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PCT協力審査で得られる出願人の利点は?
弁理士 李鎔圭

PCT協力審査制度(Collaborative Search and ExaminationCS&E)201871日から202161日まで試験的に施行される。PCT協力審査時にはPCT出願の国際調査報告書(ISRInternational Search Report)と見解書(WOISAWritten Opinion of the International Searching Authority)を先進5ヶ国特許庁(IP5-欧州、日本、韓国、中国、米国)が共同で作成する。これまでは出願人が選択した国際調査機関が作成した国際調査報告書と見解書を受けることができたが、PCT協力審査ではIP5が共同で作成した国際調査報告書と見解書を受けることができる。出願人がPCT協力審査を希望する場合には、PCT出願と同時にPCT CS&Eを申請する。その後の手続は以下のフローチャートのとおりである。

 

<PCT協力審査手続>

出願人がPCT協力審査を申請する場合に得られる利点は以下のとおりである。

(1) CS&E申請費が無料であり、特に個別国の出願から登録までの費用を大きく節約することができる。

試験事業であるため、PCT協力審査申請時に別途の費用はかからない(試験事業終了後に制度を採択する場合には手数料追加予定)。ただし、英語によるPCT出願書を提出しなければならないため、明細書翻訳費用がかかり、国際調査料もさらにかかる(韓国特許庁が国際調査機関である場合、45万ウォン→130万ウォン)。そして、協力審査結果によりPCT国際段階で19/34条補正を先制的に実施する場合、各主要国への出願時にOAが発生することなく特許登録されることもあり得る。したがって、1回当たりUSD 2,0003,000程度がかかるOA費用を節約することができる。

(2) 審査品質が向上し、主要国での特許登録の可能性の予測が可能である。

IP5各庁で実体審査を行うため、審査品質が向上して登録後に特許が無効となる可能性が低くなる。また、IP5が作成した国際調査報告書および見解書が提供されるため、主要国での特許登録の可能性を以前よりは正確に予測することができる。特許登録のための請求項の権利範囲の限定を争う余地がある場合には、本出願とは別途に権利範囲を限定していない分割出願や継続出願を行うことができる。

(3) PCT-PPH(特許審査ハイウェイ)を通じて早期の特許登録が可能である。

PCT協力審査により提供された国際調査報告書および見解書に対応して請求項を補正した後、国内段階移行時にPPH手続を踏むことができる。この場合、審査期間が短縮されて特許登録を早期に受けることができる。

ただし、PCT協力審査の総件数は2年間で500件と限定されており、主審の国際調査機関は100件のPCT協力審査のみが可能(技術別にも件数限定が可能)であるため、韓国特許庁を受理官庁にしてPCT出願しながらPCT協力審査を希望する際には急ぐ必要がある。この場合、韓国特許庁または日本特許庁を国際調査機関として指定することができるとみられる。また、出願人別に10件までのみPCT協力審査申請が可能であるとの点も留意する必要がある。そして、PCT Rule 42.1により国際調査報告書の作成期限が決められるが、協力審査による付加的行政業務により作成期限が延びることがある点も考慮する必要がある。