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中国のGUIデザイン保護制度
中国弁理士 申庆海

 

中国では特許審査指針を通じてグラフィカル·ユーザー·インターフェース(graphical user interface、GUI)の保護に対して規定している。GUIが良好に保護されるためには製品の一部に関するデザインとして保護される必要があるが、部分デザインに対する保護制度をまだ導入しておらず、中国におけるGUIデザイン保護はまだ制限的である。つまり、製品と結合してGUIを出願しなければならないばかりか、GUIを部分デザインとして保護するように要求することはまだ受け入れられていない。これは現行の中国デザイン保護制度が製品全体のデザインを基準にしているのと絡み合っているとみられる。中国におけるGUIデザインに対する保護は2014年5月1日付<特許審査指針>の改正に伴って導入が始った。

1.GUI関連デザインに対する中国の<特許審査指針>の規定

<特許審査指針>のGUIに関連した主要規定は以下のとおりである。

第1部分第3章第7.4節:「ゲームインターフェースおよび人と機器の相互作用と無関係、または製品の機能実現と無関係の、製品の表示装置に表示した画面、例えば、電子装置の壁紙、電子機器をオンオフする過程で表示される画面、ウェブページの図面と文字の配列はデザイン登録対象でない。」

第1部分第3章第4.2節:「GUIを含む製品デザインである場合、製品全体のデザイン図面を提出しなければならない。GUIが動的画像である場合、出願人は一つの状態の上記製品全体のデザイン図面を提出しなければならず、残りの状態に対してはキーフレームの図面のみを提出し、提出した図面は動的画像中の動画の変化傾向を唯一に確定できなければならない。」

第1部分第3章第4.3節:「GUIを含む製品デザイン出願である場合、必要な場合、GUIの用途、製品でGUIの領域、人と機器の相互作用方式および変化状態などを説明しなければならない。」

第4部分第5章第6.1節第2段落第(4)項:「GUIを含む製品のデザインである場合、当該特許のその他の部分のデザインが慣用デザインに該当すれば、GUIは全体の視覚的効果にさらに顕著な影響を与えることとなる。」

2.中国特許法に符合するGUIデザインの保護客体

米国、欧州、日本および韓国とは異なり、中国でデザインが保護を受けることができるGUI類型は、比較的厳しい制限を受けている。

現在としては「部分デザイン」がまだ中国で保護されるデザインの客体に該当しないため、現行の中国特許法の規定下でGUIに対して保護を受けるためには、必ずGUIと実際の製品を結合しなければならない。すなわち、中国ではGUIを含む製品全体のデザインのみに対して保護を受けることができ、GUI自体に対しては保護を受けることができない。

このような前提の下に、GUIデザインは必ず製品を媒介体としなければならず、GUI自体のみではデザイン保護の客体になれない。ここでいう製品とは、人と機器の相互作用を十分に完成することができるか、製品の機能を実現するユニットであってもよい。また携帯電話、洗濯機など最終製品を含んでもよく、また計器板など分離可能な完全な付属品であってもよい。

中国ですべてのGUIがデザインの保護を受けるわけでなく、ただし、人と機器の相互作用と関連があり、また製品の機能の実現と関連があってこそ保護を受けることができる。また製品の表示装置に表示されるGUIのみがデザインの保護を受けることができる。ここで、「人と機器の相互作用」とは、人と機器との間で一定の相互作用方式(クリック、タッチ、スライディング、表示など)を通じて情報の伝達を完成(命令、フィードバック、状態など)する過程を意味し、「製品の機能の実現」とは、製品が有利な役割を果たすようにするものであって、製品自体の機能および製品に設置されたアプリを通じて機能が実現することを意味するものであり、ここにインターネットサイトの連結は含まない。
 

