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商標法第119条第1項第3号の登録取消事由の判断時、商標使用証拠が商標的使用に該当するか否か-大法院2022フ10265判決(2023.5.18.言渡)[登録取消(商)]
弁理士 朴敏智

1. 事件の概要

イ.権利者Aは、2015年1月頃、「(컨투어 코일はCONTOUR COILのハングル音訳)」商標(以下、「本事件登録商標」という。)を商品類第20類の「ベッドおよびマットレス」などを指定して出願し、2015年10月に登録された。

ロ.Bは、2020年9月頃、本事件登録商標は第20類「ベッドおよびマットレス」を含む一部の指定商品に対して、商標権者、専用使用権者または通常使用権者のうちのいずれによっても正当な理由なしに取消審判請求日前に継続して3年以上国内で使用された事実がないため、商標法第119条第1項第3号(旧商標法第73条第1項第3号1)によりその登録が取消されるべきであることを主張した上で、審判を請求した。

ハ.これに対して権利者Aは、「コンツアーコイルマットレス」に関する論文、ニュース記事、売り場で提供する5段リーフレット、売り場壁面に展示された広報用パネルなどが含まれたネイバーブログの掲示文を使用証拠資料として提出し、本事件登録商標が通常使用権者により本事件審判請求日前3年以内にその指定商品である「寝具(織物製は除く。)、ベッドおよびマットレス」に正当に使用されているため、登録取消事由に該当しないことを主張した。

ニ.また、権利者Aは、登録商標の使用証拠として通常使用権者が第三者とマットレス供給取引時に交付した取引書類(物品供給契約書、見積書、取引明細書)に「컨투어코일(Countour Coil)」、「컨투어코일」が表記された証拠資料およびマットレス、ベッド製品の販売、広告のためのインターネットサイトと売り場の壁面などに掲示された広告物に「COUNTOUR COIL」、「컨투어코일」が表示された資料を提出した。

2. 特許審判院、特許法院および大法院の判断

イ.特許審判院(2020ダン2900) →認容審決(登録取消事由の存在)

特許審判院は、登録取消事由の判断において『権利者Aが提出したネイバーブログの掲示文に含まれている論文は「コンツアーコイルマットレス」を説明しており、ニュース記事でも「コンツアーコイルマットレス」に対して「マットレスに適用されるスプリングシステム」を意味するものと記述しており、商標として使用されていない。ニュース記事で「コンツアーコイル」は、マットレスの一種類程度としてのみ言及され、「베스트슬립(ベストスリープのハングル音訳)」を商標とするベッドブランドに関する広報および販売などが重点的に取り扱われており、「베스트슬립」を出処表示として使用したものとみられる。また、マットレスは製品の側面や後面などにラベルを付着して出処表示をすることが一般的であるが、本事件登録商標が表記されたマットレスの写真、売上高、広告実績などを提出しておらず、best sleep社のホームページに「컨투어코일」が表示されたマットレス製品が展示されていないため、商標使用に該当しない。』とした上で、不使用取消審判に対する認容審決を下した。

ロ.特許法院(2021ホ5259) →認容判決(審決違法、登録取消事由の不存在)

反面、特許法院は『本事件登録商標の通常使用権者であるCが本事件審判請求日前3年以内にマットレス供給取引の相手方に「컨투어코일(Countour Coil)」、「컨투어코일」が表示された取引書類(物品供給契約書、見積書、取引明細書)を交付し、これは「商品に関する取引書類に商標を表示して展示し、或いは広く知らせる行為」であって、商標法第2条第1項第11号の所定の「商標の使用」に該当するといえる。

また、通常使用権者Dは、マットレス、ベッド製品の販売、広告のためのインターネットサイトと売り場の壁面などに掲示された広告物に「」を表示するなど、右側上端に「TM」を付記して使用し、広報物の正面中央部に太くて大きな文字で強調表示するなどの方法で本事件登録商標を使用してきたところ、これは本事件登録商標の使用権者が本事件登録商標を自他商品の識別標識として使用しようとする意思に基づいて使用したことを明確に示すものであり、一般需要者も本事件登録商標の表示を製品の出処表示として認識するとみることが妥当である。』とした上で、特許審判院の審決が違法であり、本事件登録商標は登録取消事由を有さないため、不使用取消審判審決取消訴訟に対して認容判決を下した。

ハ.大法院(2022フ10265判決) →上告棄却(特許法院の判決適法、登録取消事由の不存在)

大法院は『商標法は「商標」に関して「自己の商品と他人の商品を識別するために使用する標章をいう」と規定する一方で(第2条第1項第1号)、「品に関する広告・定価表・取引書類、その他の手段に商標を表示して展示し、或いは広く知らせる行為」を「商標の使用」として規定している[第2条第1項第11号(ハ)目、以下、「(ハ)目」という]。(ハ)目の「取引書類」は、取引に提供される書類であって、注文書、納品書、送り状、出荷案内書、物品領収証、カタログなどがこれに含まれる(大法院2002.11.13.付2000マ4424決定参照)。

本事件において、商品の販売業者が指定商品との具体的な関係において自己の商品と他人の商品を識別するために商品に関する取引書類に商標を表示し、商品の取引過程で一般公衆に属する取引相手方にこれを交付したとすれば、かかる行為を通じてその取引書類を一般公衆が認識できる状態に置いたと認められるため、特別な事情がない限り、上記のような行為は商品に関する取引書類に商標を表示し、広く知らせる行為であって、(ハ)目が規定している商標の使用に該当する。

したがって、原審判決は、論理と経験の法則に違反して自由心証主義の限界を逸脱したり、商標法上の商標の使用や商標登録の取消事由に関する法理を誤解して判決に影響を与えた誤りがない。』と判断した上で、上告を棄却した。

3. 本判決の示唆点

本事件の取消事由として議論された商標法第119条第1項第3号は、商標権者に使用義務を付加して一定期間使用しない商標を取消すことによって、第三者の商標選択の機会を広げ、登録主義を補完する趣旨の規定である。したがって、登録商標に対して商標法第119条第1項第3号の不使用取消審判が請求された場合、商標権者は取消審判請求日前3年以内に国内で登録商標を使用したという事実を立証してこそ登録を維持することができる。

本事件では商標が説明的用途で記載されたり、他の出処表示が明確に記載されている場合には商標的使用に該当しないと判断した反面、取引書類に商標が表記されたり「TM」を結合して表記したことに対しては、自他商品の識別標識と見なして商標的使用として認定した。商標法第2条第1項第11号では「登録商標の使用」に対して「商品または商品の包装に商標を表示する行為」、「商品または商品の包装に商標を表示したものを譲渡または引渡したり、そのような目的で展示・輸出または輸入する行為」、「商品に関する広告・定価表・取引書類、その他の手段に商標を表示して展示し、或いは広く知らせる行為」などを規定している。

上記のような事項を参考にして、登録商標の権利者は、商標登録の維持および安全な使用のために第三者の取消審判請求に備えて商標的使用が認められ得る使用証拠資料を予め確保しておく必要性がある。