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欧州特許庁(European Patent Office)の審判制度および優先審判
弁護士 廉東眞

 

1. 欧州特許制度の概観

欧州の特許は、欧州の各国別に個別的に出願を進行するか、あるいは欧州特許条約(European Patent convention;EPC)に基づいて欧州特許庁(EPO)を通じて出願、審査および登録手続を進行する方法がある。また、最近、欧州では侵害または無効事件の効力を参加国に同一に及ぼす欧州単一特許制度に対する議決が行われたところ、統一特許裁判所の創設などの変化を控えている。

以下、欧州特許条約による欧州特許庁(EPO)の拒絶決定および異議申立決定に対する不服審判手続について簡略に考察する。

2. 拒絶決定および異議申立決定に対する不服審判

特許出願された発明が特許要件を充足する場合、欧州特許庁は、特許付与決定(Decision to grant)を通知し、そうでない場合には拒絶決定を下すこととなる。

特許付与決定が出された後、欧州特許公報に特許の内容が掲載された日から9月以内に第三者は欧州特許庁に異議申立(opposition)することができる。この時、上記9月の異議申立期間は除斥期間であり、異議申立は何人も提起することができる。

異議申立の理由は、1)当該特許が新規性または進歩性などの特許性が欠如した場合、2)明細書が当該分野の技術者により実施できる程度に明確に記載されていない場合、3)出願時より要旨がさらに追加される場合のみに制限されるが、欧州特許庁は異議申立に理由がある場合には特許付与決定を取消し、理由がない場合は異議申立を棄却する。

一方、出願人は、上記異議申立の決定および特許拒絶決定に不服する不服審判を審判部に請求することができる。審判を請求しようとする者は、上記決定の通知日から2月以内に不服審判を提起しなければならず、4月以内に審判請求理由書を提出しなければならない。

拒絶決定不服審判は、欧州特許庁の調査担当部が担当し、異議申立決定不服審判は、異議申立担当部が担当する。審判部の審理は書面審理を原則とし、必要に応じて審判官または審判請求人の要請により口頭審理を併行する。審判部の審理後、審判請求の理由があるかまたは理由がない場合、理由有りまたは理由無しの審決を下し、審判を終結する。

欧州特許庁は独立した機関であって、欧州特許庁に出願された事件に関して最終的な決定が下され、これに対して不服できる法的な手段はない。したがって、基本的な手続上の瑕疵のような重大な瑕疵でない限り、欧州特許庁の決定には再審を請求することができない。

一方、審判期間は、特許権者とその利害関係人に直接的な影響を与えることとなるため、韓国をはじめ世界の各国では審判期間を短縮しながらも適切な紛争解決のための制度として優先審判制度を運営しているが、これについては以下でより詳しく説明する。

3. 欧州特許庁の優先審判制度

審判は原則的に審判請求日順に審理しなければならないが、審判上の当事者または利害関係人に優先的に審判を処理しなければならない緊急な事情が認められる場合は、優先審判制度を利用して、他の審判に先立ち当該審判手続を先に進行することができる。

欧州特許庁は、拒絶決定不服審判または異議申立決定不服審判において、上記優先審判制度を適用している。例えば、1)当該特許に対して特許侵害訴訟が提起されていたり提起されると予想される場合、2)当該特許のライセンス契約の可否が審判結果により左右される場合、3)優先審査された異議申立事件が再び審判の対象になった場合に優先審判を請求することができる。

欧州特許庁審判部の委員会は、2016年1月に「法律上の利益を有する者は審判部に優先審判を要請することができる」という点を公表(official Notice)した。したがって、優先審判を請求するために、法律上の利益を有する者は、審判初期または中間に自身の緊急な事由を裏付けることができる立証資料を当該法院または関連機関に共に提出しなければならない。

一方、審判部は、当事者または利害関係人の請求により必ずしも優先審判を進行しなければならないわけではない。欧州特許庁の優先審判制度において、優先審判を進行するか否かは依然として審判部の裁量によるためである。また、審判部は、当事者または利害関係人の請求がなくても、当事者または利害関係人の法的な不安定を解消するために、職権で優先審判を進行することができる。

このように、欧州特許庁の優先審判制度は、当該審判に対して法律上利益を有する者に早期に法律上の安定した地位を付与し、審判遅延による損害を防止するために運営されている。