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MAGNA商標紛争の示唆点
弁理士  金孌雅

外国語のみからなる商標が大幅に増加しつつあり、SNS、バイラルマーケティングなどの広告媒体が活発になることに伴い、商標呼称の重要性が台頭しているところ、最近、「小人ダビデと巨人ゴリアテ」の争いと呼ばれるほど業界で話題となったケースとして、「MAGNA」商標紛争がある。本事件を紹介し、この紛争が有する示唆点について考察する。

1. MAGNA商標紛争の概要

ボルビックは2009年からゴルフボール「MAGMA」を販売してきたが、2018年にキャロウェイゴルフが「Magna」商標を国内に登録することで、ボルビックとキャロウェイ間の争いが始まった。

キャロウェイは世界的なゴルフ用品企業であるのに対し、ボルビックは韓国企業であって、ゴルファー間に混同を与えるばかりか、ボルビックがキャロウェイ社の商標を真似して作ったように認識され得るため、ボルビッグは、2019年に特許審判院に商標登録無効審判を提起した。

特許審判院は、職権調査を通じてキャロウェイゴルフのゴルフボールが「ネイバーショッピング」などで「캘러웨이 슈퍼소프트 매그나 골프공(ハングル:キャロウェイ・スーパーソフト・メグナ・ゴルフボール)」として販売されており、実際使用実態を調査したところによると、마그나(ハングル:マグナ)として使用されるものは見つからないとした上で、比較的に短い3音節であり、初音節が「매(ハングル:メ)」と「마(ハングル:マ)」で差異があり、一般的に語頭である初音節が強く認識されるが、最後の音節が「나(ハングル:ナ)」と「마(ハングル:マ)」で差異がある点を考慮すると、매그나(ハングル:メグナ)と마그마(ハングル:マグマ)は全体的に非類似である」と判断した上で無効審判請求を棄却した。

しかし、特許法院の裁判部は、「本事件登録商標Magnaは、国内の一般需要者と取引者により마그나 (ハングル:マグナ)または매그나(ハングル:メグナ)と呼称され得、「마그나 (ハングル:マグナ)」と呼称される場合、本事件登録商標と先登録商標の呼称は「마그마(ハングル:マグマ)」と「마그나 (ハングル:マグナ)」で互いに類似しているため、キャロウェイゴルフのMagna商標登録は無効とされるべきである」との結論を下した。

以降、ボルビック側は、キャロウェイの商標使用に対して商標権侵害差止請求を提起し、裁判部は、特許法院と同様にボルビックを支持した。裁判部は「商標の類否判断において外国語からなる商標の呼称は、韓国需要者の大部分が困難なしに自然に行う発音により決まる」とし、「1つの商標において2つ以上の呼称や観念を考えることができる場合には、そのうちの1つのみが類似していても類似性を認めることができる」と判断し、裁判部は、キャロウェイに損害賠償金2000万ウォンの支給と共に、「Magna(매그나(ハングル:メグナ)、마그나 (ハングル:マグナ)」商標をゴルフボールに表示させないようにした。また既存の在庫商品に対する廃棄も命令した。

韓国の消費者がMagnaを「마그나 (ハングル:マグナ)」と呼称する以上、類似性を認めるべきであるということである。国内のショッピングモールや消費者が運営するブログでキャロウェイの商品を「마그나 (ハングル:マグナ)」と呼称する事例が根拠となった。

2. MAGNA商標紛争の示唆点

本MAGNA商標紛争における争点は、外国語商標の呼称においてその発音を一般需要者の基準から判断した点にあるといえる。

外国語商標の呼称においてこれと類似する判例として、

「原審で示された証拠のみでは韓国の取引者や需要者が一般的に「LOTS」を「로트스(ハングル:ロトゥス)」と呼称すると認めるには足りず、むしろ文化教育部告示第85-11号(1986.1.7.)の外来語表記法に「語尾または子音の前の[ts]は「츠(ハングル:ツ)」と記す。」とされている点などに照らしてみると、韓国の取引者や需要者の大部分が「LOTS」を「롯츠(ハングル:ロッツ)」や「랏츠(ハングル:ラッツ)」と呼称する可能性が高いといえ、本事件登録商標が「롯츠(ハングル:ロッツ)」や「랏츠(ハングル:ラッツ)」と呼称される場合、両商標は呼称における顕著な差異により全体として類似する商標に該当するといえない(2004フ2628判決)」、

「商標の類否の判断において外国語からなる商標の呼称は、韓国の取引者や需要者の大部分がその外国語を見て特別な困難なしに自然に行う発音により決められることが原則であり、「ZEISS」を需要者や取引者が「자이스(ハングル:ジャイス)」と呼称しているにも拘わらず、一部の英単語の発音事例のみに基づいて「제이스(ハングル:ジェイス)」と呼称されると断定した判断は違法がある(2004フ2093判決)」

などの判例がある。

前記の判例からみると、外国語のみから構成された商標においてハングル商標に対する出願の要否が悩ましいところである。メディアと媒体の発達により英語のみならず世界各国の言語からなる商標が使用されているが、これに関連して出願人は、外国語からなる商標のみならず、自身が使用したい呼称に対するハングル発音の商標を別途に出願する必要性が台頭する。特に一般需要者がその発音を容易に認識できる単語でなく、造語商標または英語でない第3外国語など、よく知られていない単語を商標として定める場合、ハングル商標を別途に出願したり、インターネットなどでハングル発音からなる商標を多く使用することによって、他の呼称で認識されてしまい意図せずに他の商標との紛争が発生することを避けることができるはずである。

また、特許審判院では、職権調査を通じて、ショッピングモールでの名称使用などを根拠に「magna」が「매그나(ハングル:メグナ)」または「매그너(メグノ)」のみで使用されると判断したが、特許法院では、使用証拠として提出されたものにより一般需要者は「마그나(ハングル:マグナ)」とも呼称するとの事実を認めたことに注目すると、ショッピングモールでの名称は主に販売者の要請により特定される場合もあり、仲介業者により販売される場合には一般需要者が容易に認識する呼称で登録される場合もあり、一般需要者も個人SNSやパワーブロガーなどが媒体の役割となる場合、これらの商標使用も一般需要者の認識に大きな影響を与えるため、一般需要者の基準で認識される呼称に対して如何なる資料でもって立証するのか考慮する必要があるとみられる。