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オーストラリアの市場分析およびオーストラリアの知識財産権制度
弁理士 金チョロム

オーストラリアは6州と2準州から構成された人口約2,400万の英連邦国家であり、2017年を基準にGDP世界13位(1兆3,910億ドル)、1人当たりGDP世界17位(55,670ドル)の先進国である。オーストラリアの産業は主に農業、畜産業などの第1次産業と金融、観光、教育などの第3次産業を中心としており、これに反して製造業などは脆弱で工産品の大部分は輸入に依存している。韓国からオーストラリアに主に輸出する品目も自動車、家電製品など工産品に集中している。

オーストラリアは、安定した政治、経済状況および多文化の人口構成を有しており、新技術の採択および活用が速く、持続的に成長している市場である。オーストラリアは、知識財産権に関する法律が幅広く理解、活用されており、オーストラリアの特許出願件数は毎年3~4%程度の持続的な増加傾向を示している。オーストラリアの産業構造の特性上、特許出願件のうち約90%はオーストラリア市場で技術的優位を確保しようとする外国人、外国企業による出願である。そこで、オーストラリア市場に進出しているか進出しようとする企業はオーストラリアの知識財産権制度を積極的に活用する必要がある。

オーストラリアの知識財産権は、大きく特許権、商標権、デザイン権、育成者権(Plant Breeder's Right、PBR)に区分される。以下、オーストラリアの主な知識財産権制度について考察する。

1. 特許

オーストラリアはPCT加入国であるため、オーストラリアへの出願はPCTによるオーストラリア国内段階移行出願が可能である(優先日から31ヶ月以内)。優先権主張をする場合には優先権の基礎となる出願日から12ヶ月以内にオーストラリア出願が要求される。

オーストラリアの特許出願は、一般特許(Standard Patent)出願と革新特許(Innovation Patent)出願の2種類に大きく区分される。

一般特許は、請求項数に制限がなく、実体審査を経て新規性および進歩性(発明が通常の技術者に自明でないこと)の要件を満足してこそ登録が可能であり、特許権の存続期間は最大20年(製薬特許の場合は最大25年)である。

革新特許は、5個の請求項に制限され、方式審査のみを経て出願後1ヶ月以内に承認される。ただし、以降審査請求をした後に認証(certification)されて始めて権利行使が可能であり、追加の出願やこれに基づいた国際出願が不可能な点が一般特許とは異なる。また、革新特許は、実体審査時に進歩性ではなく、革新性(発明が以前に知られたことと異なり、その差が発明の作動に実際的な寄与をするもので、進歩性に比べて低い水準)の要件を判断し、特許権の存続期間は最大8年である。

革新特許は、登録が早期になされ、進歩性判断の基準が一般特許に比べて顕著に低く、認証された後に無効となり難いため、交換周期の速い電子製品、コンピュータソフトウェアなどに積極的に活用されてきた。ただし、実際の運用の面においてオーストラリアの個人や中小企業の発明奨励という当初の導入趣旨を生かすことができず、レベルの低い特許を量産させて公正な競争を阻害する弊害があるという点が指摘された。そこで、現在は革新特許制度の廃止内容を骨子とする特許法改正案に対する意見聴取が進行中であり、早ければ2018年上半期に施行されるとみられる。したがって、革新特許の廃止前にこれを積極活用する必要がある。

2. 商標

商標出願はオーストラリアに直接出願する方法またはマドリッド議定書による国際出願でオーストラリアを指定する方法の2種類がある。優先権主張出願の場合、優先権の基礎となる出願日から6ヶ月内にオーストラリアに出願しなければならない。商標は文字、数字、単語、文句、声、匂い、模様、ロゴ、絵、動作、包装の外観またはこれらの組み合わせからなることができる。

商標出願の審査は審査請求なしに行われ、速い審査を所望する場合、必要な事由を具体的に説明した宣言書を添付して優先審査を請求することができる。優先審査の申請がない場合、通常、出願後3乃至5ヶ月内に最初の審査結果報告書が発行される。

商標出願が登録決定された場合、決定が公表された日から2ヶ月内に異議申立が可能である。2ヶ月内に異議が提起されなければ商標登録が行われ、存続期間は出願日から10年であり、使用中の商標に対して10年毎の更新時に商標権は満了しない。

3. デザイン

オーストラリアはデザイン出願に対するハーグ協定に加入していないため、ハーグ協定による国際出願は不可能であり、オーストラリアへの直接出願のみが可能である。デザイン出願に優先権主張を伴う場合、優先権の基礎となる出願日から6ヶ月以内に出願しなければならない。

デザイン出願時、デザインの新規性および識別性に対する宣言書を提出しなければならず、宣言書にはデザインの特徴と、他のデザインとの類否判断時に特に考慮すべき部分について言及することができる。

オーストラリアのデザイン出願は、物品に関係なく方式審査のみを経て3~4週以内に登録を受けることとなる。ただし、実体審査過程を経て認証を受けてからデザイン権の行使が可能である。デザイン権の存続期間は出願日から5年であり、存続期間更新登録を行った場合に5年の期間が延長される。