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多数の商標登録事例および取引社会使用事例と商標の識別力判断
YOU ME 法務法人 弁護士 全應畯・鄭相鮮

Ⅰ.はじめに

結合商標中の一部の構成部分を含む商標が、その指定商品と同一・類似する商品に関して多数登録されていたり出願公告されている事情を、当該構成部分が要部として機能できる識別力がない、あるいは微弱であるか否かを判断する時に考慮することができ、このような場合、登録または出願公告された商標の数や出願人または商標権者の数、当該構成部分の本質的な識別力の程度および指定商品との関係、公益上、特定人に独占させることが適当でないとみえる事情の有無などを総合的に考慮して判断しなければならない(大法院2015932判決(2017.3.9.言渡)など)

これと関連して、以下では被告が原告登録商標の識別力を否定するために提出した多数の商標登録事例および取引社会使用事例を、法院が原告登録商標の識別力の判断時に如何なる基準で考慮したのかについて、当法務法人の勝訴事例を通じて紹介する。

Ⅱ.事件の経過

1.事案の概要

原告の登録商標は結合商標であり、図形が主な構成をなしている。被告は、原告の登録商標と類似する商標を原告使用商品と同一・類似する多数の製品に使用してこれを販売した者である。原告は、市場シェア業界1位の企業であり、原告登録商標を約20年前から使用してきており、登録商標が表示された商品に莫大な規模の広告費を支出した。原告は、有名ドラマの主人公が原告の登録商標が表示された製品を食する姿を露出させる、いわゆるPPL広告(間接広告)方式を介しても広告をしたが、被告は、自己が運営するホームページに有名ドラマの主人公が好む製品であると広告を出し、原告登録商標と類似する商標を付着した製品を販売したこともある。これに対して原告は、被告を相手取って不正競争行為差止および損害賠償を請求する訴えを提起した。

2.第1審判決

原告は、被告の行為が不正競争防止法第2条第1()目および()目の不正競争行為に該当すると主張した。これに対して原審は、原告の登録商標の周知性を認めた上で、被告標章と原告登録商標は、一般の需要者の立場で全体的・離隔的に観察する際、その外観が与える支配的印象と観念が同一・類似すると判断した。

被告は、当該業界では原告登録商標の図形が商標として多数登録されてありふれて使用されているため、原告登録商標の図形は識別力がない、あるいは微弱であると主張した上で、多数の登録商標を証拠として提出した。これに対して原審は、原告登録商標は原告が製造・販売する製品であることを表示する商品標識として国内に広く認識されて周知性を獲得したため、被告の主張のように当該業界に原告登録商標図形がありふれて使用されているという事情のみでは原告登録商標図形の識別力がない、あるいは微弱であるとみなすことができないと判断した。また原告登録商標の出願日を基準として、出願日以前に指定商品と同一・類似する商品に関して原告登録商標の図形と類似する商標として多数登録されているという事実を認めるには不足するとみて、原告登録商標の図形は識別力がない、あるいは微弱であるとみなすことができないとした。

つまり、原審は、登録商標の図形に対する識別力の判断時、被告が提出した多数の登録商標を原告登録商標の識別力の判断要素として考慮する際、原告登録商標図形の周知性獲得の有無と、被告が提出した多数の登録商標が原告登録商標の出願日以前の登録商標であるか否かを識別力の判断基準とした。

結論として、原審は、原告登録商標は原告が製造・販売する製品であることを表示する商品標識として国内で広く認識されており、一般の需要者から良質感を認められていると認めた上で、被告が国内に広く知られた原告登録商標と類似する被告標章を被告製品に表示して製造・販売する行為は、一般の需要者に原告商品と混同を生じさせる行為であって、不正競争防止法第2条第1()目が定める不正競争行為に該当すると判断し、原告の不正競争行為差止請求および損害賠償請求一部(5000万ウォン)を認容した。被告は、当該判決に控訴した。

3.第2審判決

特許法院は、原審と同一に被告の行為が不正競争防止法第2条第1()目が定める不正競争行為に該当すると判断した上で、被告の控訴を棄却した。控訴審は、原告登録商標が周知性のある商品標識と認めつつ、原告商標と被告標章は図形を主要構成としてその大きさや位置、比重の面で観察者の視線を集めて全体的な印象を左右しており、図形をなす細部的な形態と色彩における差異は、離隔的観察では殆ど把握することができない微差に過ぎないため、両標章は全体的にみると、支配的な印象が類似すると判断した。

控訴審で被告は、原告商標の図形部分は当該業界で頻繁に使用され、多数の商標権者により多数の商標が登録されているため、識別力がない、あるいは微弱であると主張した上で、総計95件の登録商標と取引社会で使用される117件の標章を証拠として提出したが、被告のこのような主張に対して特許法院は、不正競争防止法第4条による差止請求認定の判断時点である事実審の弁論終結当時を基準として、原告商標の図形部分の識別力を判断した。特許法院は、原告登録商標の図形の本質的な識別力の有無に対する判断基準として3つの基準(物品の擬人化の有無、特定の形状に配置されたか否か、物品の特定部分が表現された形態)を提示し、この基準の全てに符合して類似すると評価されるものとしては、わずか5件程度の登録商標と5つ程度の取引社会使用標章があると前提した上で、しかもこれらに対しても原告が類似商標に対して特許審判院に無効審判を請求し、使用差止を求める訴えを提起するなど識別力の維持のために努力してきた点、原告の登録商標は周知性がある点などを理由として原告登録商標の図形の識別力は依然として強く、被告が提出した証拠のみではその識別力がなくなる、あるいは微弱になったとみなすことができないとした。つまり、特許法院は、被告が多数の登録商標と取引社会使用事例として提出した多くの証拠のうちから、原告登録商標の図形の主な特徴を反映したもののみを原告登録商標図形の識別力の判断時に考慮した。

原審法院が原告登録商標の識別力の判断時、原告登録商標の周知性と出願時点などを基準として多数の登録商標と取引社会使用事例を排斥したとすれば、特許法院は、原告登録商標の周知性に加えて原告登録商標の本質的な識別力の有無の判断基準を具体的に提示した上で、多数の登録商標がこれに符合するか否かと、原告が登録商標の識別力維持のために努力したか否かを追加的に考慮したという点に差異がある。

Ⅲ.むすび

結合商標中の一部の構成部分が要部として機能できる識別力がない、あるいは微弱であるか否かについて判断する際は、当該構成部分を含む商標がその指定商品と同一・類似する商品に関して多数登録されているか、出願公告されている事情も考慮することができる。しかし、このような事情を考慮する際、原告登録商標の周知性獲得の有無、原告登録商標の出願日時点以前に多数の登録商標が出願されたか否か、多数の登録商標事例と取引社会使用事例が原告登録商標の本質的な識別力の有無の判断基準に符合するか否か、原告が登録商標の識別力維持のために努力したか否かを総合的に考慮したという点で原審と特許法院判決は意義がある。