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欧州特許の種類および方式による調査報告書および応答手続上の差異
弁理士 金智玄

欧州では欧州特許庁(European Patent Office、EPO)に出願して審査を受けるか、または欧州各国に出願して国別に審査を受けることができる。多数の欧州国家で特許で保護を受けようとする場合には費用および手続の面で欧州特許庁に出願して審査を受けることが有利であるといえる。

欧州特許庁に対する出願は、(i)欧州特許庁に直接出願する、(ii)韓国特許庁のように欧州特許庁でない機関が国際調査を行ったPCT出願を欧州地域段階に移行させる、(iii)欧州特許庁が国際調査を行ったPCT出願を欧州地域段階に移行させる、ことにより行うことができる。

このように出願された欧州特許出願に対して、欧州調査報告書(European Search Report、ESR)が発行され、これに対する応答(調査報告書に添付された調査見解書に対する応答)が義務付けられている。ただし、応答の義務があるのは欧州調査報告書が否定的な内容の場合(特許性瑕疵の指摘や補正の必要性の指摘などを含んでいる場合)にのみ応答が必要であり、期限内に応答しない場合には出願が取下げとみなされるが、肯定的な内容であれば応答は不要である。

応答の対象となる調査報告書や応答の期限は、出願の方式により異なる。 韓国内の出願人による欧州出願の場合、応答の対象となる調査報告書および応答の期限は以下のとおりである。

 

国際調査機関
/国際予備審査機関

応答する調査報告書

応答期限

欧州特許庁に直接出願

-

EESR 1) (ESR 2)+調査見解書)

ESR公開後6ヶ月以内

PCT出願後の欧州国内段階移行I 

韓国特許庁のようなEPO以外の調査機関

EESR (SESR 3) +調査見解書

EESR公開約1ヶ月後に発行された応答要求の通知(規則70 (2)、70a (2))日から6ヶ月以内

PCT出願後の欧州国内段階移行II

EPO

ISR 4) / IPER 5)

ISR公開または欧州移行のうち遅い方から約2ヶ月後に欧州特許庁で発行する応答要求の通知(規則161(1))日から6ヶ月以内

1) EESR:Extended European Search Report(拡張欧州調査報告書)
2) ESR:European Search Report(欧州調査報告書)
3) SESR:Supplementary European Search Report(補充欧州調査報告書
4) ISR:International Search Report(国際調査報告書)
5) IPER:International Preliminary Examination Report(国際予備審査報告書)

上記のように、欧州特許庁に直接出願する場合、欧州特許庁の調査部が先行技術調査を行って欧州調査報告書(ESR)を作成し、このESRに対する見解書が添付された拡張された欧州調査報告書(EESR)が発行される。出願人はEESR公開後6ヶ月以内にこれに対して応答しなければならない。

欧州特許庁が直接国際調査を行っていないPCT出願が欧州地域段階に移行時、欧州特許庁が補充欧州調査報告書(SESR)を作成し、このSESRと欧州調査見解書を合わせて拡張された欧州調査報告書(EESR)が発行される。これについてはEESR公開約1ヶ月後に発行された応答要求の通知日から6ヶ月以内に応答しなければならない。

欧州特許庁が国際調査機関であるかまたは国際予備審査機関であるPCT出願が欧州地域段階に移行時、出願人に国際調査報告書(ISR)または国際予備審査報告書(IPER)に対して応答する機会を与える規則161(1)による通知に対して6ヶ月以内に応答しなければならない。

以上で考察したように、前記期限は全て延長不可である。拒絶理由に対する意見書および/または補正書が期間内に提出されなければ、出願は取下げられたとみなされる。ただし、追加費用を納付して「Further processing」を利用して遅れて答弁を提出する方案がある。

このように、欧州特許出願方式に応じた調査報告書と応答期限に対する手続上の差異があるため、欧州特許出願時に留意する必要がある。