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主要国(IP5)の新規性/先後願の判断時点の比較
弁理士 李鎔圭

同一発明に対する同日付出願の判断方法について考察してみる。1

項目

韓国

米国

日本

中国

欧州

新規性

29①各号

102(a)(1)

29①各号

22①前段

54(1)、54(2)

先出願主義

36

102(a)(2)

39

9①、②

60(2)

1. 韓国

・第29条第1項(新規性)

①産業上利用可能な発明として次の各号のいずれかに該当することを除いては、その発明に対して特許を受けることができる。

1. 特許出願前に国内または国外で公知となった、または公然実施された発明

2. 特許出願前に国内または国外で頒布された刊行物に掲載された、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明

韓国特許出願の新規性判断は、出願時を基準とする。すなわち、時、分、秒まで厳格に考慮する。

・特許法第36条(先出願主義)

①同一の発明に対して異なった日に2以上の特許出願がある場合には、先に特許出願した者のみがその発明に対して特許を受けることができる。

②同一の発明に対して同日に2以上の特許出願がある場合には、特許出願人間に協議して定めた1の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる。ただし、協議が成立しなかったり協議をすることができない場合には、いずれの特許出願人もその発明に対して特許を受けることができない。

韓国特許出願が競合するときには、出願日を基準とする。ただし、協議を誘導することによって競合する出願人の全てが実施できるように図るために、同一の発明に対して同日に2以上の特許出願があって互いに競合する場合には、特許出願人間に協議して定めた一の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる。

1. 競合出願が特許されるなど協議できない場合

競合出願が特許されるなど協議できない場合には、当該出願に関する審査を進行する。競合出願が特許された場合には、出願人間の実質的な協議のために競合出願人に対して競合事実を通知し、当該出願の出願人には拒絶理由を通知する時に競合事実を記載して通知する。

2. 競合出願が公開され、審査請求されている場合

競合出願が審査請求されている場合、審査官は期間を指定して特許庁長名義で協議要求をする。この場合、審査官は競合出願と当該出願の全てに対して協議要求と共に第36条第2項または第36条第3項を通知する。協議要求を受けた後、出願人が指定期間に協議結果に対する申告および協議結果に対する措置をして第36条第2項または第36条第3項の拒絶理由を解消し、他の拒絶理由がない場合には特許決定し、拒絶理由があり、その拒絶理由が既に通知した拒絶理由である場合には拒絶決定する。一方、 協議が成立しなかったり協議をすることができない場合には、いずれの特許出願人もその発明に対して特許を受けることができず、特許庁長が期間を定めて協議命令をしたにも拘らずその期間内に申告がない時は協議は成立されなかったとみなす(第36条第6項)。

3. 競合出願が公開されていないか、審査請求されていない場合

競合出願が公開および審査請求される時まで、または取下げあるいは放棄される時まで審査を保留するという趣旨を当該出願の出願人に通知する。

4. 協議手続を経ずに新規性などを事由とした拒絶決定の適法有無(適法)

判例(97フ2576)は、同一の考案に対して同日に2以上の実用新案登録出願がある時にも、その考案が新規性や進歩性の欠如により拒絶されるべきものである以上、出願人間の協議手続などを経なかったとしてその出願に対する新規性や進歩性の欠如を原因とした拒絶査定が不適法であるといえないと判示した。

2. 米国

・AIA 35 USC 102(a)(1) (新規性)

Novelty; Prior Art.—A person shall be entitled to a patent unless the claimed invention was patented, described in a printed publication, or in public use, on sale, or otherwise available to the public before the effective filing date of the claimed invention; or

請求された発明の有効出願日(=最優先日、国内外関係なし)以前に請求された発明が特許されたり、刊行物に開示されたり、公用、販売、他の方法により公衆が利用可能となった場合

米国特許出願の新規性判断は、有効出願日を基準とする。すなわち、公知と出願が同日に行われた場合、先行技術として認められないため、新規性の拒絶理由とならない。

・AIA 35 USC 102(a)(2) (先出願主義)

(2) The claimed invention was described in a patent issued under section 151, or in an application for patent published or deemed published under section 122(b), in which the patent or application, as the case may be, names another inventor and was effectively filed before the effective filing date of the claimed invention.

米国特許出願が競合するときには、有効出願日を基準とする。

1. 出願人が異なる場合

出願日が同じ場合、先出願者原則を適用して誰が先に出願したのかを判断する。先出願者は当該発明を先に発明して出願した者であって、先に発明して出願した者に優先権を主張できる権利を付与する。

2. 出願人が同一な場合

①二重特許(Double Patenting)の定義

二重特許とは、先特許と実質的に同一または類似の後特許が登録された状態をいい、これには後特許が先特許と実質的に同一な場合と、後特許が先特許に対して変更された部分を含んでいるが、その変更が容易または単純であり、後特許と先特許の間に特徴的な区別がない場合とがある。

二重特許の問題が考慮されるためには、2以上の特許または出願がその発明者および/または出願人の共通性がなければならず、二重特許か否かは2以上の特許や出願の「クレーム(claim)」に分析の焦点が合わせられる。一般に、二重特許拒絶の類型には、35 USC 101規定による「同一発明(same invention)」類型の「法定(statutory)」二重特許拒絶と、公共秩序に基づいて判例上で定立された「非法定(non-statutory)」類型の二重特許拒絶とがある。

