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FTA関連商標法及び著作権法改正内容
弁理士 李慶淑, 黄娜妍

I. 韓・米FTA関連商標法改正案(2011.12.2.一部改正、施行日は韓・米FTA発効日)

 1.匂い及び音商標の導入

 (1)導入背景

米国とのFTAを通じて米国商標庁では以前から商標登録を許可してきた音商標(代表的な例として映画開始部分に出る米国MGM社のライオンの咆える声)又は匂い商標が韓国特許庁でも商標の登録対象として認められ、非視覚的な商標も登録可能な範囲に追加して出所標識としての機能を認めるためである。

 (2)具体的な規定

    -2条第1項改正及び同条同項ハ.目新設、第2条第2項改正

 (3)導入趣旨及び期待される事項

韓国商標法上商品やサービスが包装され提供される要素の総体(totality)’、つまり、トレードドレス(trade dress)に対する別途の規定が存在せず、視覚的な商品及びサービス業の出所標識に対してのみ商標登録を許可してきた結果、特定人の出所標識として機能することができる非視覚的なものに対しては保護の必要性が認識されてきた。

匂い及び音商標の導入を通じて、狭義では非視覚的な要素も商標登録が可能になったのはもちろん、広義では商品及びサービス業を提供するにあたって特定人が使用する一連の全般的な出所標識方法に対する法的保護を始める初段階とみることができる。

 

2. 証明標章の導入

 (1)導入背景

証明標章も、音又は匂い商標と同様に、米国商標庁では以前から認められてきた制度であり、今般米国とのFTA締結により韓国商標法に導入された。証明標章の代表的な例として国際羊毛事務局(International Wool Secretariat)で一定水準の品質を有する羊毛製品にのみ付与する品質保証マークであるがある。

証明標章は、これを設定する商品やサービス業の品質、原産地、生産方法などの特性を表示したり該当商品又はサービス業の品質保証機能を強化し、消費者に商品やサービス業に対する正しい情報を提供するためのものとして、一般的な商品及びサービス業の出所標識機能以外の機能を果たしている。

 (2)具体的な規定

2条第1項で証明削除後、別途の証明標章条項新設(2条第1項第4号及び第4号の2、第3条の3)

 (3)導入趣旨及び期待される事項

商標の機能中、品質保証機能を強化させる証明標章が韓国商標法に導入されることに伴って、出所標識機能に焦点をおいていた商標の概念から高品質の商品又はサービスであることを表示する概念にその範囲が拡大されたといえる。証明標章の効率的な運用により需要者及び取引者は認証された良質の商品、サービス業を判別することができ、これによって公正な競争が誘導され得る。商標法が競業秩序のための公益的な法規定であることを考慮する時、証明標章の導入は経済的側面でも有意義な改正事項と考えられる。しかし、証明標章制度の運用にあたり、認証マーク使用者に対する管理と規制、模倣マークの使用に対する処罰などが問題になるところ、これに対する徹底した法律適用が必要である。

 

3. 専用使用権者登録義務制度廃止

 (1)導入背景

既存商標法によると、商標権に対する専用使用権者は専用使用権を登録することではじめて第三者に権利の効力を主張することができるため、登録有無と関係なく権利が認められる通常使用権者に比べてその権利行使要件が難しかった。これは商標権と同様に排他的な性格を有する専用使用権の特性上、権利行使に制限をおくための規定であったが、登録していない専用使用権者が実際に登録商標が付着された商品を生産又は販売していても権利を主張することができないという問題点を抱えていた。そこで、改正商標法は商標使用権者の権利保護を徹底させるために専用使用権者登録義務制度を廃止した。

(2)具体的な規定

58通常使用権などの登録の効力専用使用権、通常使用権などの登録の効力に変更して第三者に対抗することができる登録の効力規定を専用使用権者にも適用させようとした。

 

II. 韓・EU FTA関連著作権法改正内容(2011.7.1.施行)

    1. 著作権保護期間を著作者死後50年から70年に延長する(39)

ただし、社会に及ぼす影響を最少化するために2年の施行猶予期間をおく(施行日は2013.7.1.)

