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2024年の特許制度の変更事項
弁理士 孫敏規

I. 2024年の特許優先審査制度の改編事項

1. はじめに

特許優先審査とは、一定の要件を備えた特許出願に対して他の出願より優先的に審査を受けることができる制度である。原則的に特許出願は審査請求の順番により審査が行われるが、優先審査制度を利用すれば審査請求の順番に関係なくより早期に審査を受けることができるため、出願および登録に要する期間を短縮することができる。

最近、特許出願の優先審査申請が急増することに伴い、審査の力量を集中する必要性が台頭している。そこで、早期の権利確保および特許発明の早期保護と共に、無意味な技術公開を防止するために優先審査制度が改編された。

2. 改編される優先審査制度

(1) 専門機関による先行技術調査、65歳以上の廃止など

1) 改正理由

緊急に処理する必要性が低いケースを優先審査の対象から除いて、優先審査が至急な分野の支援を強化するために、一部の優先審査項目を削除し、認証を受けた災難安全製品と関連した特許出願に対する優先審査項目が追加された。

2) 改正内容

-緊急処理の必要性が低い専門機関への先行技術調査依頼、および65歳以上の者および健康に重大な問題のある者の優先審査項目を削除

-認証を受けた災難安全製品と関連した出願に対する優先審査項目を追加

3) 施行時点

2024年1月1日から施行される。

(2) 先端技術および国家戦略技術に対して優先審査による早期権利化の支援

1) 改正理由

国家的に重要な先端戦略技術に対して審査力量を集中して国家の主要技術の超格差の確保のために二次電池分野まで先端技術の優先審査の対象を拡大した。

2) 改正内容

- 2022年の半導体を始めとして、2023年のディスプレイに続き、2024年上半期には二次電池まで先端技術優先審査分野が拡大する予定である。

-国家戦略技術の研究開発課題の結果物と関連した特許出願も優先審査の対象として追加される。

これにより、先端技術および国家戦略技術分野の企業、研究開発機関などが優先審査を通じて早期に審査結果を受けることができる。

(3) グリーン技術関連の優先審査要件の緩和

1) 改正理由

グリーン技術関連出願に対する優先審査の実効性を確保するために優先審査要件を緩和した。

2) 改正内容

既存には国家のグリーン技術関連の支援や認証を受けてこそ優先審査が可能であったが、グリーン技術関連特許分類が付与された場合、優先審査を受けることができるようにその要件が緩和された。

3) 施行時点

優先審査対象のグリーン技術特許分類が確定して掲示され次第、施行される予定である。

3. むすび

優先審査制度の改編を通じて過度な優先審査申請による審査停滞を解消するために、専門機関の先行技術調査による優先審査制度を廃止して優先審査の実効性を一層高めようとした。また、二次電池を優先審査対象に含めて先端技術に対する審査力量がより強化されるとみられる。

 

II. 技術常識に反する医学的効果や非常識な効果などに関する発明の効果の記載に対する審査基準の強化

1. はじめに

技術常識に反する医学的効果や非常識な効果が明細書に記載された場合、虚偽広告などによる不測の被害を防止し、審査品質を向上させるために、2021年12月30日付審査基準改正(第2部第3章第5節)により特許法に基づいた拒絶理由を通知することができる根拠を設けた。

2. 発明の効果および非常識な発明に対する審査基準の強化

(1) 技術常識に反する医学的効果や非常識な効果など

1) 審査基準

発明の説明に発明の効果が記載されているが、発明の説明の全体記載からその効果を予測することができないか、またはその効果の有無に合理的な疑いがある場合(技術常識に反する医学的効果や非常識な効果など)、その効果が請求項に記載された発明と関連した効果であれば、特許法第42条第3項第1号の違反で拒絶理由を通知することができる。意見提出通知書を通じて拒絶理由を通知する時に、発明の効果を確認することができる実験成績書などの資料提出を命じることができる。

発明の説明に記載された発明の効果が請求項に記載された発明と関連した効果であるのか判断する時には、文言的・形式的にのみ判断するのではなく、請求項の発明に内在された事項との関連性を考慮して幅広く考察して判断する。

2) 出願人の対応方案

発明の効果に関する立証要求に対し、出願人は意見書や実験成績書などの資料を提出して発明の当該効果を立証したり、発明の説明に記載された検証されない当該効果の記載を削除する補正を行うことができる。

