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CBM(Covered Business Method) Review
米国弁護士 金允坤

 
インターネットの発展と共に電子商取引(e-Commerce)が活性化することに伴い、新たな類型の特許、 BM(Business MethodまたはBusiness Model)特許が認定を受け始めた。一般にBM特許は、新たな電子商取引方法に関する特許を指すものとして使用されるが、最近はその範囲が拡大してソフトウェア分野の特許を含んで広範囲に使用されている。

  去る7月、インターネット専業銀行「カカオバンク」が公式発足13日で200万もの新規口座が開設されて世間を驚かせた。従来の金融業務をインターネット上で容易かつ簡便に処理できることから、利用者が増え続けており、特に若者層に大きな反応を生み出している。このような傾向は今後もさらに加速化すると予想される。そこで、今後より多くの金融関連BM特許が生まれ、これによる侵害訴訟が増えるであろう。

  しかし、依然としてBM特許の特許性の有無に対する論争は続いており、これに対する各国の審査基準は、米国の主要判例および欧州特許庁の政策に従って多くの影響を受けている。そこで、金融商品およびサービスに関するBM特許の有効性を争うことができる米国の無効審判制度であるCBM(Covered Business Method) Reviewを紹介する。

  1. 申請期限

  CBM Reviewは、米国特許法がAIA(America Invents Act)により改正された上で、2012年9月16日に新設され、過渡期的法案として2020年9月16日に満了し、新たな制度に代替されると予定されている。したがって、申請人は、上記満了期限前までに申請しなければならない。

  2. 申請要件

  CBM Review申請人は、下記のすべての条件を満たさなければならない。
  - CBM Review申請人は、特許侵害の疑惑を受けたり(侵害警告状を受けた場合も含まれる)、侵害訴訟を受けた者でなければならない。
  - CBM Reviewの対象特許は、2012年9月16日以降に出願されなければならない。
  - CBM Reviewの申請人は、対象特許の請求項に対する50%を超える説得力を有する無効性に対する弁論が必要である。
  - CBM Reviewの対象特許は、「技術的発明を除いた金融商品およびサービスを実行または運営するデータプロセッシングあるいは運営方式に対する方法および装置に対して請求する特許」でなければならない。

  ここで注目する点は、CBM Review対象特許の適用範囲に論難の素地があり得るということだ。去る2月に連邦巡回抗訴裁判所から下されたSecure Axcess, LLC v. PNC Bank National Association (Fed. Cir. 2017)の判決は、CBM Reviewの対象特許の適用範囲を計るのに役立つ。Secure Axcessは、コンピュータセキュリティーのためのウェブページ認証に関する特許(米国特許7,631,191号)を保有しており、本特許を侵害したという理由でPNCを含む金融機関を相手取って侵害訴訟を提起した。そこで、上記金融機関は7,631,191特許を無効化させるために米国特許審判院(Patent Trial and Appeal Board:PTAB)にCBM Reviewを申請した。7,631,191特許の明細書には特定のウェブサイトアドレスを詐称する類似ウェブサイトアドレスに「bank」という単語が使用されているに過ぎず、7,631,191特許は、金融業務に限定されたものでなく、実際に金融以外の多様な分野に広範囲に使用可能な技術であった。PTABは、7,631,191特許が金融機関の消費者が利用するウェブサイトで発生し得る問題の解決に活用可能な技術であるため、金融商品あるいは金融サービスに「付随(incidental)する補助的(ancillary)行為」に該当するため、CBM Reviewの対象特許に該当するとの判決を下した。これに対してSecure Axcessは、連邦巡回抗訴裁判所に控訴し、抗訴裁判所は、CBM Review対象特許の範囲が信用、貸出、不動産取引、株式および投資商品などのみに制限される必要はないが、金融取引に「付随または補助される行為」にまで拡大することはできないとの判決を下した。即ち、CBM Reviewの対象特許は、金融に関連した広範囲な行為に該当し得るが、関連金融行為が対象特許の請求項に明示されなければならないということである。

  3. 長所

  米国特許法で無効審判として使用される制度は、CBM Review以外に、IPR(Inter Partes Review)およびPGR(Post-Grant Review)がある。CBM Reviewは、審判開始のための立証基準(50%を超える説得力)および法的根拠(101条、112条、102条および103条を含む包括的な法的根拠が活用可能)においてPGRと類似している。しかし、CBM Reviewは、PGRとは異なり、特許を受けた日からまたは再発行された後9ヶ月以降にも申請が可能である。また、CBM Reviewは、IPRとは異なり、特許要件の全般にかけて有効性を争うことができ、禁反言規定の適用範囲が狭いという長所がある。参考までに、CBM Review、IPR、PGRの主要特徴は下記の米国特許庁ホームページによく整理されている(https://www.uspto.gov/sites/default/files/ip/boards/bpai/aia_trial_comparison_chart.pptx)。

  4. むすび

  以上で言及したとおり、信用、貸出、不動産取引、株式および投資商品など全般的な金融関連業務がオンライン上で行われる傾向は加速化するだろう。そこで、さらに多くの金融関連BM特許が生まれ、これらBM特許の特許性は論難の対象になり続けるだろう。米国議会がかかる特許性がない金融関連BM特許を訴訟よりも低価の費用で無効化できるようにCBM Reviewを導入した趣旨を考慮してみると、CBM Reviewが2020年9月16日に満了しても、より具体化した制度に代替されると予想される。そこで、金融関連BM特許侵害訴訟の被告はCBM Reviewを積極的に活用してみる必要があるだろう。