措置を取ることができず、経済的損失と困難を経験している。これと関連した紛争の一つの事例を紹介する。

中国のブローカーA氏は、有名外国会社B社の製品包装デザインのうちの一部の図形を出願して登録を受けた。その後、A氏は、中国の有名電子商取引プラットホームであるアリババ、天猫(Tmall)、京東(JD.com)などで販売されているB社製品に対して自己の商標権を侵害したという理由で申告した。商標権侵害物品が取り引きされた電子商取引プラットホームの運営主体は、中国の侵害責任法の規定により、権利者の通知に対して相応する措置を取る義務を負担し、適切な措置を取らずに発生する拡大損害に対して侵害者と連帯責任を負担しなければならない。そこで電子商取引プラットホームの運営主体は、A氏所有の商標と類似する図形が付着されたB社ブランド製品の表示を削除する措置を取り、これによってオンラインショップでの製品販売を中止されたB社は莫大な経済的損失を被ることになった。これだけでなく、A氏は、B社の中国オフラインショップに対する行政取締を申請して営業を妨害し、自己が無断先占した商標をB社に巨額で販売しようと試みた。結局、B社は、不正競争および自己の先著作権を根拠として杭州人民法院に訴訟を提起し、審判部は当該デザインに対するB社の先著作権を認めて、A氏に、原告であるB社に損害賠償金を支給せよとの判決を下した。たとえ訴訟に勝訴しても、B社が実際に被った経済的損失は、B社が受けた賠償金を遥かに上回る。これと類似するリスクを遮断するために取られる事前措置は次のとおりである1

1.商標登録

上記のような類型のリスクを予防する最善の方法は、商品のパッケージデザインの主要要素(primary elements)の全てに対して商標登録を受けることである。中国で商標登録を受けるのに要する期間は約12ヶ月であり、関連商品を販売する以前に予め登録を受けることを勧める。

2.著作権登録

適時に商標登録を受けることができなかった場合には、中国版権保護センター(CPCC)を通じて著作権登録を受けることを提案する。中国は著作権登録を受けるまで通常12ヶ月程度を要し、著作権保護期間は50年である。

保護を受けようとするデザイン/図形に対して著作権登録を受けた場合は、少なくとも第三者の攻撃に対抗できる基本を備えたとみることができる。したがって、著作権登録が完了した場合、第三者が無断先占した商標権侵害を主張しつつオンライン販売者に対して申告したり工商局に行政取締を申請したとしても、当局は簡単にオンラインショッピングモールで販売製品の表示を削除したり取締を執行することができない。

ただし、中国商標局(CTMO)と版権保護センター(CPCC)は独立した機関であり、相手方が同一の図形やデザインを商標として登録を受けることまで検索して防ぐことは難しい。

中国において著作権登録証は、異議申立、無効審判、民事訴訟などにおいても先権利の立証に有用な証拠として活用することができるが、著作権登録日が商標出願日より遅れる場合には、著作権登録証のみでは先権利としての著作権立証にならないという点も記憶しなければならない。

3.デザイン登録

新規性(novelty)を有するデザインの場合、デザイン登録を受けることを考慮してみることができる。著作権登録と同様に、デザイン登録は第三者のクレームに対抗して民事または行政訴訟で先権利を立証する一応の証拠(prima facie evidence)として活用することができる。

中国における権利侵害のリスクは他の殆どの国よりも遥かに高いといえる。訴訟にかかる費用、経営損失あるいは市場シェアに対する損害と比較すると、事前権利登録費用は相対的に低い。したがって、中国における商標ブローカーによる無断先占紛争の予防のためには、事前に防御手段を確保しておくのが最善の選択であるともいえる。