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商標類否の判断時に分離観察なしに要部の対比が可能であるか否か-大法院2015フ1690判決(2017.2.9.言渡)【登録無効(商)】
弁理士 柳汀玟

 
1. 事件の背景

 

本事件登録サービス標 先登録サービス標 先使用サービス標

(ハングル:自生草)

(ハングル:自生
自生漢医院
自生漢方病院)

(ハングル:自生漢方病院)


  [原告、上告人] A

  [被告、被上告人] B

  [原審判決] 特許審判院2014ダン1671審決(2015.5.19.言渡)
                特許法院2015ホ3887判決(2015.9.18.言渡)

  [争点] 旧商標法(2016.2.29.法律第14033号で全部改正される前のもの)第7条第1項第11号および第12号の要件である「商標の類否」を判断するに当たり、両商標間に共通する部分が要部に該当して全体的に出処の混同可能性があれば、たとえ要部のみで分離観察されなくても商標の類似性を認めることができると判断した事例

  2. 特許審判院および特許法院の判断

  本事件登録サービス標「自生草」は、短い音節の造語標章に該当するため、「自生」のみで分離観察されるとみなし難い。したがって、類否の判断時に対比対象となる部分は「自生草」全体であり、これは先登録/先使用サービス標の要部である「自生」と外観・呼称・観念が異なる非類似商標に該当する。

  したがって、本事件登録サービス標に商標の類似を要件とする旧商標法第7条第1項第11号および第12号の無効事由は存在しない。

  3. 大法院の判断

  大法院は、原審判決を破棄し、事件を特許法院に差し戻し、次の点から本事件登録サービス標が原告の先登録/先使用サービス標と類似すると判断した。

  イ.要部の観察方法

  商標の要部は、他の構成部分と関係なく、その部分のみで一般需要者に著しく認識される独自の識別力により他の商標と類否を判断するときに対比の対象となるものであるため、商標で要部が存在する場合には、その部分が分離観察されるかを考察する必要なしに要部のみで対比することによって商標の類否を判断することがきる。そして、商標の構成部分が要部か否かは、その部分が周知・著名であるかまたは一般需要者に強い印象を与える部分であるか、全体商標で高い比重を占める部分であるかなどの要素を考察するものの、ここに他の構成部分と比較した相対的な識別力水準やそれとの結合状態と程度、指定商品との関係、取引実情などまでを総合的に考慮して判断しなければならない。

  ロ.本事件登録サービス標と先登録/先使用サービス標との間の類否

  先登録/先使用サービス標の構成および使用実績を考慮すると、「自生」は、「漢方医療業」に対して高い識別力を獲得した要部とみなければならない。反面、本事件登録サービス標に含まれている「草」は、草を意味する漢字語で、指定サービス業との関係で「自生」に比べて相対的に識別力が弱い部分に該当し、「自生草」から「自生」と「草」のそれぞれの意味を結合した以上の新たな意味が形成されることもない。本事件登録サービス標と先登録/先使用サービス標の要部がすべて「自生」である以上、「自生草」から「自生」が分離観察されるかを考察する必要なしに、両標章は「自生」を基準に呼称と観念が同一であるため、互いに類似するサービス標に該当する。

  4. 判決の意義

  商標類否の判断方法である要部観察と関連して、過去の大法院判例は、商標類否の判断は、全体観察を原則とし、適切な全体観察の結論を誘導するための手段として要部観察が必要であるという立場であった(大法院94フ265判決(1994.5.24.言渡)、大法院2003ド3906判決(2006.1.26.言渡)など)。

  今般の大法院判例は、過去判例の立場を要部観察と分離観察の関係と関連させて、より明確にしたものである。つまり、需要者が要部のみで商標を分離観察しない場合でも、全体商標の識別力に支配的な影響を与える要部が共通して全体的な呼称・観念などが類似していれば、両商標は出処混同が発生し得るところ、要部観察は分離観察を前提としないといえる。