②法定二重特許(同一発明型重複特許である場合)-§101規定を根拠として「同一発明」が再度権利請求されることが禁止される。

③判例法上の二重特許(自明型重複特許である場合)-法定根拠はないが、判例(InreSchneller,397F.2d350(CCPA1968))により政策的に特許が否定される場合である。先発明と対比して後発明が自明な程度の変形に過ぎない場合には、実質的に同一の発明概念を根拠として2つの特許が認められ得ないところ、この時、自己の先行特許により二重特許に該当するようになる場合であれば、自明な範囲の請求項に対して存続期間放棄書(terminal disclaimer)を提出して登録が可能である(§253, CFR1.321)。

3. 日本

・第29条(新規性)

①産業上利用することができる発明をした者は、次に該当する発明を除いてはその発明に対して特許を受けることができる。

1. 特許出願前に日本国内または外国において公然知られた発明

2. 特許出願前に日本国内または外国において公然実施された発明

3. 特許出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明、または電気通信回線を通じて公衆が利用可能となった発明

日本特許出願の新規性判断は、出願時を基準とする。すなわち、時、分、秒まで厳格に考慮する。

・第39条(先出願主義)

①同一の発明に対して互いに異なった日に2以上の特許出願があった時は、最先の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる。

②同一の発明に対して同日に2以上の特許出願があった時は、特許出願人間の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる。ただし、協議が成立しなかったり協議をすることができない場合は、いずれの特許出願人もその発明に対して特許を受けることができない。

日本特許出願が競合するときには、出願日を基準とする。すなわち、同一の発明に対して同日に2以上の特許出願があって互いに競合する場合には、特許出願人間に協議して定めた一の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる。

4. 中国

・第22条(新規性)

①特許権(専利権)が付与される発明と実用新案は、新規性、進歩性(創造性)、および産業上の利用可能性(実用性)を具備しなければならない。

新規性とは、当該発明または実用新案が先行技術に属さないことをいう。また如何なる単位または個人も同一の発明または実用新案に対して出願日以前に国務院専利行政部門に出願しておらず、かつ出願日以降に公開された特許出願文書または公告の特許文書に記載されていないことを指す。

本法における先行技術とは、出願日以前に国内外で公衆に知られた技術を指す。

中国特許出願の新規性判断は、出願日を基準とする。ただし、上記規定によると、出願日以前および出願日と同日に公開された先行技術は、公開された時間と関係なく新規性の拒絶事由となる。これとは別個に、出願日前に中国特許庁に提出し、出願日以降に公開された特許出願文書または公告の特許文書に出願内容が記載されている場合、後出願は抵触出願となり、当該後出願は新規性の拒絶事由となる。

・9条(先出願主義)

①同一の発明創造には一つの特許権のみが付与される。ただし、同一の出願人が同日に同一の発明創造に対して実用新案特許と発明特許を出願し、先に取得した実用新案特許権がまだ存続しており、かつ出願人が当該実用新案特許権を放棄すれば、発明特許権を付与することができる

2以上の出願人がそれぞれ同一の発明創造に対して特許出願をする場合、特許権は最先に出願した者に付与する

中国特許出願が競合するときには、出願日を基準とする。

1. 出願人が異なる場合

互いに異なった日に2以上の出願人がそれぞれ同一の特許出願をする場合、先出願主義原則に基づいて出願日を基準として最先に出願した者に付与する(第9条第2項)。同日に2以上の特許出願がある場合、特許出願人間に協議して定めた一の特許出願人のみがその発明に対して特許を受けることができる(審査指針)。

2. 出願人が同一な場合(重複出願)

実務では権利を早期に行使することができる重複出願を多く薦めている。

中国特許法は、韓国特許法にはない発明特許と実用新案特許を同時に出願し、先に実用新案特許権が付与されると実用新案特許権を行使する中で、発明特許権が付与されると実用新案特許権は放棄し、発明特許権を行使することができる重複出願制度を規定している(特許法第9条第1項、特許法実施細則第41条第2項)。

5. 欧州

・EPC Art. 54(新規性)

(1) (新規性の定義) An invention shall be considered to be new if it does not form part of the state of the art.

(2) (公知・公用) The state of the art shall be held to comprise everything made available to the public by means of a written or oral description, by use, or in any other way, before the date of filing of the European patent application.

(3) (拡大された先願) Additionally, the content of European patent applications as filed, the dates of filing of which are prior to the date referred to in paragraph 2 and which were published on or after that date, shall be considered as comprised in the state of the art. (拡大された先願地位の文献も先行技術に含まれる)

欧州特許出願の新規性判断は、出願日を基準とする。したがって、出願と同日付に公知となった場合、新規性拒絶の先行技術として認められない。2015年の高等裁判所の判例では「Prior disclosures do not undermine patent filings made on the same day」と判示した。2

・EPC Art. 60(先出願主義)

(2) If two or more persons have made an invention independently of each other, the right to a European patent therefor shall belong to the person whose European patent application has the earliest date of filing, provided that this first application has been published.

欧州特許出願が競合するときには、出願日を基準とする。2以上の者が互いに独立して発明を完成した場合、先に特許出願をした者に属するが、ただし、その優先した出願が公開されることを条件とする。したがって、先出願が公開されずに消滅したとすれば同一発明に対して再出願の機会が付与される効果がある。

 


 1  5(EPO)特許法の比較考察(2008.09.特許知的財産究院)
  https://www.pinsentmasons.com/out-law/news/prior-disclosures-do-not-undermine-patent-filings-made-on-the-same-day-rules-high-court