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立体パズルの著作権
YOU ME 法務法人 弁護士 金奎賢


Ⅰ. はじめに

紙を利用するパズルは平面パズル分野と立体パズル分野に区分される。一般的に知られた平面パズルは、平らなパズル板に紙パズルを繋いで一つの絵柄を作る方式であるが、立体パズルは、紙ピースを結合して立体的な形状の物体を再現する方式である。立体パズルの対象となる物体は非常に多様であるが、崇礼門、光化門、胆星台など歴史的に有名な建築物もその一つである。

このような立体パズルを製作するためには、CADを利用して再現しようとする建築物を立体的に設計し、完成したパズル模型を考慮してパズルピースの前面と後面をデザインする精巧な設計能力が要求される。このような高度な設計作業により製作された立体パズルを不法に複製した複製品が登場し始めたところ、立体パズルを法的に保護する方案の重要性がますます高まっている。

これと関連して、以下で立体パズルの著作物性が認められて著作権として保護を受けることができるようになった当法務法人の勝訴事例を紹介する。

Ⅱ. 事件の経過

1. 事案の概要

本事件の原告は、立体パズルを製造および販売する会社であり、被告らは、原告会社に在職して退職した後、新たな会社を設立して原告が製造および販売する立体パズルと同一の製品を販売する者およびその会社である。原告は、被告らを相手取ってソウル西部地方法院に商標権侵害、著作権侵害、不正競争および営業秘密保護に関する法律(以下、「不正競争防止法」という)違反などを原因とする損害賠償請求の訴えを提起した。原告は、上記訴えの提起の際には当法務法人でなく他の訴訟代理人を選任して訴訟を進行した。

2. ソウル西部地方法院(第1審)の判断

本事件の訴訟過程で被告らは、既存の有名な建築物は誰でもその模型を作ることができ、誰が作ってもその形態が同一または類似するしかないため、著作権者の創造的個性の出る表現がなく、創作性のある著作物に該当しないと主張した。また被告らは、原告の立体パズル製品と被告らの立体パズル製品との間に実質的類似性が認められないと主張した。したがって、原告の立体パズルの著作物性が認められるか否かと、原告の製品と被告の製品との間に実質的類似性が認められるか否かが本事件の争点である。

上記争点のうち、実質的類似性の有無を審理するために、第1審で原告と被告の同意の下に韓国著作権委員会の鑑定を嘱託したが、鑑定人は原告の製品と被告の製品との間に実質的類似性が認められないとの鑑定結果書を法院に提出した。不利な鑑定結果に危機を感じた原告は、最後の弁論期日の直前に当法務法人に訴訟を依頼し、当法務法人では著作権分野における著名な教授の鑑定書を提出して誤った鑑定の結果を正すために努力したが、1審裁判部は、上記韓国著作権委員会の鑑定の結果をそのまま認容しながら、原告の立体パズルは著作権法の保護対象とならず、原告の立体パズルの表現方式と被告の立体パズルの表現方式とが実質的に類似しているとみなし難いとの理由により著作権侵害を原因とする原告の損害賠償請求を棄却した。

3. ソウル高等法院(第2審)の判断

原告は、実際に存在する建築物の形状をそのまま再現したものではなく、立体パズルとして組み立てられた外観の全体的な均衡美および審美感を高めるために、対象となる建築物の全体および屋根をはじめ、各構成部分を原告が創作した変形比率で対象を縮小し、誇張、省略するなどの十分な創作性を付加しているため、原告の立体パズルの著作物性が認められるべきであると主張した。また、被告の製品は原告の光化門の立体パズル製品の上記のような創作的要素をそのまま模倣したため、これは原告の著作権を侵害するものであると主張した。加えて、原告は、本事件の参考になり得る米国著作権判例を探し出して裁判部に参考資料として提出した。

第2審のソウル高等法院第5民事部は、上記のような原告の主張を受け入れ、原告の立体パズル製品の模型は、縮小する過程で歴史的建築物の単純縮小にとどまらず、相当な水準の変更を加えたため、その表現の創作性を認めることができると判断した。また、下図のように城壁と屋根の比率、屋根の中間を折りたたんで立体感を表現したこと、正面および側面からみた屋根の傾斜、軒下の構造物の省略および楼閣窓の単純化、門番の大きさおよび中門の模様など、原告の製品の創作的表現が被告の製品にもそのまま表現されており、実質的類似性が認められると判断した。
 



結局、法院は被告らに原告の立体パズル製品の著作権侵害を原因とする損害賠償を支払うことを命じる判決を下した。

Ⅲ. むすび

上記ソウル高等法院の判決がそのまま確定すれば原告の立体パズル製品は著作物性を認められて著作権として保護を受けることができるようになる。原告の立体パズルのような新たなコンテンツは、十分な保護価値が認められるにも拘らず、場合によっては、法的に保護を受けられなくなる不合理な結果が発生することがある。第1審で敗訴した原告は、誤った鑑定の結果を正すために莫大な費用とほぼ4年に近い時間を消耗しなければならなかった。もし、原告が訴訟初期から知識財産権分野の法律専門家の支援を受けていたとすれば、このような莫大な費用と努力の相当部分が節減されたであろう。新たなコンテンツを開発する企業は、第三者の無分別な複製行為に対応するために法的保護手段を予め講じる姿勢が必要であり、問題が発生した場合には、その分野の専門家である法律代理人に支援を要請することが時間と費用の側面からより有利になり得るという点に留意することが望ましい。