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図形商標の類似
YOU ME 法務法人 弁護士 全應畯・ 辛東桓

Ⅰ. はじめに

商品またはサービスの出処表示である商標の重要性に対する認識と関心が日々高まっている。ブランド価値評価機関の評価によると、「三星」のブランド価値は約100兆ウォンに達するという。多くの優良企業が自社のブランドを象徴する商標として文字商標以外に図形商標を併行して使用している。文字を認識し、その意味を考える思考過程が必要な文字商標とは異なり、図形商標は見た瞬間、特定企業を連想させることができるという長所がある。単に文字を覚えるよりは、イメージを連想させて覚えれば遥かに早く多くの量を覚えることができるというイメージ記憶法のような原理である。

文字商標は、これを構成する文字の限定された場合の数によって、多様なケース毎の類否判断基準が類型別に比較的に細かく定立されており、多少特異な事案であるとしても従来の先例を類推して適用可能な場合が多い。反面、図形商標は、その場合の数というものが実に無限であり、これを類型別に範疇化することも難しいだけでなく、具体的な類否判断における観点により結果に偏差を示す場合が多い。

したがって、「商標の類否は商標の外観・呼称・観念を一般需要者の立場で全体的、客観的、離隔的に観察して商品の出処に関して誤認・混同を起こす虞があるか否かにより判断」するという商標類否判断の一般法理を適用するに当たり、図形商標は文字商標とは多少異なる方式の接近が必要である。以下では侵害者の図形商標が権利者の登録商標とは類似しないという特許審判院の審決が下された状況で進行された商標権侵害差止および損害賠償請求の民事訴訟において当該審決の結論を覆し、侵害者の図形商標が商標権者の登録商標と類似するという判決を導いた当法務法人の勝訴事例を紹介する。

Ⅱ. 事件の経過

1. 事案の概要

原告は、A健康機能食品を販売する会社であって、当該商品市場で独歩的な市場占有率と共に需要者の絶対的な信頼を得ている企業である。このような原告が商品標識および営業標識として使用する文字商標は、国内はもちろん、中国などでも著名な商標である。原告は、商品と広告などにほぼ常に当該文字商標と共に図形商標を表示しており、原告が持続的に実施しているアンケート調査結果によると、原告の図形商標は周知性を越えて著名性を獲得したことが確認される。また、当該図形商標は既に従前から国内で少なくとも周知性を獲得したと認める多数の法院判決が存在する商標でもある。

A健康機能食品市場では原告の製品に対する需要者の絶対的な信頼に便乗して営業をしようとする侵害者が絶えず生じている。そのような侵害者が原告の需要者の信頼に便乗する典型的な手段は原告の著名な図形商標と類似する図形商標を使用することによって顧客に誤認・混同を誘発するものである。被告は、食品業界で比較的長い企業歴史を有する会社であるが、最近、A健康機能食品市場に進出し、短期間で自社の知名度を高める目的で原告の著名な図形商標と類似する商標を原告商品と同一の商品に使用して販売し始めた。

原告は、被告を相手に商標権侵害および不正競争行為の差止を求める訴えを提起する前、被告との交渉を通じて侵害を認め、直ちに不法行為を中止するよう丁寧に要請した。原告は、通常、一定規模以下の初期侵害段階で侵害者が商標権侵害を認めて不法行為を即時中止すれば、それ以上の法的措置を取らずに事件を円満に終えるのが原則であるところ、本事件被告にも同一の手続を進行しようとした。しかし、被告は、侵害を否定して在庫品を全部販売すると宣言し、原告の合意要請を拒否した。

これに対して原告は、被告を相手にソウル中央地方法院に商標権侵害差止などを求める訴えを提起し、これに対して少し後に被告は特許審判院に被告の侵害標章が原告登録商標の権利範囲に属しないという審決を求める消極的権利範囲確認審判を請求した。

2. 特許審判院の審決および原告の対応     

特許審判院は、原告登録商標と被告侵害標章の類否を判断するに当たり、両図形商標を構成する各個別図形乃至色彩を10個余りの構成に細かく分けた後、各個別図形乃至色彩を対比してその具体的な差異点を指摘し、その外観などに差があるとの理由により両図形商標は類似しないと判断した。被告は、当該審決文を民事法院に参考資料として提出し、両商標が類似しないという事実を裏付ける資料であると主張した。

しかし、原告訴訟代理人の判断では、上記のような特許審判院の論理は、図形商標で外観が類似するかを判断するに当たり、基本的な観察方法は離隔的、全体的観察であり、特に図形商標は不正確な一瞬間の観察により外観から感じられる全体的な印象が同一であるかを考察して類否を判断しなければならないという大法院の態度に反するものであった。そこで、原告訴訟代理人は、図形商標の類否を判断した事例として、本事案と最も類似する大法院2011フ1548判決(2013.7.25.言渡)を根拠として上記特許審判院の審決の不当性を指摘した。

3. 法院の判断

特許審判院とは異なり、民事法院は、原告登録商標と被告侵害標章は主要構成の形状が酷似し、これらが全体的に同一のモチーフやアイディアを連想させ、また当該構成はその大きさ、位置、比重などにおいて観察者の視線を引いて全体的な印象を左右しているため、全体的にも両標章はその外観が与える支配的な印象が類似し、同一・類似する観念を惹き起こすと判断した。特に、図形商標を構成する細部的な構成が異なるという被告の主張(特許審判院の審決論理と大同小異)に対しては、「そのような細部的な差は両標章の構成部分を形式的に分解して意図的に拡大した後、微細に観察した時にようやく認知できる程度に過ぎず、両標章は全体的な構成とそれから与える支配的な印象が類似するという点は上述のとおりであるため、被告の主張のような事情のみでは一般需要者の立場で全体的・離隔的に観察すると、そのような些細な差が上記のような全体的な外観および観念の類似性を阻害する程度であるとはみなし難い」と説示して被告の主張を排斥した。

これによって、民事法院は、原告の周知の商品標識と類似する商標を使用する被告の行為が不法行為であることを認め、これに対する差止と共に被告に相当額の損害賠償を命じる判決を言渡した。

Ⅲ. むすび

本事件で民事法院は、図形商標の類否判断において基本的な観察方法は離隔的、全体的観察であるという点および図形商標は不正確な一瞬間の観察により外観から感じられる全体的な印象が同一であるかを考察して類否を判断しなければならないという点を明確にし、このような判断論理は大法院が説示する図形商標の類否判断の法理にも符合する。

通常、知的財産権の紛争において特許審判院の審決が下されると、審決取消訴訟でその結論が変わるなどの特別な事情がない限り、民事法院がこれと異なる判断をする場合は殆どない。本事件は特許審判院の審決にも拘らず、当事者の主張、立証努力により民事法院がいくらでも異なる判決を下すことができるという事実を示す代表的な事例である。