GUIを含む製品が中国で保護対象か否か
順番 GUIを含む製品 保護対象
1 機器専用インターフェースを有する製品 O
2 OSインターフェースを有する製品 O
3 応用ソフトウェアインターフェースを有する製品 O
4 ウェブサイト応用インターフェースを有する製品 O
5 アイコンを有する製品 O
6 ウェブページの図面と文字の配列を有する製品 X
7 壁紙(スクリーンセーバー)を有する製品 X
8 電子機器をオンオフする過程で表示される画面 X
9 ゲームインターフェースを有する製品 X



3.GUIデザイン出願時の注意点

改正された<特許審査指針>によると、デザイン出願の登録可否を判断する時、依然として全体的に観察して総合的に判断する原則を堅持している。

GUI製品の名称は、既存の製品の名称を追加限定して保護客体を明確にしなければならない。具体的には、「インターフェース関連限定語+製品」の形式で限定することが望ましい。例えば、「グラフィカル·ユーザー·インターフェースを有する複写機」、「相互作用のインターフェースを有する携帯電話」などである。

中国でGUI自体に対しては保護していないため、GUIデザインを出願する時、GUIを含む製品全体のデザイン図面を提出しなければならない。グラフィカル·ユーザー·インターフェースのアイコンを削除し、アイコンの位置を示したレイアウトは規定に符合しない。広い保護を受けるためにインターフェースの要素をなくし、レイアウトのみを残す場合があるが、レイアウト自体が全体デザインの一部に属するため、部分デザインに対する保護を要求するのと類似しており、現行のデザイン制度の全体保護の原則に符合しない。

出願書類で図面または写真以外に簡略な説明欄を利用してGUIが保護しようとする相互作用方式、デザイン領域、動的デザインの変化状態などの情報を記載することが望ましい。またGUIデザインの識別特徴が十分に発揮されるようにするために、GUIデザインを出願する時、当該製品を現存する慣用デザイン製品として選択することを提案する。

4.GUIデザイン出願の優先権主張

中国では単にGUIを含む製品全体のデザインに対して保護し、GUI自体に対しては保護しないため、もし先に出願したGUIデザインが製品を媒体としなかったとすれば、中国デザイン出願の主題と同一でないとの理由により当該優先権主張は受け入れられなくなる。

したがって、外国出願人が中国でもGUIデザインを出願することを希望する場合には、外国で最初出願する時に少なくとも一つのGUIを含む製品のデザインを考慮してみることができる。これによって、後に外国出願の優先権を主張することによって中国にデザイン出願することができる。もし外国で最初出願したデザインにGUIを含む製品がない場合、後に中国で当該GUI製品デザインに対して出願することを希望すれば、外国出願人は最初出願に対する公開の延長を考慮したり、または中国出願の新規性を喪失することとなるその他の可能性などを回避することを考慮してみることができる。

5.むすび

中国の場合、部分デザインに対する保護制度がまだないため、GUI関連デザインの保護が完全でなく、部分デザインに対する保護を実現してこそ根本的にGUIデザインに対する保護を実現することができるだろう。GUIデザインに対する保護が中国で今スタート段階にあるが、スマートフォンなど電子機器においてGUIが漸次に重要な構成として浮び上がっているため、中国におけるGUIデザイン保護制度がより完全になると期待する。


*参考文献およびサイト
本資料は、知識財産研究第10冊第3号(2015年9月)に掲載された論文「中国におけるGUI関連デザインに対する保護」に基づいて作成された。
http://www.liketm.com/zhuanli151203.html
http://www.cnipr.com/yysw/zscqsqzc/201511/t20151105_193186.htm
http://www.lungtin.com/UploadFile/Files/2014/9/23/1443042157c831c8-5.pdf
http://www.zhichanli.com/article/5595
http://www.nipso.cn/onews.asp?id=22162


 


デザイン登録対象でないものに対する規定
審査過程におけるデザイン図面または写真に対する要求事項
審査過程における簡略な説明に対する要求事項
無効審判課程における同一または類似種類製品のGUI識別の特徴に対する規定