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商標侵害事件の類否の判断時に結合商標の識別力を考慮して要部観察をした事案-大法院2023ド352判決(2023.9.21.言渡)(商標法違反)
弁理士 魯知惠

1. 事件の概要

イ.権利者Aは、2019年9月頃「」商標(以下、「本事件登録商標」という。)を商品類第41類の「スポーツ教室経営業、スポーツ指導業」などを指定して出願し、2020年2月頃登録された。

ロ.被告人Bは、2020年2月末頃から2021年8月頃までBの事業所、ホームページ、インスタグラムサイトなどに「」(以下、「使用商標」という。)を表記した。

ハ.被告人Bが権利者Aの商標権を侵害したか否かに関する商標法違反事件(2023ド352)において、登録商標と使用商標の類似性が争点となった事案である。

2. 大法院の判断(2023ド352の商標法違反事件)

原審は、本事件登録商標の要部を「BURN」部分とみることができないため、全体観察すると、本事件登録商標と使用商標は類似していないとの理由により当該部分の控訴事実を無罪と判断した第1審判決をそのまま維持した。これに対して大法院は次のような理由で原審判決を破棄・差戻した。

イ.結合商標の類否の判断

2以上の文字または図形の組み合わせからなる結合商標は、その構成部分全体の外観、呼称、観念を基準として商標の類否を判断することが原則であるが、商標のうち一般需要者にその商標に関する印象を与えたり記憶・連想させることによってその部分のみで独立して商品の出処表示機能をする部分、すなわち、要部がある場合に適切な全体観察の結論を誘導するためには、その要部をもって商標の類否を対比・判断することが必要である。そして、商標の構成部分が要部であるか否かは、その部分が周知・著名であるか、一般需要者に強い印象を与える部分であるか、全体商標で高い比重を占める部分であるかなどの要素を判断してみるが、ただし、これに他の構成部分と比較した相対的な識別力のレベルやそれとの結合の状態と程度、指定商品との関係、取引実情などまで総合的に考慮して判断しなければならない(大法院2015フ1690判決(2017.2.9.言渡)など参照)。

ロ.事件の論点

本事件登録商標の「BURN」と「FITNESS」を分離して「FITNESS」部分に識別力がない場合、「BURN」部分を要部とみなした上で、独立して出処表示機能をすることができるか否かが問題となった事案である。

ハ.法院の判断

大法院は、本事件登録商標の「FITNESS」部分は、その指定商品の効能や用途を表示するものであって、識別力がないが、「BURN」部分は、指定商品との関係を考慮するとき、「運動を通じて体脂肪またはカロリー、ストレスなどを燃やす」という意味を暗示するとみることができても、その指定商品の効能や用途、性質を直感させるとは断定することはできないと判示した。また、商品取引において誰にでも必要な表示であるともいえず、公益上特定人に独占させることが適切でないケースに該当するとみることも難しいとみなした。特に、「BURN」部分は、「FITNESS」部分に比べて相対的に識別力が高く、「FITNESS」と結合した一体としてのみ識別標識として機能するとみることはできないとみなした上で、本事件登録商標の「BURN」部分と使用商標は外観・呼称・観念が互いに類似しており、両商標は互いに類似していると判示した。

3. 示唆点

原審で識別力が低いと判断した部分に対して、大法院は、指定商品の性質を暗示するとみることができるが、識別力がないとみることはできないとの理由により商標類否の判断時に要部とみなした上で、商標権侵害を認めた。指定商品との関係における識別力が強くない構成要素で結合された商標において、識別力が相対的に高い部分を商標類否の判断時に要部として認めたという点に意味がある。