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2017年に新たに改正された中国特許審査指針
中国弁理士 申庆海


 新たな分野の革新の成果に対する知識財産の保護を強化し、電子商取引などビジネスモデルの知識財産に対する保護制度を完成させるために2015年末から 「中国特許審査指針」に対する改正作業が始まり、2017年4月1日に新たに改正された「中国特許審査指針」が正式に実行された。本改正は「中国特許審査指針」第2章、第4章、第5章に対する改正であり、ビジネスモデル、コンピュータプログラム、化学発明の実験データの追加および無効審判手続における補正に対する内容が含まれる。以下、特許審査指針の主な改正内容について説明する。

  1. BM発明に対する特許登録の許容

  新たに改正された中国特許審査指針第2部分第1章第4.2節第(2)号に「BM発明と関連した請求項が商業規則および方法に関する内容を含むだけでなく、技術特徴も含む場合、中国特許法第25条により特許権登録の可能性を排除してはならない」という内容を追加して、「コンピュータおよび/またはネットワーク技術を利用して具現され、商業内容と関連のある特許出願は、その請求項に技術特徴が含まれていれば、中国特許法第25章第1項第2号で言及している「知力活動の規則および方法」に属しないと明確に規定することによってビジネス方法、ビジネスモデルの発明者に保護を受けられるもう一つの道を開いた。

  ビジネス内容と関連した特許出願が、特許法第25条第1項第2号から除外した純粋な知力活動と規則および方法の範囲に属しはしないが、技術手段を利用して技術問題を解決して自然規則に符合する技術効果を成し遂げる技術方案でなければ、特許保護を受けることができない。

  新たな指針が改正される前のBM発明は特許法第25条に規定している知力活動に属するという理由と第2条に規定している発明の定義に定めている技術方案に属しないという理由で拒絶される場合が多かった。

  しかし、特許審査指針が改正され、BM発明が技術問題を解決するための技術特徴が内包されてさえいれば、中国特許法第25条に規定している特許不許対象に属しないと指針に明示することによってBM発明の特許適格性を認めた。

  2. コンピュータプログラム発明に対する審査

  改正前は「コンピュータプログラム自体」は、中国特許法第25条の知力活動の規則および方法に属するため、特許を受けることができなかった。

  改正された特許審査指針は、「コンピュータと関連した発明」と「コンピュータプログラム自体」を明確に区分して、「コンピュータプログラム自体」は「コンピュータと関連した発明」と実質的に異なると明示しており、「媒体+コンピュータプログラム」の形式で請求項を作成して保護を受けられるように許容した。

  新たに改正された特許審査指針は、コンピュータプログラムの各機能が如何なる構成からなり、如何に機能を遂行するかを詳細に描写しなければならず、前記構成はハードウェアだけでなく、プログラムも含むことができると規定しているため、「プログラム」も装置の一部構成となることができるようになった。

  コンピュータプログラム手順を基にする技術方案は、次のとおり作成するよう例示を与えている。

  [請求項1]
  コンピュータプログラム(命令)が記録されているコンピュータで読み取り可能な記録媒体において、
  当該プログラム(命令)はプロセッサにより実行される際に次の段階を実現する…。

  結果的に、新たに改正された中国特許審査指針は、コンピュータプログラムに対する特許適格性を広範囲に認めており、多様な形態の請求項を認めて特許要件を緩和させた。

  3. 化学分野発明に対する審査規定

  従来の化学分野に属する発明は、出願した後に実験データを提出しても、審査官はこのような実験データを認めなかった。つまり、改定前の特許審査指針に「出願日以降に追加提出した実験データに対しては認めないが、追加提出した実験データが当該技術分野の当業者が公開された内容から技術効果に至ることができることを立証するためのものであれば、審査官はこれに対して審査しなければならない。」と規定している。

  しかし、このような規定は合理的でなく、解釈に誤解の余地があるため、審査指針を新たに改正することとなった。

  新たに改正された特許審査指針は、「出願日以降に追加提出した実験データに対しては認めない」を「出願日以降に提出した実験データを認めなければならず、審査官はこれに対して審査しなければならない。追加提出した実験データが証明した技術効果は、当該技術分野の当業者が公開された内容から得ることができるものでなければならない。」と改正した。

  4. 無効審判における請求項補正に対する規定

  改定前の特許審査指針によると、無効審判段階では請求項の削除、合併および技術方案の削除の3つの場合に限り補正が可能であった。実務において特許権者は請求項の補正方式が制限的であると感じることが多かった。

  改正後の特許審査指針は、補正の方式を適切に緩和させて請求項に他の請求項に記載された1つまたは複数の構成要素を追加して保護範囲を縮小することを許容し、特許請求の範囲に記載された顕著な誤記に対する修正も可能となった。

  また、請求の理由に対しては「特許権者が合併方式で補正した請求項」に限り無効理由が追加可能であり、請求の理由は補正された内容と関連した理由でなければならないと規定している。

  通常、請求人は無効審判請求日から1ヶ月内に無効理由を請求或いは証拠を補充することができ、上記期間が徒過した後に無効理由と証拠を提出する場合、専利復審委員会(審判部に該当する行政機関)ではこれを認めない(特許法実施細則第67条)。

  しかし、改正された特許審査指針は、他の請求項に記載した技術特徴を追加する方式で請求項を補正する場合に限っては、特許請求の範囲内に記載されていない技術特徴を追加するものではないため、既に提出した証拠を組み合わせる形式で無効証拠を再構成することができると規定している。ただし、新たな証拠の提出は依然として許容されない。

  結果的に、新たに改正された特許審査指針に無効審判段階における請求項補正の幅を広げ、従来より広い自由度を付与し、指定した期間が徒過した後にも無効理由の増加および無効証拠の組み合わせが可能となり、特許権者や請求人の立場で有利となった。

 


*参考文献およびサイト
本資料は中国特許庁の特許審査指針解説(上)(下)に基づいて作成された。
*http://www.sipo.gov.cn/zcfg/zcjd/201703/t20170331_1309157.html
*http://zx.ipr.zbj.com/patent/hyyw/1304.html
*http://www.kangxin.com/index.php?optionid=1013&auto_id=2277
*http://www.lungtin.com/content/2017/03-08/09024819f.html