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多数の先行文献を引用した進歩性に基づく拒絶理由への対応方案
弁理士 金仁漢

特許法において、「進歩性(第29条第2項)」は、特許登録を受けるためには必ず備え、克服しなければならない要件である。一般に審査官は、一つの請求項内の多くの構成と多数の先行文献の内容とを対応させた上で、進歩性を理由として拒絶理由を通知する。特許出願プロセスに慣れていない発明者はこのような拒絶理由通知を受けると、相当な当惑感を抱くこととなり、特にその先行文献の数が多いほど、より一層当惑感は強いであろう。

以下、審査官が一つの請求項に対して多数の先行文献を引用して進歩性を理由として拒絶理由を通知する場合に確認する事項と対応意見をみてみる。

(1) 引用文献が適法な先行文献であるのか否かの個別検討

まず、引用された文献が第29条第1項を満たすのかを個別的に判断した上で、それぞれの引用された文献が進歩性判断のための先行文献として適法な地位を有するのか確認しなければならない。すなわち、引用された文献が出願前に公開されているのかを判断しなければならない。

引用された文献が先行文献として適法な地位を備えていなければ、審査官は第29条第2項および第62条を根拠として特許登録を拒絶することができない。もし、一つの引用文献でも先行文献として適法な地位を備えていなければ、審査官の進歩性の拒絶理由が妥当でないことを主張することができる。

特に審査対象となる出願が条約による優先権主張(第54条)または特許出願などに基づいた優先権主張(第55条)を根拠として出願された場合、当該優先権主張の基礎となる出願を基準に第29条第1項を判断しなければならない。

(2) 結合発明による進歩性の主張

結合発明は、発明の技術的課題を達成するために先行技術に記載された技術的特徴を総合して新たな解決手段から構成された発明である。多くの先行技術が既に公知の状態であるため、事実上現在出願されるほぼ全ての発明は、このような先行技術を結合したものであるとみることができる。1

審査指針書p.3324には、審査官は、2以上の先行技術(周知慣用技術を含む)を相互結合させて結合発明の進歩性を判断することができ、上記結合が当該発明の出願時を基準に通常の技術者が容易に行うことができると認められる場合には、進歩性を理由として拒絶することができる。出願人は、出願時に先行技術の結合が容易でないことを意見書などを通じて主張することができ、上記主張が認められれば、進歩性の拒絶理由を克服することができる。

大法院および審査指針書では、以下のような内容により、結合発明を判断している。出願人は以下の内容などを活用して結合発明の発明が容易でないことを主張して、進歩性の拒絶理由を克服することができる。

1) 判例(2008フ3377)

2以上の先行技術を組み合わせまたは結合すれば、当該特許発明に至り得るという暗示・動機などが先行技術文献に提示されているか、そうでなくても、当該特許発明の出願当時の技術水準、技術常識、当該技術分野の基本的課題、発展傾向、当該業界の要求などに照らして、その技術分野に通常の知識を有する者が容易にそのような結合に至ることができると認められる場合には、当該特許発明の進歩性は否定される。

2) 判例(2006フ2097)

請求項に記載された発明は全体として考慮されるべきであるところ、結合発明の進歩性を判断するに当たって、請求項に記載された発明の構成要素のそれぞれが公知または引用発明から自明であるとして請求項に記載された発明の進歩性を否定してはならない。

3) 判例(2005フ3277)

請求項に記載された複数の構成を分解した後、分解された個別の構成要素が公知のものであるか否かのみを判断してはならず、特有の課題解決原理に基づいて有機的に結合された全体としての構成の困難性を考察すべきであり、この時、結合された全体構成としての発明が有する特有な効果も共に考慮しなければならない。

4) 判例(2005フ1530)

周知慣用技術を他の先行技術文献と結合することは、通常容易であるとみている。ただし、結合される技術的特徴が当該技術分野で周知慣用技術であるとしても、他の技術的特徴との有機的な結合により一層良い効果を与える場合には、その結合は自明であるといえない。

5) 審査指針書p.3327

結合された引用発明の数が多いほど、事後的考察または適切な拒絶理由が欠如しているケースに該当する可能性が高くなる。

6) 審査指針書p.3327

①通常の技術者が結合する可能性があるか否か、②先行技術の出処が同一であるか、隣接技術分野であるか否か、③結合のために互いに関連づけるほどの合理的な根拠があるか否か、を考慮してこそ2以上の異なる先行技術の結合の容易さを判断することができる。

(3) むすび

以上の内容を活用すれば、請求項に構成を追加したり内容などを付加/限定(請求の範囲の減縮)することなく、一つの請求項に対して多数の先行文献を引用して通知された進歩性の拒絶理由を克服することができる。その他に、審査官の指摘が妥当でないとの理由を挙げて反論することができる。

 


1  主要の結合明の進性判の整理–YOU ME IPブログ(blogyoume.com)