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中国の特許権侵害判定指針書2017 - GUIデザインに対する新設規定
中国弁理士 康慧莲

 

  特許民事事件の審判水準を高め、審判過程で存在する問題を解決し、審判標準を統一させるために、中国の北京市高級人民法院は、当該法条と司法解釈に基づいて<特許権侵害判定指針書>に対する改正作業を行った。2017年4月20日付で北京市高級人民法院は、新たに改正した<特許権侵害判定指針書>を正式に発行した。2017年4月1日付で新たに改正した<中国特許審査指針書>においてGUI(graphical user interface)デザインに関する内容が追加されたため、以下ではGUIデザインに関する侵害判定規定の内容を中心に説明する。

  73条:GUIデザインの保護範囲は、デザインの要点を結び付けて物品デザインの図(view)により確定しなければならない。動的GUIデザインの保護範囲は、簡単な説明における動的変化過程に対する記述を結び付けて、動的変化過程を確定できる物品デザインの全体図により確定する。

  77条:デザイン侵害判定を行うには、まず侵害と主張された物品とデザイン物品とが同一または類似する物品に属するか否かを審査しなければならない。GUIデザイン物品を確定するには、当該GUIが使用される物品を基準としなければならない。

  86条:静的GUIデザインについて、物品のGUI部分を主に考慮し、当該部分と物品の他の部分との関係、例えば位置、割合、分布関係を同時に考慮し、侵害と主張されたデザインにおける対応する内容と比較して総合的に判断しなければならない。侵害と主張された物品のGUIデザインが登録デザインと同一または類似し、かつ物品の他の部分との関係が全体的な視覚効果に対して著しい影響を与えない場合は、侵害と主張されたデザインは特許権の保護範囲に属すると認めなければならない。

  侵害と主張されたデザインが静的GUIデザインを完全に含む場合は、侵害と主張されたデザインは特許権の保護範囲に属すると認めなければならない。

  87条:動的GUIデザインについて、侵害と主張されたデザインと動的GUIデザインのそれぞれの図がすべて同一または類似する場合は、侵害と主張されたデザインは、特許権の保護範囲に属すると認めなければならない。具体的に判断すると、GUI部分と物品の他の部分との位置、割合、分布関係も考慮しなければならない。

  侵害と主張されたデザインの状態を示す一部の図が欠如していることによって登録デザインと一致する変化過程を実現できなくなる場合は、侵害と主張されたデザインは特許権の保護範囲に属しないと認めなければならない。ただし、それにも拘わらず、登録デザインと一致する変化過程を唯一確定できる場合にはこの限りではない。

  侵害と主張されたデザインが部分的に動的GUIデザインまたはキーフレームを使用した場合、当該部分的な動的GUIデザインまたはキーフレームがGUIデザインのデザイン要点に属すれば、侵害と主張されたデザインは特許権の保護範囲に属する。ただし、侵害と主張されたデザインの全体的な視覚効果と動的GUIデザインとが同一または類似しない場合にはこの限りではない。

  88条:立体物品のデザインについて、普通、形状が全体的な視覚効果にさらに影響を及ぼし、同一または類似を判断するとき、形状に重点を置かなければならない。ただし、形状が慣用デザインである場合、図案、色彩が全体的な視覚効果にさらに影響を及ぼす。

  非GUIのデザイン特徴が慣用デザインである場合、GUIは全体的な視覚効果に対して著しい影響をさらに与える。

  慣用デザインとは、従来デザインにおける一般消費者に熟知され、物品の名称だけで想到できる相応デザインを指す。デザイン物品分野において、互いに独立した各物品メーカーがすべて採用するデザイン特徴は、一般に慣用デザインに属する。慣用デザインはデザイン特許の全体的な視覚効果に対して一般に顕著な影響を与えない。ただし、慣用デザインの組み合わせが独特な視覚効果をもたらす場合にはこの限りではない。

  92条:状態が変化する物品のデザインについて、その各種の変化状態の図をいずれも保護範囲に含ませなければならず、侵害と主張されたデザインと変化状態の図に示すそれぞれの使用状態のデザインとがいずれも同一または類似する場合は、侵害と主張されたデザインはデザイン特許権の保護範囲に属すると認めなければならない。侵害と主張されたデザインは使用状態のデザインが一部欠如しているか、またはそれと同一または類似しない場合は、侵害と主張されたデザインはデザイン特許権の保護範囲に属しないと認めなければならない。

  参考図は、普通、デザインを使用する物品の用途、使用方法または使用場所などを表明するためのものであり、状態が変化する物品のデザインの保護範囲の確定に用いることができない。

  GUIデザインは、2014年5月1日からデザインとして認められて以来、出願量は急激に増加しているが、これに対する侵害判定は余白として残されていた。世界的に有名なアップルとサムスンのGUIデザイン侵害訴訟からも分かるように、GUIデザインの侵害判定基準に対する必要性が日々急増しており、関連判定指針は必ず解かねばならない課題である。したがって、新たに改正された<特許権侵害判定指針書>を通じて中国におけるGUIデザインに対する保護はさらに強化されたとみられる。


  *参照
http://bjgy.chinacourt.org/article/detail/2017/04/id/2820737.shtml
http://blog.sina.com.cn/s/blog_d83bd9940102xzql.html