3) 出願人の未対応時の審査官の措置

出願人が発明の効果を立証することができる意見書や資料を提出せず、当該効果を確認することができない時には、審査官は既通知の拒絶理由により拒絶決定するか、または他の拒絶理由がない場合であって、容易に職権補正が可能な場合には明細書(発明の説明、請求の範囲など)から当該効果の記載を職権補正により削除した後に登録決定することができる。この時、出願人が職権補正を受け入れず、意見書を提出する場合には、職権補正事項は最初からなかったとみなし、登録決定も取消されたとみなすため、既通知の拒絶理由により拒絶決定することができる。

4) 例示

(例1) 請求項に記載された「ロット(lotto)番号を生成する装置」に関する発明に対し、発明の説明に記載された「当選確率の高いロット(lotto)番号の生成」という発明の効果は非常識であるため、特許法第42条第3項第1号の違反で拒絶理由を通知した上で立証を要求し、立証されない場合には拒絶決定することができる。

(例2) 発明の説明に「脳神経麻痺で発生する中風の治療および予防が可能な程度に卓越した効果が発生する」と記載されているが、発明の説明の全体からみて「中風の治療および予防」に対する技術的可能性はあり、登録決定は可能であるが、医療機器として使用することができる程度に医学的効果があることは立証されなかったと判断される場合、医学的効果まで立証されたと誤認し得る主観的記載である「卓越した」のような記載は、審査官が職権補正を通じて削除した後に登録決定することができる。

(2) 登録公報に掲載時、虚偽・誇大広告に利用されたり、一般人に誤認・混同を起こして被害を与える虞があると判断される場合

1) 審査基準

発明の説明に記載された発明の効果の中で請求項に記載された発明と関連していない効果に対しても、そのまま登録公報に掲載されれば、虚偽・誇大広告に利用されたり、一般人に誤認・混同を起こして被害を与える虞があると判断される場合(技術常識に反する医学的効果、非常識な効果など)には、その効果の立証を要求することができる。このとき、意見提出通知書の「参考事項」に記載したり、「参考資料提出要請書」に発明の効果の確認が難しい趣旨を記載した上で、発明の効果を確認することができる実験成績書などの資料提出を命じることができる。

効果立証を要求する資料提出を命じるときは、「虚偽資料を提出して登録決定を受けた場合、特許法第229条または実用新案法第49条の虚偽行為の罪に該当することがある」と意見提出通知書や参考資料提出要請書に記載して告知することができる。

2) 出願人の未対応時の審査官の措置

出願人が当該効果の記載を補正により削除もせず、立証することができる意見書や資料の提出もせず、当該効果を確認することができない場合には、資料などが提出されて立証されるまで審査を保留するか、または容易に職権補正することができる場合には、当該効果の記載を職権補正により削除して登録決定することができる。この時、出願人が職権補正を受け入れず、意見書を提出すれば、職権補正および登録決定が取消されたとみなした上で、立証されるまで審査を保留することができる。一方、出願人が以前の職権補正を受け入れるという意思表示する場合には、再び当該効果の記載を削除する職権補正を行って登録決定することができる。

3) 例示

発明の説明には「この発明の機能性パッチは、抗菌作用をするだけでなく、水脈波を遮断する機能を果たすもの」と記載されているが、機能性パッチの組成と水脈波遮断機能とは関連性がないため、その効果に対して合理的な疑いがある場合に、当該効果が請求項に記載された発明と関連がないとしても、そのまま登録公報に掲載されて誇大広告に利用される虞があると判断されれば、このような効果を確認することができるように出願人に資料提出を命じることができる。出願人が当該効果を立証することができる資料を提出しない場合には、資料が提出されるまで審査を保留することができる。上記記載以外には他の拒絶理由がないと判断される場合には、上記記載を明細書から削除するように職権補正を行った後に登録決定することができる。

3. むすび

技術常識に反する医学的効果や非常識な効果を明細書に記載した特許が公開された場合、当該公報のみを読んで大衆はそのままその内容を信頼して虚偽広告などにより不測の被害を被ることがある。また審査品質が低下し、審査力量を集中することができないという問題が発生することがある。

したがって、今回の改正を通じて、技術常識に反する医学的効果や非常識な効果などの場合、発明の説明に発明の効果が記載されているにも拘らず、特許法第42条第3項第1号の違反で拒絶理由を通知することができる根拠を設けたという点から、本改正は望ましい方向の改正と思料される。