2. 著作隣接権者の権利推定(64条の2新設)

実演者・レコード製作者そして放送事業者としての実名又は広く知られた異名が一般的な方法で表示された者が該当著作隣接権者としての権利を有すると推定する。

3. 公衆のアクセスが可能な場所で放送の視聴と関連して入場料を受け取る場合に限り、放送事業者の公演権を認める(85条の2新設)

例えば、上映の対価として入場料を受け取らないなら一般事業所(飲食店、居酒屋など)で放送番組を常用することに対しては適用されない。

4. オンラインサービス提供者を単なる導管(インターネット接続サービス)、キャッシングサービス、保存サービス、情報検索ツールサービスの4類型に分け、各類型別の免責要件を明確にする(102条第1項)

オンラインサービス提供者(OSP)4つに類型化して該当類型に該当する要件を満たせば責任を免除するようにしてOSPの事業を安定的に営むことができるようにする。

5. 技術的保護措置の無力化を禁止し、ただし、禁止に対する例外を設定する(104条の2新設)

技術的保護措置定義規定に既存の利用統制にアクセス統制を追加し、アクセス統制の技術的保護措置を含む、技術的保護措置の無力化禁止規定を新設する。

     一方、著作物の公正な利用阻害を最少化するために例外条項を具体的に列挙して免責する。

 

III. 韓・米FTA関連著作権法改正案(2011.12.2.一部改正、施行日は韓・米FTA発効日)

1. 一時的保存を複製の範囲に含まれるように明示する(2条第22号、第35条の2及び第101条の32項新設)

デジタル環境で著作権者の権利をバランスよく保護するために一時的な保存を複製の範囲に明示し、ただし、円滑且つ効率的な情報処理のために必要と認められる範囲内で包括的例外を認める。

2. 著作物の公正な利用制度導入(35条の3新設)

現行法上の著作財産権制限規定以外に著作物の通常的な利用と抵触せず、且つ著作者の合理的な利益を不当に阻害しない範囲内で報道、批評、教育、研究などのために著作物を利用可能にする包括的な公正利用規定を新設する。

3. 排他的発行権の導入[7(57条、第58条、第58条の2及び第59条から第62条まで)、第7節の2(63条及び第63条の2)新設]

既存著作物の出版とコンピュータプログラムの発行にのみ認められていた排他的発行権制度をすべての著作物の発行及び複製・転送に設定することができるようにし、排他的発行権から出版権を除外して排他的発行権と出版権の関係を明確にする。

4. 著作隣接権保護期間延長(86条第2)

放送を除外した著作隣接権の保護期間を50年から70年に延長する(施行日は2013.8.1.)。

5.  オンラインサービス提供者の責任制限要件具体化(102条第1項第1号ハ目及びニ目新設)

オンラインサービス提供者の免責要件に反復的著作権侵害者アカウント解除政策実施及び標準的な技術措置受容’要件を追加する。

6. 複製・転送者に対する情報提供請求制度導入(103条の3新設)

権利主張者が訴え提起などのためにオンラインサービス提供者に複製・転送者に関する情報を要請したが拒絶された場合には、文化体育観光部長官に該当オンラインサービス提供者に対してその情報の提供を命じるように請求することができるようにする。

7. 著作権者の権利侵害行為禁止(104条の4から104条の7まで新設)

著作権者の権利侵害を防止するために暗号化された放送信号を無力化する行為、偽造ラベルを配布する行為、映画上映館などで著作財産権者の許諾なしに映像著作物を録画・公衆送信する行為及び放送前信号を第三者に送信する行為などを禁止する。

8. 法廷損害賠償制度導入(125条の2新設)

実損害立証の困難を解消するために著作物当り1千万ウォン以下、営利目的で故意の侵害である場合に5千万ウォンの法廷損害賠償を請求可能。

9. 情報提供命令制度導入(129条の2新設)

法院は当事者の申請により証拠を収集するために必要な場合には、他の当事者にその者が保有している不法複製物の生産及び流通経路に関する情報などを提供するように命じることができ、他の当事者は営業秘密保護のための場合などには情報提供を拒否することができるようにする。

10. 秘密維持命令制度導入(129条の3から第129条の5まで新設)

法院は提出された準備書面などに含まれている営業秘密が公開されることで当事者の営業に支障が生じる恐れがある場合などには、当事者の申請により決定を該当営業秘密を知り得た者に訴訟遂行以外の目的で営業秘密を使用する行為などを行わないことを命じることができる。

11. 非親告罪対象拡大(140)

非親告罪対象範囲を営利のために常習的な著作権侵害から営利目的又は常習的な場合に拡大。

12. 著作隣接権保護期間の特例(付則第4条新設)

韓国大衆音楽ルネサンス期のレコードに対する十分な保護を回復するために1987.7.1.から1994.6.30.間に発生した著作隣接権の保護期間を発生した時の翌年から起算して50年間存続するようにする。