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モバイル請求書サービス(ソフトウェア)の特許紛争の勝訴事例
YOU ME 法務法人 弁護士 全應畯・辛東桓


 Ⅰ. はじめに

  今はモバイルが主流となっている。既にオフラインを通じて提供されていたサービスはもちろん、PC基盤のオンラインで提供されていたサービスもモバイルに移る傾向にある。ショッピングや決済を携帯電話だけで一度に処理できるようになったのは、既に相当前のことである。過去においてはe-mailで請求書を受け、自動振替やクレジットカード決済などにより代金を支払うことを経て、今はショートメールや特定のモバイルアプリで請求書が伝送されて使用者が確認後、即時に請求料金を決済するサービスも登場した。

  モバイルサービス市場が急激に成長しつつ、これと関連した特許出願、登録もそれに比例して増加している。既存のPC基盤で提供されていたものと類似する方式のサービスを基にモバイルが有する特徴を結合して新たな特許発明として出願、登録する事例も多い。新たなモバイルサービスを提供しようとする会社が必ず注意を注いでチェックしなければならない部分である。

  これと関連して、以下でモバイル請求書サービス(ソフトウェア)の特許紛争に関する当法務法人の勝訴事例を紹介する。

  Ⅱ. 事件の経過

  1. 事案の概要

  本事件被申請人は、モバイルアプリを通じて利用者間のメッセージ、通話サービスなどの各種サービスを提供する会社である。被申請人は、最近、振込用紙として毎月発行される特定機関の料金請求書を被申請人のモバイルアプリサービスで利用者に提供し、利用者が被申請人のモバイルアプリの決済サービスを利用して当該料金を決済できるモバイル請求書サービスを開始した。その後、本事件申請人は、被申請人の上記モバイル請求書サービスが申請人の特許権を侵害すると主張した上で、被申請人を相手取って特許権侵害差止仮処分を申請した。当法務法人は被申請人を代理して訴訟を進行した。

  2. 争点

  本事件特許発明の主な内容は、モバイル請求書サービスを提供するに当たり、サーバーと端末のソフトウェアが請求書データを処理、伝送し、料金を決済する方法に関するものである。申請人は、被申請人が実施するサービスを申請人の主張に合わせて特定した後に特許侵害を主張した。同一のサービスでも訴訟過程において、これを多様な水準と方法で特定することが可能である。本事件のようなソフトウェアのデータ処理など方法に関する特許紛争において実施サービスを特定する作業は訴訟の半分に該当するといえるほど重要である。第一の争点は、被申請人が実際に実施しているサービスの特定の問題であった。

  被申請人の実施サービスが特定されれば、次に残る争点は、当該実施サービスが申請人の特許発明の保護範囲に属するか否かである。物理的な構成が具体的に特定される物の発明に比べて機能的表現が多いソフトウェアの処理方法に関する発明は、その解釈の余地が広い場合が多い。特許発明の保護範囲は、原則的に特許請求の範囲の記載のみにより確定されるが、特許請求の範囲の記載のみでは不明確な場合には詳細な説明を参酌することができる。上記法理は、一見明確で単純にみえるが、主張論理と論拠により判断の余地は多い。明細書の文言を上記法理に合わせて主張し、裁判部を説得する過程は容易ではないが、結局、第二の争点である特許請求の範囲の解釈に訴訟の勝敗がかかっている。

  3. 法院の判断

  実施サービスの特定と関連して、当法務法人は、被申請人の実施サービスに申請人が主張する一部の構成が含まれていないという事実を主張、立証し、法院はかかる主張を受け入れて被申請人の主張のとおり実施サービスを特定した。

  次に、特許発明の保護範囲と関連して、申請人は特許請求の範囲の文言を一般化し、さらに、拡張して保護範囲を広く認められるようにした。反面、当法務法人は明細書を全体的に分析して特許発明の技術的要旨を探し出し、これを達成することができるように特許請求の範囲を解釈することによって申請人が主張する発明の保護範囲を合理的な範囲に制限した。同時に、先行技術に基づいて適切な無効主張をすることによって、申請人の主張のように保護範囲を広く解釈する場合、申請人の特許登録は無効という論理で被申請人の主張を裏付けた。

  結局、法院は特許請求の範囲の解釈に関する被申請人の主張を受け入れ、被申請人の実施サービスは本事件特許発明の保護範囲に属しないと判断して申請人の仮処分申請を棄却した。

  Ⅲ. むすび

  上記事件は、モバイルサービス市場への進出において知的財産権の確保乃至事前検討の重要性、そして、専門的な代理人を通じた適切な紛争対応の必要性を如実に示す事例である。現在、新たなモバイルサービスを提供しようとする会社にとって知的財産権と関連した事項の重要性は、いくら強調しても強調し過ぎることはない。