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香港の最新特許制度の概要
中国弁理士 元慧蘭

中国に特許出願をすれば香港にも自動的に特許出願されるのですよね?

業務中、中国を含むアジア国家に特許出願しようとする出願人からほとんど共通して受けた質問の一つである。

香港が中国に返還されたため、香港を中国に属する一つの都市とみなして中国に特許出願および登録が完了されれば、当然中国に属している香港でも同一に特許権の行使が可能であると考える人が依然として多いようである。

しかし、香港が中国に返還されることに伴い、香港の立法機関では、中国とは異なり、香港で独自に特許権などが存続できるように法規を通過させており(香港は中国とは区別された、別途の行政権を有する。)、このような法規は現在までも有効である。したがって、香港内で特許権を行使しようとすれば、別途に香港で特許登録を受けなければならない。

ただし、香港は、他の国とは異なり、特許制度が多少特異であるため、以下、香港の特許制度について考察する。特に、香港は、従来の特許制度を維持すると同時に、新たに原授標準特許制度(OGP、Original Grant Patent)を導入して2019年12月からこれを施行しているところ、最新の香港特許制度について考察する。

1. 香港の特許出願の類型による区分

つまり、従来の香港特許制度である再登録制度と短期特許によると、香港知識産権署(IPD)は無審査または方式審査のみを行っていた。このような従来の香港特許制度は、手続が比較的単純であり、低廉な費用で特許権獲得が可能であるという長所があるが、独自の特許審査を行わないため、革新に対する投資の阻害、および香港内の発明家の特許出願を妨害するという問題が持続的に提起されてきており、そのために2019年12月から新たに原授標準特許制度が設けられた。

原授標準特許制度は、既存の他の国に特許出願を行う場合と同様に、香港知識産権署(IPD)に直接特許出願をすれば、香港知識産権署(IPD)で方式審査のみならず、実体審査も行って特許拒絶理由がなければ特許を許与するというものである。

従来の香港特許制度は、中国、英国または欧州(英国を指定国として指定)特許出願を先ず行った後、これら先行特許庁での審査結果を基に香港でも同一に登録を許与するというものであるが、新たに設けられた原授標準特許制度を利用すると、中国、英国または欧州などに優先的に特許出願を行わなくても、香港に直接特許出願することができるという点から、両者は相異しているといえる。

2. 原授標準特許制度の利用現況

2016年から2020年まで香港に標準特許(再登録)を出願した件数を多出願数を基準に整理すれば、下表1のとおりである(出処:KOTRAニュース)。

[表1] (単位:件)

(順位は2020年出願数基準であり、( )は再登録でなく原授標準特許制度を通じた出願数を意味する。)

一方、原授標準特許制度を通じて香港に特許出願された件のみを集めて、多出願数を基準に整理すれば下表2のとおりである(出処:香港知識産権署(IPD)統計資料、KOTRAニュース)。

[表2] (単位:件)

韓国の場合、毎年中国を除く香港での特許出願件数が増加しており、何よりも2019年12月に原授標準特許制度が導入されるやいなや、2020年一年間に香港に直接原授標準特許制度を通じて特許出願した件数が最も多い国は韓国であることが分かる。

これにより、韓国企業が香港を主な海外市場として考慮していることが分かる。

3. むすび

従来は香港内でのみ特許出願を行うことを希望する出願人のニーズがあったとしても、それをそのまま反映して特許戦略を立てることは不可能であったが、原授標準特許制度が新たに導入されて香港内でのみ特許出願を行うことも可能となったため、これを活用して出願人のニーズにより符合する特許戦略を立てることができるようになった。

例えば、香港市場を主要拠点として東南アジア市場に積極的に進出しようとする企業があるとして、ただし、中国や欧州市場では商品を製造/販売する計画はないと仮定してみる。この企業のニーズは販売しようとする商品の製造/輸出国における特許権を確保することであると思われるが、従来は主要拠点である香港での特許権獲得のために必ず中国や欧州にも特許出願を進行しなければならないため、不要な費用が必然的に発生するという問題があった。しかし、原授標準特許制度を利用すれば、香港および東南アジア国に対してのみ特許出願を行うことができるため、不要な費用が発生する問題を原則的に防止することができる。

実際にも韓国企業の原授標準特許制度の活用率が非常に高いことが示されており、今後、中国や欧州とは関係なく香港でのみ特許権確保が必要な出願人がいれば、前述の原授標準特許制度を積極的に活用してみる必要があるといえる。